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第四章 KOD決勝ステージ編
第115話 玉座崩壊
しおりを挟む俺の放った技により、体躯を分断されたアンノウンBが崩れ落ちる。
「ギィィィィィィイイイイイイ」
雄叫びは背後から。
アンノウンCだった。
俺の弾き飛ばしたアンノウンAの片腕が、胴体に深々と刺さった状態のまま――アンノウンCは俺へと殺意を飛ばしていた。
見ると、重傷を負った胴体の傷口から頭部に掛けて、真っ黒な体に赤いヒビが走っている。
致命傷により、全身が崩壊するまでもう間もなくという状態なのだろう。
そんな中、最後の力を振り絞り、攻撃を仕掛けてくるつもりだ。
直感で感じ取る。
先程まで放たれていた衝撃波でさえ、かなりの規模と破壊力の代物だった。
恐らく、それ以上が放たれようとしている。
俺はすぐさま振り返り、沙霧を振るってアンノウンCを完全に破壊しようとする。
その直後――体に何かがしがみつく感覚。
「……流石だな」
アンノウンBだった。
体をバラバラにされながら、残った上半身と左腕のみで地面を這いずり、背後から俺に覆い被さってきた。
動きが止められる。
俺は心から素直に称賛の言葉を放つ。
流石、日本屈指の難易度を誇る有明東京湾ダンジョン――その最後に立ちはだかる最強戦力。
簡単には、散らないか。
「ギィィィィィィイイイイィィィアアァァァァァアアアアアアアアア」
不協和音の絶叫と共に、アンノウンCが衝撃波を放つ。
――目には見えない破壊の波が、床を、壁を、天井を、全てを飲み込み。
――ダンジョンの創造主たる、神の玉座を、完全に崩壊させた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「な……」
「は!? え!?」
突如轟いた破壊音に、下層で待機していた探索者達が驚きの反応を見せる。
《ドクター》、蘭による治療はトーカからアリサに移り、その周囲を警護していた七名も油断無く周囲に警戒を走らせていた最中だった。
そんな中、《影狼チャンネル》を視聴し状況を見守っていた《霊能力者》、黄泉のジミ子が、一際大きなリアクションを見せた――直後。
下層にまで響き渡る衝撃が起こり、同時。
――すぐ近くの地面が、崩壊した。
「じ、地面が!?」
「ヒバナ」
砂埃が嵐のように吹き荒れ、その中からめくれ上がった地盤が飛び出す。
その場で行動可能な七人の内の一人、《氷使い》の音夜が指示を飛ばす。
同時に、《勇者》のヒバナが背中の大剣を抜き――。
「えいやっ」
その場で、まるでバットの素振りのように大剣を振るう。
発生した暴風が、迫り来る瓦礫や砂塵を吹き飛ばした。
「【咆哮】!」
《歌姫》のシュガァは【咆哮】を放ち、蘭の【治療室】やジミ子を余波から守る。
「ジミ子嬢、下で何があった」
「あ、あ、あの」
音夜に問われ、ジミ子が慌てながら答えを発する。
「か、か、影狼さんのいた深層が、アンノウン達の攻撃で壊されちゃったみたいです!」
「……深層を破壊するほどの力を持っているのか」
影狼の前に三体のアンノウンが立ちはだかった事は、音夜もジミ子の実況を聞いていたので知っていた。
過去の影狼を模したアンノウンAと、それに比肩するもう二体。
相当な難敵であるとは理解できたが、まさかこれほどとは――。
「影狼は?」
「そ、それが、攻撃の余波に巻き込まれて映像が途切れちゃって――」
深層を破壊するほどの衝撃の最中にいたのだ。
影狼の撮影用ドローンも無事では済まなかったのだろう。
音夜は、未だ崩壊音と砂塵が立ち込める眼前の空間を見る。
「最悪の事態も想定される。ここからは――」
「ギィオオオオオオオオオォォォォオオォオォオ」
この世の終わりのような絶叫が轟いた。
その場にいる全員が、頭上を見上げる。
三角錐型の胴体に丸い頭部。
その体には刃が突き立てられ、体には赤いヒビが毛細血管のように蔓延っている。
「ひっ」
ジミ子が悲鳴を上げる。
アンノウンCだ。
「……深層から出てきたか」
消滅寸前だが、アンノウンCはまだ生きている。
そして、既にその動きからは正常性が見て取れない。
「来るぞ!」
音夜が叫ぶ。
――同時、アンノウンCの全身から、破壊の衝撃が四方八方に撒き散らされた。
破壊、破壊、破壊、破壊。
下層の広大な空間が、瞬く間に破壊されていく。
まるで災害。
こんなものがもしも地上に現れ、東京のビル街の中で猛威を振るったらどうなるか――想像するだけで鳥肌が立つ。
その場にいる者達は、荒れ狂う状況下で身を守りながらそう思った。
「もう、うるさい上にしつこいな」
ただ一人。
地上から流星のように飛び出した《勇者》――ヒバナを除いて。
「影狼とのデート配信があるんだから、他の仕事はさっさと終わらせちゃうよ」
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