獣人王の想い焦がれるツガイ

モト

文字の大きさ
2 / 12

獣人のことが気になる ※

しおりを挟む

 日の出前、霧の濃い中、俺は断崖絶壁を登った。
 一歩間違えれば崖下に落ちて塵となる。失敗して死ぬ奴は後を絶たない。
 手足の感覚に意識を向け、すべての感覚を研ぎ澄ます。どこの出っ張りに手足をかけるか、風向きは、身体の疲れは、何一つ油断できないギリギリの感覚でてっぺんまで登りきる。
 崖の上は、俺ひとりが寝そべるくらいの広さがあり、岩肌に根を張った赤葉がびっしり生えていた。
 俺は腰に括りつけた小刀を手に持ち、赤葉を切り取り、背負っている籠に入れた。
 根っこまで抜かないのは、赤葉は根を残せばまた生えてくる強い雑草だからだ。
「こんなものか。早く戻ってやらないと」
 採集を終えて立ち上がると、びゅぅっと潮風が頬を撫でた。
 湿気を含んだ風を感じながら、目の前にある真っ青な景色を見つめる。
 海と空が溶け合うように並んで、どこまでも広がっていた。
 昔から、高い場所は、怖くない。
 胸に静かなものが広がり、背伸びをする。すぅっと息を吸い込み、登るよりもずっと早く地面に降りた。
「……まだ、目覚めないか」
 足早に洞窟へ戻ると、獣人は朝出かける前の状態のまま眠っていた。そっとその額に触れると、熱が高い。
 俺は彼の近くに赤葉を置き、そしてここに暫く住むつもりで準備を始める。
 周囲に獣が入らないように罠を張り巡らせ、周囲から食べ物や落ち葉や枝を集める。
 そして、赤葉を煎じた液体に布を染み込ませ、獣人の傷口にそっと当てた。痛むのだろう、その身体は大きく跳ね、彼は苦痛に表情を歪めた。
「すぐに手当てを終わらせるから! 少しの辛抱だ」
 獣人が動かないよう抑えながら、何度も声を掛ける。
「……終わったぞ」
 そう声をかけたあと、彼はうっすらと瞼を開けた。だが、返事はなく、彼の瞼はすぐに閉じていった。
 
 洞窟ぐらし、三日目。獣人は驚きの回復力を見せている。
 傷口も化膿せず、驚くほどの早さで塞がりかけている。それは人間にはない回復力だった。介抱しながら、日に日によくなる状態に驚くばかり。
「──ん……、俺、寝て、た」
 かくんと自分の頭が落ちて、思わず呟く。
 藁で履物を編んでいたはずなのに、手元は全然進んでいない。
 ぼんやりと横をむいたそのとき、黄金色がきらりと光った。
 寝ぼけていたが、一瞬後、飛び上がった。
「ひぃいいいっ!」
 ──獣人が目覚めている。ギラギラした瞳で俺を見ている! 
 獲物を狙うような強い視線に身体は反射的に動き、気づけば岩影に身を潜めていた。
 だが、獣人は手負いだ。それを思い出し息を吐いた。
「お……おい、そこのアンタ!」
 念のため、岩陰から声を出す。
「アンタは、山で倒れていた。俺はアンタの命の恩人だ」
 しん、と静まり返っている洞窟内に自分の怯えた声が響く。
「だから、俺のことを食うな! 食ったら駄目だからな!」
「……」
 ──返事がない!
 俺の言うことが分からないのか、それとも、やっぱり俺が食べたいのか⁉
「……い」
 擦れ声が──。恐る恐る顔半分を岩陰から出すと、獣人が何かしゃべろうとしている。だが、声が全く音にならない。それでも懸命に何かを伝えようと口を動かし、咳き込む。
「おい、よせ! 無茶するな! よく夜中、唸ったり叫んだりしていたから喉を傷めているんだ」
 勢いよく岩陰から出る。途端に──ぱぁああっと獣人の表情が緩んだ。
「……む」
 明らかな喜びよう。
 もしや、コイツ、俺が手当てしたから……懐いた?
 敵意など微塵も感じないが、用心に越したことはない。まずは確認だ。
「いいか。俺はお前を襲わない。敵じゃない」 
 こくりと獣人が頷いた。やっぱり獣人は共通語を理解出来るようだ。
「だから、お前も俺を食うな。いいな?」
 獣人はまた頷く。なんだか、酷く嬉しそう。俺に話しかけられることが嬉しい……みたいな?
 呆気に取られていると、獣人はうっとりした表情で上体を起こして、こちらに手を伸ばしてくる。だが、動くと激痛が走るのか、彼はその場に蹲った。
「っ!」
「お……おい、大丈夫か⁉」
 慌てて俺は彼の元へ駆け寄り、その身体をゆっくり寝かせる。
「自分の状態くらい見れば分かるだろう。特に足の骨は骨折しているから……も……」
 思ったよりも顔が近かった。黄金色の瞳に自分が映っているのが分かる距離だ。
 ドクンッと鼓動が跳ねた後、急に胸が騒がしくなる。
「お前の目……変だ。見ていると……こう、吸い込まれそうになる」
「…………」
 すると、獣人が口を開いた。だが、声にならない。
「ん?」
 聞き取れるよう獣人に顔を寄せたときだ──ぺろりと耳を舐められた。舐め……
「ぎゃぁああああああ!」
 獣人を突き飛ばし、即座に距離を開ける。
 コイツ、俺を味わった! やっぱり獣人は人間を食うんだっ! 懐くふりをしてだまして取って食うつもりだったんだ。
 ──逃げなくては!
 荷物も全部置いて、その場から離れようと立ち上がった。駆け出そうと地面に足を踏み込んだ。だが、その瞬間──
「……いっ!」
 獣人は声にならない声で叫んだ。
 振り返ると、獣人は地面に両腕をついて、這いずり始めた。
「おい、やめろ! 折角手当してやってんのに!」
「……が、っ……ごほっ、ごほっ」
「よせ、やめろって⁉」
 制止の声も聞かずに、近寄ってくる。少し迷ったが心配が勝って、引き返す。
 その口にある牙を見て、恐怖を思い出すが、そのまま彼に手を貸した。寝床に寝かせて、ふぅっと額の汗を拭う。
 獣人はそんな俺をじっと見つめているが──、襲ってくる気配はない。
「もう一度聞く。俺のこと、食べようとしたんじゃないのか?」
 獣人は、こくりと首を縦に振る。 
「……ぃ」
「ん? 何?」
 さっきから獣人は。同じことを言っている気がする。
 口の動きから見て、三文字だ。
 〇〇い。
 なんだろう。欲しいとか? いやいや、それだと食べる気満々じゃねぇか。
「どんなに腹が減っても、俺みたいな親切な奴を食べたらバチが当たるぞ!」
 もう一度警告した。さっき獣人の歯が首に当たった時、ゾクゾクと悪寒が身体を襲ったのだ。
「絶対ダメだぞ」
 念を押すと、獣人はしっかり頷く。それから、何かまた言おうとしてせき込む。放っておけなくて、獣人の頭側にまわり、膝を貸す。
「ほら、水。飲めよ」
 水が入った竹筒を彼の口元にあてて、飲ませてやる。
 意識がないときと違って、飲ませるのは楽だ。手が使えるようなので、彼に竹筒ごと手渡すが、力が入らないようで落とした。
 それを拾って再び、飲ませてやる。彼は申し訳なさそうな視線を俺に向けた。
「気にするな。食べられるなら何か腹に入れておけよ」
 獣人がいつ目を覚ましてもいいように、傍らには果物を置いておいた。
「食べさせてやるよ」
 まだ動くのは辛いだろうと、みかんの皮を剥いてやり、獣人の口に運んでやる。
 素直に開いた口には、人よりも少し尖った牙がある。それに、ぞぞっとしながらも、ひとつ、ふたつとその口に放り込む。
「食欲がありそうだな……夜は肉にしてやる。食えるか?」
 腹を満たしておけば、俺のことを食べる気にもならないはず……。
「おい……、聞いてる?」
 何故か獣人はうっとりと俺を見つめている。今にも涎を垂らしそう。
 熱っぽいし……あぁ、本当に熱があるのかも。呼吸もさっきより荒くなっているようだ。
「大丈夫か、まだ熱が上がってきたっぽいな」
「……」
 みかんの最後の一粒をその口に放り込んだあと、彼の額に自分の額をくっつけた。
 熱を測る。それだけだったのに──獣人が顎を上げたので、ちょんと唇が当たった。そして、ぺろりと肉厚の舌で唇をなぞられた。その柔らかさにぎくりと硬直する。
 な──なに、コイツ。どさくさに紛れて、俺を味見を⁉
 離れそうと、突っぱねて離れようと地面に手を置いた。すぐに身体を離し、「俺を味見するな!」と怒鳴りつけるつもりだった。
「……っ」
 なのに出来ない。
 自分の身体の異変に目を見開いていると、くらり──一瞬、意識が飛ぶ。
 その隙に、口の中に湿った柔らかいものが入ってきた。とても熱くて少しざらついて、それが舌だと分かるのに数秒かかる。ざり、とその舌に下あごを舐められたとき、ぞくぞくと身体に快感が走った。
 全く知らない感覚だった。……なにこれ⁉
「──くっ!」
 全身に力を入れて地面に突っぱね、獣人から顔を離した。勢い余って、尻もちをつく。はぁ、っと息を吐き、口元を手で拭う。
「な、何を、するんだ……俺のことは食うな、って」
 怒鳴るつもりの声は、弱々しい。睨む視線も彼を見つめてしまうだけになる。そして、尻もちをついたまま、動けない。
 だって、彼からいい匂いがするのだ。
 元々、この獣人の体臭はいい匂いだった。だけど、唇が触れた瞬間から、彼の香りが増した。
 ──嗅ぎたい。
 この男の首筋に顔を埋めて、思う存分嗅ぎまくりたい。
 この感覚に疑問を持つ前に、俺は彼に身体を寄せた。
「ここから、いい匂いが……する」
 魅力的な香りにあらがえない。誘われるように、俺は彼の首筋に顔を押し付けていた。くらりとした。酒に酔っ払うかのように、香りで酔う。
 匂いが全てを満たしていくみたいだ。堪らない。
「ふぅ……ん」
 甘えた声が、自分の喉奥から漏れた。
 どれくらい彼の首筋に顔を埋めていただろう。近くからごくりと大きい喉の音が聞こえてきて、ようやくそこから顔を離した。
「……ご、めん」
 自分の声が上ずっている。また、香りに誘惑されそうで、首を横に振る。
「俺……どうか、している……顔を水で洗ってくるよ」
 魅惑的な首筋から視線を逸らしたさき、横たわる獣人の異変に目が止まった。
 その下半身は、下衣の上からでも大きく主張していた。大抵、熱が出れば萎えるはずなのに。
 だからって、俺が男のそんなものを目にしたって、触れたいと思ったことは一度もない。
「俺に……興奮した?」
 思わず、口に出した自分に驚く。
 こんなことを聞いて、どうするのだろう。今日の俺は二十七年生きてきた中で、一番おかしい。この獣人に対する自分の反応すべてが──変だ。
「発散してやろうか?」
「……っ!」
 獣人は目を見開いた。動揺したように目を彷徨わせる。
 そしてその目がこちらを向いたとき、俺は彼の下半身に手を伸ばした。
 下衣をずらし、腹部に付きそうな程反り勃った性器を直接手に包む。人間と同じような形と色をしているが、サイズが大きい。立派なそれを上下に扱いてみる。片手だと手が疲れてきて、両手で包んでみた。太い先端から透明の液体が溢れてくる。獣人だからか先走りも量も多い。それを陰茎にも塗り込みぐじゅぐじゅと音を立てながら強めに擦ると、程なくして勢いよく射精した。
 気持ちよくなった証拠を目にし、満足気に獣人の顔を見た。
 紅潮した頬、荒い息を吐きながら、突き刺さるような強さで俺を見ている。あまりの鋭さに動揺し、握っていたそこから手を離した。射精したのにもかかわらず、一物が腹を打つ。
「あ、あれ? アンタ……」
 射精したのに、全然萎えていない。獣人は性欲が強いのだろうか。
 どうしよう……。いや、どうしようだって? そう思っている時点で、嫌じゃない。
「もう一度……んっ? アンタ、何してんの?」
 獣人が俺のお尻を撫でている。ツッコむと、無自覚だったのか、獣人はハッとして尻から手を離した。動揺を隠せないのか、目が彷徨う。
 その様子を見て、彼の視線が強いことの意味は今はっきり分かった。
 この獣人は、俺に欲情しているんだ。
 スラム街には男色も多く、俺のような凹凸のない身体つきもそれなりに需要があった。貧困に困り、二回だけ身体を売ったことがあった。気色悪くてこの先一生、セックスなどしなくていいと思っていた。なのに…・・・n
「アンタ……俺とセックスしたいの?」
 ごくり。と喉で返事がある。
「そうか。なら俺に入れる? 何年も前だけど、一応経験はあるから」
 提案しながら、俺は腰ひもを緩ませた。前開きの衣は、肌が簡単に露出してしまう。
 喜ぶかと思ったが、獣人の眉間にシワが寄る。
 急に不機嫌そうだ。男色ではないのか? ただ、彼の視線は俺のはだけた胸元にある。
「……ふっ、っふ」
 獣人の息が荒くなって、下半身が反応している。
「はは、なんだよ、ヤル気じゃん……したいなら、いいよ」
「……」
 提案するのは、自分もそういう気分なのだろう。
 性欲底辺なのに珍しいこともあるものだと、俺は進んで下衣を下げた。
「拡げるからちょっと待ってて。時間がかかるし、見られたくないから目を瞑れ。……あぁ、これ、丁度いい」
 手の中には、彼の出した白濁がある。
 丁度いいヌメリだと、自分の尻の窄まりに塗りたくった。フニフニと縁を触ったあと、ゆっくり指を挿れていく。自分の指とは言え、触らないそこを弄るのは、違和感が激しい。それでもなんとか、二本目も挿入して、拡げていく。
「……くっ」
 苦しくて声が漏れた。
 彼を見ると、目を瞑れと声をかけたのに、じっと俺を見ている。
 眉間にシワを刻んだままで怒っているようにも見えるが、彼の下半身は痛そうなほど反応している。
「時間かかって悪いけど……、まだアンタの入れられるほど、拡がってない」
 あんまり見るな、と言葉を続けようとしたとき、彼の手が俺の尻に伸び、尻の窄まりに触れてくる。
「アンタ、動くと……!」
「はぁー、はぁー」
 食いしばった口元から涎が垂れている。あぁ、眉間のシワは我慢もあったのだろうか。
「んっ」
 ゆっくりと彼の指が中に入ってきた。
 自分の指とは全然違う。それがどうしてか怖くなって、俺は獣人の首筋に顔を埋めた。
 不思議な感覚だ。匂いで満たされるような……
 いい香りに身体の力が抜けていく。すると、獣人の指が尻を解すように動き始めた。
「──あっ、……は?」
 前後に動く指がある個所を擦ったとき、電流が走る。
「な……なに、今の?」
 セックスは、受け身には苦しいだけ。経験上、それしか知らない。
 気持ちよくなったことなんてなかった。数週間に一度するかどうかの自慰も精を吐き出すためのもの。
 だが、さっきキスをした時も思ったけれど、知らない感覚が浮かび上がってくる。
「んくっ、ひあ?」
 さっきと同じ場所を、また指で⁉
 目を白黒させながら、それでも行為のために我慢していると、二本目の指が挿入される。
「そこ⁉ んっん⁉」
 知らない、知らない⁉ 混乱しながら、俺は獣人の頬に頭を擦りつける。近くで熱い吐息が肌を掠める。
 あ……唇。
 どうしてか、そこから目が離せない。食べたい、味わいたい。欲しい──
 我慢が出来ず、ちゅうっとその唇を吸う。口寂しい赤ん坊が指しゃぶりを求めるようだ。それに、この唇に味、酔っ払ってしまいそうだ。
 何度も吸っているうちに、彼の方からも舌を絡ませてくるので、その舌も吸った。
「……ん、……あぁう……うう……んっ、んっはっあっ、もう……いい」
 口づけだけで、自分の性器から、ぽた、ぽた……と先走りを零している。前を触っていないのに、果てそうだ。
「指抜け……んくっ」
 丁寧に解されたせいか中が驚くほど敏感になっていて、抜かれる感覚にぞくぞくが止まらない。
 ……身体が、おかしい。
 知らない感覚ばかりで、やめたくなる。けど、自分から言い出した言葉を引っ込められず、俺は彼の上に跨った。
「傷……、痛まないか?」
 獣人は欲情しきった表情で、頷く。この状況で今更か。
 俺は後ろ手でよく反り返った性器を支え、ゆっくりと腰を下ろした。
「うぅ……入ら、ない」
 なんで、これが自分の中に収まると思ったんだろう。先端を含んだだけでギチギチに拡がって、もうこれ以上動ける気がしない。
 無理に腰を進めたら、尻が切れてしまいそうで怖い。
 息を吐いて力を抜こうとするが、上手くいかない。
「はぁー、はぁー」
 獣人の荒い息が聞こえる。
 獣人は汗だくで荒い息を吐いている。繋がっている箇所からもドクドクと脈打っているのが伝わってくる。動きたいが、俺を気遣い動かないのだろう。
「ごめん……馴染むまで待って」
 獣人は切なそうに目を細める。どこ見て……唇?
 唇を合わせたいのだろうか。
 そう思い、傷口に気を付けながら、彼に口づけた。
 唇を重ねると、あっという間に深くなる。何も考えられないほど、夢中になってしまう。
 繋がったところがジンジンしてきて、知らず腰が揺れていた。
 あ……さっきより拡がる。
 浅く浅く揺らしながら、徐々に腰を落としていく。
「ひっ。んくっ!」
 一番太い部分を自分の中に収めると、また動けなくなった。快感が強すぎる。
 尻が引くついている。少し身じろぐだけで、甘いしびれが走る。
「んぅ~、うぅ」
 動いてやりたいが、唸るばかりで腰が動かせない。焦れたのか、真下にある彼の腰が揺れ始めた。
 尻でなど快感を拾う場所じゃないと思い込んでいたのに、頭まで突き抜けるような快感が走った。目の奥がちかちかし、自分がどうなっているのか分からない。
「はっぁ……ひっ」
 自分の性器から白濁が漏れていた。果てた? いつ……これ、なにが?
 尻の中がまるで自分の意志を持っているかのように蠢いている。おかしなことに愛液でも出ているのかと思うほど濡れていく感覚がするのだ。
 男の身体は、愛液なんて出ないはずなのに。ぐじゅっ。
「っ……なんで? 何が……ごめ……こわ、い。身体が変、なんだ……っ」
 もう抜いてしまいたい。
「うぅ、う」
 近くで唸っている獣人の顔が快感まみれだった。
 異様に胸が熱くなって、そっと唇を重ねる。
「——んっ」
 そのとき、直腸に熱いしぶきを感じた。信じられないことに、中に出しされて俺も果ててしまう。
 身体が痺れて、暫く動けなかった。だが、いつまでも上に乗っかったままでは重かろうと、彼の性器を抜こうと腰を上げたが違和感に気付く。
「——んあ⁉ え⁉」
 抜けない。
 獣人の剛直が俺の尻にピッタリくっついている。何がどうなっているのか、と思っていたら、その手が俺の腰を揺らし始めた。
「ひゃああっ、あ⁉」
 猛った熱が俺を深く貫く。全身がびりびりし、全身が小刻みに痙攣する。
 ぷしゅ、と変な音でまた俺は果てていた。あまりの強い快感に思考はぐずぐずにくずれて、彼の身体にもたれかかる。荒い息を吐いていると、額にふにっと唇が落ちてきて、顔を上げると唇を啄まれる。
 不思議だ。なんで、口づけをしているだけなのに、身体が震えて仕方ない。
 黄金の瞳を見ていると、身体の奥から溶け出しそうになる感覚を覚えた。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

【短編】売られていくウサギさんを横取りしたのは誰ですか?<オメガバース>

cyan
BL
ウサギの獣人でΩであることから閉じ込められて育ったラフィー。 隣国の豚殿下と呼ばれる男に売られることが決まったが、その移送中にヒートを起こしてしまう。 単騎で駆けてきた正体不明のαにすれ違い様に攫われ、訳が分からないまま首筋を噛まれ番になってしまった。 口数は少ないけど優しいαに過保護に愛でられるお話。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

処理中です...