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7話 やりなおし
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「ふふっ、これでしばらくの間一緒にいることが出来ますね!」
そう言って隣で笑うヴェネット。
その隣には満足そうに頷くヴェルス殿下もいた。
「あ、あの、今回はその、ありがとうございました……なんかその、良く分からないうちに終わっちゃいましたが……」
「もう、友達を助けるのは当たり前の事でしょう?」
「ヴェネット……」
私は今、王族用の超豪華な馬車に乗せられている。
どうやら私はこれからアーケンブルグへ向かうらしい。
何故そんなことになったのかというと――
「ここで僕から一つ提案だ。今回の件でミリア嬢は心に深い傷を負った上、噂が消え去るまで居心地の悪い思いをすることになるだろう。それに一度遠い地にて反省を促すという準備がなされていたとも聞く」
「それならばミリアの身は我がアーケンブルグ王国で預からせていただきます!」
「……そうすれば互いに今回の重い事件を薄めることに繋がるだろう。悪くない提案だと思うんだけど、どうかな?」
その結果がこれという訳だ。
一応表向きは留学ということになっているが、向こうでどんな生活をしたらいいかはまだ考えていないらしい。
この流れは8割以上ヴェネットのごり押しで決定したらしく、これを機に私ともっと友達らしいことをしたいと言っていた。
「せっかく私たちの国に来てもらうんだから、こっちの方が居心地がいいって思わせて見せますよ! 連れていきたい良いところがいっぱいありますからね!」
「そういえばミリア嬢とのお茶も流れてしまったことだし、今度は僕の方がいいお店へ連れて行こう。楽しみにしていてね」
「あ、ありがとうございます……」
そう言ってヴェネットには手を強く握られ、ヴェルス殿下には後光が見えそうな優しい笑顔を向けられた。
(……私はきっと、幸せ者なんだろうな)
深い絶望に包まれていた時は顔すら思い出すことが出来なくなっていたにも拘らず、私に代わって深く怒ってくれて、助け出してくれた二人。
私が飛び降りようとした直後のヴェネットの辛そうな顔が頭から離れない。
全てが終わり「もう大丈夫だ」と優しく私を撫でてくれたヴェルス殿下のことも。
まだ心の整理はついていないけれど、きっと私はやり直せる。
この二人が一緒にいてくれれば、また前みたいに明るく生きることが出来る。
今はそれを信じてみよう。
ーーーーーーーーーー------
お読みいただきありがとうございました。
好評であれば連載も考えておりますので、ひとまずお気に入りを外さずお待ちいただければ幸いです。
そう言って隣で笑うヴェネット。
その隣には満足そうに頷くヴェルス殿下もいた。
「あ、あの、今回はその、ありがとうございました……なんかその、良く分からないうちに終わっちゃいましたが……」
「もう、友達を助けるのは当たり前の事でしょう?」
「ヴェネット……」
私は今、王族用の超豪華な馬車に乗せられている。
どうやら私はこれからアーケンブルグへ向かうらしい。
何故そんなことになったのかというと――
「ここで僕から一つ提案だ。今回の件でミリア嬢は心に深い傷を負った上、噂が消え去るまで居心地の悪い思いをすることになるだろう。それに一度遠い地にて反省を促すという準備がなされていたとも聞く」
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「……そうすれば互いに今回の重い事件を薄めることに繋がるだろう。悪くない提案だと思うんだけど、どうかな?」
その結果がこれという訳だ。
一応表向きは留学ということになっているが、向こうでどんな生活をしたらいいかはまだ考えていないらしい。
この流れは8割以上ヴェネットのごり押しで決定したらしく、これを機に私ともっと友達らしいことをしたいと言っていた。
「せっかく私たちの国に来てもらうんだから、こっちの方が居心地がいいって思わせて見せますよ! 連れていきたい良いところがいっぱいありますからね!」
「そういえばミリア嬢とのお茶も流れてしまったことだし、今度は僕の方がいいお店へ連れて行こう。楽しみにしていてね」
「あ、ありがとうございます……」
そう言ってヴェネットには手を強く握られ、ヴェルス殿下には後光が見えそうな優しい笑顔を向けられた。
(……私はきっと、幸せ者なんだろうな)
深い絶望に包まれていた時は顔すら思い出すことが出来なくなっていたにも拘らず、私に代わって深く怒ってくれて、助け出してくれた二人。
私が飛び降りようとした直後のヴェネットの辛そうな顔が頭から離れない。
全てが終わり「もう大丈夫だ」と優しく私を撫でてくれたヴェルス殿下のことも。
まだ心の整理はついていないけれど、きっと私はやり直せる。
この二人が一緒にいてくれれば、また前みたいに明るく生きることが出来る。
今はそれを信じてみよう。
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お読みいただきありがとうございました。
好評であれば連載も考えておりますので、ひとまずお気に入りを外さずお待ちいただければ幸いです。
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