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君のこと一つだけ変えたい。それは君の名字だよ。
怒涛の週末を送った俺。
月曜日。
また、月曜日だ。
月曜ってなんでくるんだろう。はぁ、身体重い。会社行きたくない。仕事したくない。午後まで寝ていたい。
溜息。
憂鬱。倍!
溜息をつきながら、部署に着いた俺は、デスクに座ろうと思った時、柏木さん・小嶋さんがニタァッと笑った。
なんだろう。不気味。
二人の様子に何故か背筋がゾクゾクした。嫌な予感がする。
俺が座ると、二人が立ち上がって、俺の背後に立ち、ポンッと肩を叩いて、コソっと小声で話しかけてきた。
「やーまかーわ君、オ・メ・デ・ト♡」
な、なんのことだ!?
ゴクリと唾を飲んで俺は背後を見た。その恐ろしい二人の笑った顔。
「田中清一郎の唯一のフォロー、山川君でしょ」
「社長が、ロビーで唯一挨拶を交わし合うのも山川君でしょ」
「…………っ!!」
バレてる!? 全力でバレてる!?
俺は、社長がそれらしいことを言っているかスマホを持って急いでSNSをチェックする。
指で操作して、ここ一週間の彼の呟きをチェックするが、鳥肌が立つような甘くてキザな言葉しか見当たらない。
大丈夫だ。ただのひっかけだ。これは……。
「はは……何言ってんですか……」
誤魔化そうとした俺に小嶋さんがピッと指さした。
「腐女子の洞察力舐めてもらっちゃ困るわ。煙が出ないところですらカップリングを立てるのが腐女子。SNSでヤマカワのアイコン見た時に、私の脳内で二人の妄想が始まったわ」
「……」
急に腐女子だと暴露する小嶋さん。いや、これは彼女が俺から何か社長のことを聞きだしたいに決まっている。まだ、確信はないはずだ。
「私にくれたバラって社長からもらったでしょ?」
「社長の秘書の中島さん、貴方に用があるって一度来ていたのよねぇ……どうしてかしら?」
ニヤニヤと詰め寄る二人……。
どう誤魔化せばいいんだ!? 嘘を!? いや、もしバレた時に反動が!? それより口止めをしておいた方が……!?
「ひぃ、ぃ……!!」
やっぱり、俺は、月曜日の朝は好きじゃないことを確認した。
火曜日とんで水曜日。もはや、週の半ばにして、ダメージが大きい。だが、きっと、やってくる。
ピンポーン。
ほらみろ。きた。水曜日のアレだ。水曜日の宅配だ。
俺は、壁にかけている時計を見た。いつもより一時間以上も早い時間に来たな……。
彼ではないのか?
俺は、恐る恐るインターフォンを押した。
「はい……」
「デリバリーのお届けです」
デリバリー……? そんなものは頼んでいないから、せいちゃんだ。
俺は、ドアの丸い覗き穴から外の様子を見た。
……ほら。やっぱりせいちゃんだ。いつもと違って、ヘルメットにTシャツ、黒いリュック。スポーティーな格好をしている。
「………」
一見普通だと思った。しかし……よく見ろ。なんか、黒いリュックに今評判のデリバリーサービスの白と緑の印字が見える。
そのリュック買ったのか、それともせいちゃんが副業始めたのか。
はぁ、またくだらないことをと思って、ドアを開けた。
「はい」
「デリバリーのお届けです」
それ系の宅配サービスになり切っているせいちゃんが、黒いリュックを玄関の床に置いたのまでは良かった。よくよく見ると、そのリュックに印字されている文字が
『Takuro Eats』
「…………」
Takuro Eats ってなんだ……? どういう意味なんだ。それは……。
いや……、彼の奇行なんて今に始まったことじゃない。こんな事で動揺してどうする。
ここはスルーするんだ。
心を落ち着かすために目を閉じて深呼吸する。
目を閉じた俺の手をせいちゃんが握った。
そっと目を開けると、そこには、跪いているせいちゃんが俺の手にカードを持たせていた。
なんのカードだ……。
「僕のマンションの鍵だ」
そう言って、俺の手をせいちゃんがキスをした。その顔はほんのり紅く、高揚しているのが分かる。
「君のこと一つだけ変えたいんだ。それは、君の名字だよ」
「!!」
そうして、彼がリュックから何かを取り出そうとする。
……何が、出てくるんだ。もしかして、指輪か!? ダイヤモンドか!? それとも、ハンコを押す用紙か?!
ド、ド、ド、ド、ド、ド……
「拓郎君」
「ひ、ぃ……」
俺は……、今、最高にドキドキしています……。
END
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