2 / 25
君は舞い降りたエンジェル
次の日の朝。
やたらと朝日が眩しくて起きた。
寝坊したか? そう思ったが、時刻は6時半。いつも通りの起床時間だ。
ちゅんちゅん。ちゅんちゅん。と小鳥のさえずりが聞こえるので、ベッド横の窓を開ける。
「雀だ」
ベランダには小さくて可愛らしい雀がいて、なんと俺の肩に乗ってきたのだ。
指にも乗らないかなと思って指を差し出すと、パッと空に飛んで行ってしまった。朝方まで雨が降っていたようで空には虹が出来ている。
夢物語の朝みたいじゃん。
ふふん。と気分よくベッドから起きてキッチンに向かい、目玉焼きを作るために卵を割る。すると、一つの卵から黄身が2つ出てきた。
朝からラッキー。
そのラッキーを熱したフライパンで焼いてトーストに乗せて食べる。だいたい俺の朝ごはんはこんな感じ。
朝食を食べながら、SNSを開く。
先程のちょっといいことを呟く。
《朝起きたら、スズメが俺の肩に乗っかってきた!!》
独り暮らしの俺は、独り言をブツブツ言うのも空しいので、SNSで呟くことにしていた。
壁打ちアカウントなので、フォロワーも少なく、やりとりなど絡むことはしていない。
いつもはイイネの♡マークなど全く飛んでこないけれど、即座にイイネ♡がついた。
「あれ? フォロワーが一人増えてるじゃん。えーと、“君はハート泥棒”さん? 変な名前のアカウントだな」
フォロワーの増減はSNSでは当たり前だ。慎重にフォローする人もいれば、手当たり次第にフォローする人もいる。この場合、後者だろう。
「まぁ、いいや。放っておこう」
歯を磨き、出勤準備をする。マンションを出て少し歩いて空を見上げる。
やっぱり、今日はすげぇ天気がいいな。
雲一つない晴天。涼風が心地いい。朝方の雨で少し濡れた地面は朝日が反射してキラキラしている。
休日なら最高にハッピーな気持ちになれただろう。
だが、今日は仕事だ。幸せな気持ち7割くらいだけど、いい日になるだろうと思って角を曲がる。
「やぁ、山川くん。おはよう。こんなところで会うなんて奇遇だね。今から出勤かな?」
「ーーーーっ!?」
俺は持っていた鞄をボトンっと地面に落とした。目を疑って何度も瞬きをする。
角を曲がったすぐそこは有料パーキングだ。そこに赤いボディのフェラーリとそのフェラーリにもたれる長身の男がゆったりと立っていた。
「しゃ、社長!?」
そこにいたのは、田中社長だった。
昨日、ロビーですれ違った田中社長だ……。フェラーリの美しいボディに全く負けていない完璧な造形美。
ここだけ空間が切り取られたみたいにキラキラしている。
エリートの光り輝くオーラ、すげぇ……。
しかし、なんで、平社員の俺の名字を知ってるんだ?
驚いて二言目が出てこない俺に田中社長が微笑んだ。白い歯がキラッと輝く。芸能人のように真っ白な歯だ。
そして偶然にも駐車場の後の住宅地にバラが咲いていて、パッとバラが咲き乱れたような……気がした。
げ、幻覚。
しかしバックにバラだなんて、狙ってんのか? この人。
「昨日の今日ですぐに会えるなんて、運命だと思わないかい?」
「え? えっと……」
何を言っているんだ?
運命?
しっかりした発音だが、聞き間違えたのだろうか。呆然とその場で立っていると、社長が落ちた鞄を拾ってくれる。
「あ……すみません。拾って——……」
俺の手が社長の長い指に絡まされた。
社長が俺の手を掴んだのは、鞄を渡そうとしてくれたのだと思ったけれど、これは一体どういうことだろう。
ん?
若干、引いた指先をさらにクルリと絡まれる。
……んんん??????????????
なんで、そんな風に指を絡まれるのか不思議で仕方なく、背の高い社長を見上げると、真っすぐに俺を見つめていた。会社の噂で無表情だ、サイボーグだとか言われているが、今見ている社長の顔は、表情豊かに微笑んでいる。
あまりにじっと見つめてくるものなので、首を傾げると「可愛い」と聞こえる。え?
「君は僕に舞い降りたエンジェルかな」
「………………」
人間はあまりに驚くと思考が一度止まってしまうようだ。言われた言葉がすぐに頭に入ってこない。
彼が何を言ったか理解できなかったが、どう見ても違うでしょうと、ツッコミを入れたくなる。が、いや。……これは、俺の聞き間違いかもしれない。そう思うと、“聞き間違い”が正しく感じる。
そうだ。あの噂の社長がそんなこと俺に言う訳がないよな。きっと俺の幻聴だ。幻聴……。
有り得ない。社長が頬を染めてうっとりと男の俺の指に指を絡めているとか……、それも幻覚だ。
ゴホンッと咳払いして、彼から手を離して鞄をもらう。そして、頭を下げて礼をする。
「では、俺はここで。失礼します」
「折角だし、僕の車で会社まで送っていくよ」
「お気遣い感謝します。結構です」
社長がどんな顔をしているのか見るのが恐怖で、視線を逸らしながら断ると、「ふぅ~、僕のエンジェルはつれないね」と聞こえてく……いや!!!! 聞こえない!!!!! 俺は何も聞こえないぞ!!!!
俺は、頭を下げたまま、その場を足早に離れた。
後を振り向くのが怖くて、次の角を曲がるまで息が吐けなかった。角を曲がった瞬間、「はぁ~~~」と全身の力が脱力する。汗がぶわぁっと今更になって出てくるし、動悸が治まらない。
怖くて、先ほどの角をもう一度戻ってみることは出来なかった。
やたらと朝日が眩しくて起きた。
寝坊したか? そう思ったが、時刻は6時半。いつも通りの起床時間だ。
ちゅんちゅん。ちゅんちゅん。と小鳥のさえずりが聞こえるので、ベッド横の窓を開ける。
「雀だ」
ベランダには小さくて可愛らしい雀がいて、なんと俺の肩に乗ってきたのだ。
指にも乗らないかなと思って指を差し出すと、パッと空に飛んで行ってしまった。朝方まで雨が降っていたようで空には虹が出来ている。
夢物語の朝みたいじゃん。
ふふん。と気分よくベッドから起きてキッチンに向かい、目玉焼きを作るために卵を割る。すると、一つの卵から黄身が2つ出てきた。
朝からラッキー。
そのラッキーを熱したフライパンで焼いてトーストに乗せて食べる。だいたい俺の朝ごはんはこんな感じ。
朝食を食べながら、SNSを開く。
先程のちょっといいことを呟く。
《朝起きたら、スズメが俺の肩に乗っかってきた!!》
独り暮らしの俺は、独り言をブツブツ言うのも空しいので、SNSで呟くことにしていた。
壁打ちアカウントなので、フォロワーも少なく、やりとりなど絡むことはしていない。
いつもはイイネの♡マークなど全く飛んでこないけれど、即座にイイネ♡がついた。
「あれ? フォロワーが一人増えてるじゃん。えーと、“君はハート泥棒”さん? 変な名前のアカウントだな」
フォロワーの増減はSNSでは当たり前だ。慎重にフォローする人もいれば、手当たり次第にフォローする人もいる。この場合、後者だろう。
「まぁ、いいや。放っておこう」
歯を磨き、出勤準備をする。マンションを出て少し歩いて空を見上げる。
やっぱり、今日はすげぇ天気がいいな。
雲一つない晴天。涼風が心地いい。朝方の雨で少し濡れた地面は朝日が反射してキラキラしている。
休日なら最高にハッピーな気持ちになれただろう。
だが、今日は仕事だ。幸せな気持ち7割くらいだけど、いい日になるだろうと思って角を曲がる。
「やぁ、山川くん。おはよう。こんなところで会うなんて奇遇だね。今から出勤かな?」
「ーーーーっ!?」
俺は持っていた鞄をボトンっと地面に落とした。目を疑って何度も瞬きをする。
角を曲がったすぐそこは有料パーキングだ。そこに赤いボディのフェラーリとそのフェラーリにもたれる長身の男がゆったりと立っていた。
「しゃ、社長!?」
そこにいたのは、田中社長だった。
昨日、ロビーですれ違った田中社長だ……。フェラーリの美しいボディに全く負けていない完璧な造形美。
ここだけ空間が切り取られたみたいにキラキラしている。
エリートの光り輝くオーラ、すげぇ……。
しかし、なんで、平社員の俺の名字を知ってるんだ?
驚いて二言目が出てこない俺に田中社長が微笑んだ。白い歯がキラッと輝く。芸能人のように真っ白な歯だ。
そして偶然にも駐車場の後の住宅地にバラが咲いていて、パッとバラが咲き乱れたような……気がした。
げ、幻覚。
しかしバックにバラだなんて、狙ってんのか? この人。
「昨日の今日ですぐに会えるなんて、運命だと思わないかい?」
「え? えっと……」
何を言っているんだ?
運命?
しっかりした発音だが、聞き間違えたのだろうか。呆然とその場で立っていると、社長が落ちた鞄を拾ってくれる。
「あ……すみません。拾って——……」
俺の手が社長の長い指に絡まされた。
社長が俺の手を掴んだのは、鞄を渡そうとしてくれたのだと思ったけれど、これは一体どういうことだろう。
ん?
若干、引いた指先をさらにクルリと絡まれる。
……んんん??????????????
なんで、そんな風に指を絡まれるのか不思議で仕方なく、背の高い社長を見上げると、真っすぐに俺を見つめていた。会社の噂で無表情だ、サイボーグだとか言われているが、今見ている社長の顔は、表情豊かに微笑んでいる。
あまりにじっと見つめてくるものなので、首を傾げると「可愛い」と聞こえる。え?
「君は僕に舞い降りたエンジェルかな」
「………………」
人間はあまりに驚くと思考が一度止まってしまうようだ。言われた言葉がすぐに頭に入ってこない。
彼が何を言ったか理解できなかったが、どう見ても違うでしょうと、ツッコミを入れたくなる。が、いや。……これは、俺の聞き間違いかもしれない。そう思うと、“聞き間違い”が正しく感じる。
そうだ。あの噂の社長がそんなこと俺に言う訳がないよな。きっと俺の幻聴だ。幻聴……。
有り得ない。社長が頬を染めてうっとりと男の俺の指に指を絡めているとか……、それも幻覚だ。
ゴホンッと咳払いして、彼から手を離して鞄をもらう。そして、頭を下げて礼をする。
「では、俺はここで。失礼します」
「折角だし、僕の車で会社まで送っていくよ」
「お気遣い感謝します。結構です」
社長がどんな顔をしているのか見るのが恐怖で、視線を逸らしながら断ると、「ふぅ~、僕のエンジェルはつれないね」と聞こえてく……いや!!!! 聞こえない!!!!! 俺は何も聞こえないぞ!!!!
俺は、頭を下げたまま、その場を足早に離れた。
後を振り向くのが怖くて、次の角を曲がるまで息が吐けなかった。角を曲がった瞬間、「はぁ~~~」と全身の力が脱力する。汗がぶわぁっと今更になって出てくるし、動悸が治まらない。
怖くて、先ほどの角をもう一度戻ってみることは出来なかった。
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス