モブキャラに転生した元最強の魔法使い、神剣を手に入れ無双する〜気づけば最悪だった前世と真逆の最高ハーレムライフが始まった〜

玖遠紅音

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10話 幻獣研究会

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「それにしてもしつこかったわ。いくらお父様が王国魔術協会の会長だからって私まであんな熱心に勧誘しなくたっていいじゃない」
「イリスは魔術が嫌いなの?」
「いいえ? そんなことないわ。魔術は昔から得意だし面白いけど、七曜魔導会セプテリオンにはお姉様たちがいるし、無理して私が入る必要もないわ。それに私が入りたいサークルはもう決まってるの」
「へぇ、もしよければ教えてもらっても?」
「幻獣研究会ミスティリアよ」
「――!!」

 最初に聞いたときのおしとやかな喋り方はどこへやら。
 すっかり普通の少女のそれになってしまったイリスの目的地は、どうやら俺と一致していたらしい。
 せっかくできた初めての友達と一緒のサークルに入る、ってのはなかなかいい流れかもしれないな。

「実は僕も同じ所へ行こうと思っていたんだ」
「へぇ、あなた。動物が好きなの?」
「うん。動物は昔から好きだよ。それに幻獣研究会っていうくらいだから、珍しい生き物とも触れ合えるかもしれないしね」
「いい趣味じゃない。なら一緒に行きましょ」
「そうだね」

 そして俺とイリスは、お互いの好みの動物のタイプやそれらに関するエピソードなどを語り合いながら幻獣研究会のテントへと向かった。
 つい話が盛り上がって前世での出来事を(それとなく誤魔化しながら)語ってしまったが、楽しそうに話を聞いてくれていたので多分大丈夫だろう。
 ちなみにイリスは意外にもカッコいい系の生き物――もっと言えば猛獣系が好みらしい。
 将来は伝説上に登場するような強力な召喚獣を使役する最強の召喚術師になりたいのだとか。
 俺はどちらかと言えば大人しい生き物の方が好みだが、猛獣の中にも話せばわかる可愛い奴もいるのでそちらも捨てがたくはある。

 そうこうしているうちに幻獣研究会のテントに着いたのだが、そこにいたのは一人の女性だけだった。
 俺達よりもだいぶ大人びた、やや深い茶色の長い髪と少し気だるげな薄緑の眼が特徴的な美人だ。
 そんな彼女は椅子に座りながらふわふわと浮かぶ二匹の獣と戯れていた。
 片方はだいぶ小さいが竜だな。もう片方は翼が生えた猫……なのか、よく分からない生き物だ。
 どちらもふわふわと彼女の周りを飛びまわりながら、時折肩や手のひらに降りたり頬ずりしたりしている。

「あの、すみません。ちょっといいですか?」
「ん……おや、ひょっとして幻獣研究会ウチに興味がある新入生かい?」
「はい。是非お話を伺いたくて」
「そうかそうか。歓迎するよ。ほら、君たちもご挨拶して」
「わっ――」

 女先輩がそう言うと、二匹の獣は可愛らしい鳴き声を上げてこちらへと迫ってきた。
 良ければ軽く撫でてやってくれ、と彼女が言うのでその通りにしてみると、少しくすぐったそうに身を震わせながらも受け入れてくれた。
 可愛い奴じゃないか。イリスは特に竜の方が気に入ったようで、翼や爪などをじっくり観察している。

「さ、座って座って。ああ、自己紹介が遅れたね。わたしは幻獣研究会ミスティリアの現会長アルネリア・リューネベルクだ。気軽にアルネ先輩とでも呼んでくれ」
「レオン・アルヴェインです」
「イリス・フォン・ヴァレンシュタインです。よろしくお願いしますアルネリア先輩」
「ん」
「あっ――アルネ先輩」
「よろしい。しかし伯爵家に侯爵家の方々にお越しいただけるとは光栄だねえ。なんで幻獣研究会ウチに来てくれたのか――は効くまでもないね。動物が好きだから、だろう?」

 そう言われて俺とイリスは頷いた。
 それを見たアルネ先輩は満足そうに笑顔を浮かべると、簡単に幻獣研究会について説明してくれた。
 幻獣研究会の主な活動は、その名の通り幻獣――珍しい動物の生態調査や保護活動はもちろん、幻獣の特性や魔術への応用が出来ないか研究したり、幻獣と人の共存について研究したりと多岐に渡る。
 ではそう言った幻獣をどこで捕まえてくるのかというと、実際にフィールドワークに赴いて捕獲したり、召喚魔術を使って呼び出したりと言った方法が主にとられる。
 しかしあまり人気のあるサークルではないらしく、現時点で所属するメンバーはアルネ先輩を含む4人しかいないのだとか。
 だからなのか、俺とイリスに対して是非とも入ってほしそうなオーラを全開にして嬉々として話してくれた。

 話の途中、小竜がイリスにちょっかいを出して、その度にイリスが驚いて、それを俺と先輩でからかうと彼女がちょっと怒ると言ったやり取りを挟みつつも、会話は盛り上がり、気づけばしばらく話し込んでしまっていた。
 一方で空飛ぶ猫型幻獣はどうやら俺のことが気に入ったらしく、ぺろぺろとほほを舐めてくるなどアルネ先輩の時以上のスキンシップを試みてくる。

「おや、レオン君はどうやらすっかりその子に気に入られたようだね。こう見えて実は結構気難しい子なんだけど、ひょっとして君、幻獣使いに向いているんじゃないか?」
「はは、そうですかね。でも、こうやって好かれるのはとてもいい気分になります」
「そうだろうそうだろう。ふふっ、どうだい。入会、前向きに検討してもらえるかな?」
「あつっ、ちょ、火吹かないでってば! なぜか燃えないけど熱いのよ!」
「あはははっ、その子もすっかりイリス君を気に入ったようだね」
「うぅ……でも育てたら強くなりそうだし、嫌いになれない……」

 ちなみにアルネ先輩の実家は、王国の戦力となる幻獣の調教、飼育を専門とする男爵家らしく、幻獣研究会は彼女が立ち上げたのだとか。
 イリスと小竜ははたから見ればちょっと喧嘩しているようにも見えるが、彼女も内心ではとっくに決めているのだろう。
 ふと、俺たち二人の視線が合った。そして無言で頷き合う。
 決めた。ここに入ろう。その方がきっと、この学園生活が楽しくなるに違いない。
 
 ♢♢♢

 一方そのころ、星刻武連アストライアの特等席である者の到着を待つ一人の少年の姿があった。

「クク……レオンはまず間違いなくここへ来る。当然だ。アレだけの武のポテンシャルを秘めた男が、この星刻武連アストライアに来ないはずがない。さあ、ここで思う存分腕を磨くがいい」

 不気味な笑みを浮かべるアレクシスの放つオーラを受けて、近くにいた人々は自然と距離を置いた。
 今の彼に喋りかけるのは愚の骨頂。
 それよりも、段々と不機嫌になっていく彼を前に、誰が待たせているのか知らないが早く来てくれと願った。

「チッ……何をしている。まさか迷っているのか? なら僕が迎えに――いや、そんな真似をしてやる必要がどこにある。いずれ奴は自力でここへ来るのだから、僕はただ待てばいい……」

 その遥か後方で幻獣と戯れるレオンの姿があることを、まだ彼は知らない。
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