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伝言の内容
「セラお帰り。今日もずいぶん遅かったね。」
「うん。…その、ご飯食べてたら遅くなってさ。」
「オリア君と?」
「そ、そう!ははっ。」
(父さん、嘘ついてごめん!今回の件は誰にも言っちゃ駄目って言われてるんだ。)
ごまかすため不自然に笑いながら、さっさとお風呂場へかった。
「はぁ~…。」
熱いお湯に肩まで浸かると、やっと力が抜けた。ボーッと天井を見てゆっくりしていたところで、父が外から話し掛けてきた。
「セラ、さっきアインラスさんから電話あったよ。」
「本当?あ~、やっぱり父さんに伝言しといたら良かった。」
(ようやくまた電話を掛けてくれるようになってたのに…。)
心が沈むが仕方がない。これは文官長直々に任されたお願い…もとい仕事なのだ。
「どうかしたの?」
「…あのさ、もし明日も掛かってきたら、『5日後なら電話に出れます。』って伝えてくれる?」
「え!セラそんなに帰ってこないの?たしかに最近外出が多かったけどさ…。」
(俺だって出来たら早く帰りたいよ。)
湯舟に映る自分の顔はしゅんとしている。
好きな人と話す時間が奪われてるのだ。悲しくないわけがない。
「飲み会とかいろいろ予定入っちゃってさ。俺がごめんなさいって言ってたのも伝えてほしいんだけど。」
「うん、分かったよ。もし何か返事があったら聞いとくね。」
「ありがと、父さん。」
父さんは「任せて~!」と明るく言って、リビングへ戻って行った。
「あの、近くないですか?」
「何言ってるんだ。本番は腕を組んで歩くんだぞ。慣れてもらわないと困る。」
「はぁ…分かりました。」
婚約者訓練2日目。今日はウォルの家のことや生い立ちについて学んだ。とっさに聞かれた時に答えられるようにとのことだったが、仕事で疲れた頭には辛く、日頃暗記するスピードの何倍も掛かった。
そして、例の暗い部屋で並んで食事を取り、今はそのまま食後のイチャイチャを学んでいる。
「とりあえず、2回は口の端に何か付けろ。俺が取る。」
「え…マナーがなってないって思われそうで、気が進まないんですが…。」
「指示通りにするんだ。」
「はい…。」
王の右腕とも言われている切れ者の彼が言っているのだ。正しいと信じて、俺は異様に近く座っている彼を気にしないことにした。
「これが終わったらちゃんと解放してやる。」
「はい…頑張ります。」
(今回の件で貰える給料で、父さん達と何か食べに行こう。)
俺はのんきにそう考えていたが、隣ではウォルが俺の緊張感の無い横顔をじっと見つめていた。
へとへとの状態で宿舎に帰る。
(明日も仕事だ…。)
考えてみると、朝9時から5時まで働き、その後すぐに5時間も残業のようなことをしているのだ。一応ウォルはゲームの攻略者であり、目上の人だからといった理由だけでなく気を遣い、一時も休まる時が無い。
ただ、あちらから気を遣うなと何回も注意してくるので、だいぶ砕けた話し方が出来るようにはなってきた。
「セラ、お帰り~!」
明日は仕事だというのに、珍しくこんな時間まで元気に起きている父は、俺に言いたい事があって待っていたようだ。
「今日もアインラスさんから電話があって、セラの事ちゃんと伝えておいたよ。伝言も預かってるから、早く荷物置いてきて。」
「ありがとう。」
(伝言?父さんが何かぐいぐい聞いたのかな?)
玄関で靴を脱いだだけの俺は、父に言われて自分の部屋へカバンを置きに行った。
「なんて言ってた?」
ついでに部屋着に着替えた俺は、父から受けとった熱いお茶を飲んでやっとリラックスすることができた。父は待ってましたとばかりに、机に裏にして伏せていた紙を見る。
「メモしたの?」
「うん、一言一句間違えない方がいいと思って。」
結構すれ違いや勘違いでおかしいことになってしまう俺達だ。父のこの配慮はありがたい。
「セラは5日間出れませんってことを伝えたら、『もし何か思い悩んでいるなら伝えて欲しい』って言ってたよ。」
(うわぁ…前に俺が勘違いしたことを踏まえて言ってるんだろうな…。)
以前、シバの兄とその婚約者のネックレスの件で盛大な勘違いをした俺は、何日もシバを遠ざけていた。その時も『5か月後なら空いてます。』と言って彼を混乱させてしまった。もしかしたら今回も、俺が何か早とちりをして彼の電話に出ないと思っているのかもしれない。
(今回は本当に、早く帰らせてもらえないだけなんだけど…。)
念の為、父にはもし明日電話があった時は『本当に忙しい』と言うように頼んでおいた。
「アインラスさんから伝言だよ。『帰ったら一番に君のところへ行くから、その日は1日空けておいてくれないか?一緒に過ごそう。』と、あとは…」
「ちょっと待って!それ本当にシバが言ったの?」
「うん。メモしたから間違ってはないけど…どうしたの?」
(こんな恋人に言うみたいな…。)
恥ずかしくて顔から火が出そうだが、父が何とも思っていないようなので、まだ多少は冷静に聞くことができる。父は俺の態度を気に留めず「続きあるけど、」と言って紙に目を落とした。
「えっと…『君と話せない夜は寂しい。5日後に元気な声を聞かせてくれ。』だって。」
「ふ、ふーん…そっか。」
父はこの伝言の内容に特に何も思っていないようであり俺が過剰に反応するのもおかしいだろう。俺は顔に力を入れて、表情を出来るだけ変えずにいることと、そっけない返事をするので精いっぱいだった。
「大好きなセラと早く話したいってことだね。」
「ち、違うから!」
(勝手に都合良い要約しないでよ!)
「そう?じゃあ、そういう事にしとこうか。あ!アインラスさんが帰ってきたらお祝いしなきゃね!またご飯に誘ったらどう?」
「うん。誘ってみる。」
父は、前回4人で食事をしたのが相当楽しかったようだ。父とラルクはシバが持参した酒をぐいぐい飲み、最後は笑い上戸の酔っぱらいと化していた。
(シバが帰る日は、何としても空けとこう。)
暦を確認すると、彼が帰ってくる日まではあと8日。声だけでなくやっと本人に会えるのだと思うと、想像だけで舞い上がってしまう。
「さ、寝ようか。お風呂は朝入ったら?」
「そうしようかな~。疲れた…。」
父は笑って、俺に伝言を書き留めた紙を渡すと、先に寝ると言って部屋へ入っていった。
(本当にあんなこと父さんに言ったのかな…。)
父とラルクは俺達が仲が良いことは知っており、シバの距離感が近いことも理解している。シバ自身も父達の前で俺に触ったりするのを躊躇う感じではないし、こういった少し恥ずかしい伝言も平気なのかもしれない。
俺はその紙に書かれている内容をもう一度見て、シバの低い声を思い出す。
『セラ。』
(わっ、もう寝ないといけないのに、何考えてんだ俺は!)
その紙を持って自室へ入ると、攻略ノートの入っている引き出しにそっと入れ、熱い顔のままベッドへ潜りこんだ。
「うん。…その、ご飯食べてたら遅くなってさ。」
「オリア君と?」
「そ、そう!ははっ。」
(父さん、嘘ついてごめん!今回の件は誰にも言っちゃ駄目って言われてるんだ。)
ごまかすため不自然に笑いながら、さっさとお風呂場へかった。
「はぁ~…。」
熱いお湯に肩まで浸かると、やっと力が抜けた。ボーッと天井を見てゆっくりしていたところで、父が外から話し掛けてきた。
「セラ、さっきアインラスさんから電話あったよ。」
「本当?あ~、やっぱり父さんに伝言しといたら良かった。」
(ようやくまた電話を掛けてくれるようになってたのに…。)
心が沈むが仕方がない。これは文官長直々に任されたお願い…もとい仕事なのだ。
「どうかしたの?」
「…あのさ、もし明日も掛かってきたら、『5日後なら電話に出れます。』って伝えてくれる?」
「え!セラそんなに帰ってこないの?たしかに最近外出が多かったけどさ…。」
(俺だって出来たら早く帰りたいよ。)
湯舟に映る自分の顔はしゅんとしている。
好きな人と話す時間が奪われてるのだ。悲しくないわけがない。
「飲み会とかいろいろ予定入っちゃってさ。俺がごめんなさいって言ってたのも伝えてほしいんだけど。」
「うん、分かったよ。もし何か返事があったら聞いとくね。」
「ありがと、父さん。」
父さんは「任せて~!」と明るく言って、リビングへ戻って行った。
「あの、近くないですか?」
「何言ってるんだ。本番は腕を組んで歩くんだぞ。慣れてもらわないと困る。」
「はぁ…分かりました。」
婚約者訓練2日目。今日はウォルの家のことや生い立ちについて学んだ。とっさに聞かれた時に答えられるようにとのことだったが、仕事で疲れた頭には辛く、日頃暗記するスピードの何倍も掛かった。
そして、例の暗い部屋で並んで食事を取り、今はそのまま食後のイチャイチャを学んでいる。
「とりあえず、2回は口の端に何か付けろ。俺が取る。」
「え…マナーがなってないって思われそうで、気が進まないんですが…。」
「指示通りにするんだ。」
「はい…。」
王の右腕とも言われている切れ者の彼が言っているのだ。正しいと信じて、俺は異様に近く座っている彼を気にしないことにした。
「これが終わったらちゃんと解放してやる。」
「はい…頑張ります。」
(今回の件で貰える給料で、父さん達と何か食べに行こう。)
俺はのんきにそう考えていたが、隣ではウォルが俺の緊張感の無い横顔をじっと見つめていた。
へとへとの状態で宿舎に帰る。
(明日も仕事だ…。)
考えてみると、朝9時から5時まで働き、その後すぐに5時間も残業のようなことをしているのだ。一応ウォルはゲームの攻略者であり、目上の人だからといった理由だけでなく気を遣い、一時も休まる時が無い。
ただ、あちらから気を遣うなと何回も注意してくるので、だいぶ砕けた話し方が出来るようにはなってきた。
「セラ、お帰り~!」
明日は仕事だというのに、珍しくこんな時間まで元気に起きている父は、俺に言いたい事があって待っていたようだ。
「今日もアインラスさんから電話があって、セラの事ちゃんと伝えておいたよ。伝言も預かってるから、早く荷物置いてきて。」
「ありがとう。」
(伝言?父さんが何かぐいぐい聞いたのかな?)
玄関で靴を脱いだだけの俺は、父に言われて自分の部屋へカバンを置きに行った。
「なんて言ってた?」
ついでに部屋着に着替えた俺は、父から受けとった熱いお茶を飲んでやっとリラックスすることができた。父は待ってましたとばかりに、机に裏にして伏せていた紙を見る。
「メモしたの?」
「うん、一言一句間違えない方がいいと思って。」
結構すれ違いや勘違いでおかしいことになってしまう俺達だ。父のこの配慮はありがたい。
「セラは5日間出れませんってことを伝えたら、『もし何か思い悩んでいるなら伝えて欲しい』って言ってたよ。」
(うわぁ…前に俺が勘違いしたことを踏まえて言ってるんだろうな…。)
以前、シバの兄とその婚約者のネックレスの件で盛大な勘違いをした俺は、何日もシバを遠ざけていた。その時も『5か月後なら空いてます。』と言って彼を混乱させてしまった。もしかしたら今回も、俺が何か早とちりをして彼の電話に出ないと思っているのかもしれない。
(今回は本当に、早く帰らせてもらえないだけなんだけど…。)
念の為、父にはもし明日電話があった時は『本当に忙しい』と言うように頼んでおいた。
「アインラスさんから伝言だよ。『帰ったら一番に君のところへ行くから、その日は1日空けておいてくれないか?一緒に過ごそう。』と、あとは…」
「ちょっと待って!それ本当にシバが言ったの?」
「うん。メモしたから間違ってはないけど…どうしたの?」
(こんな恋人に言うみたいな…。)
恥ずかしくて顔から火が出そうだが、父が何とも思っていないようなので、まだ多少は冷静に聞くことができる。父は俺の態度を気に留めず「続きあるけど、」と言って紙に目を落とした。
「えっと…『君と話せない夜は寂しい。5日後に元気な声を聞かせてくれ。』だって。」
「ふ、ふーん…そっか。」
父はこの伝言の内容に特に何も思っていないようであり俺が過剰に反応するのもおかしいだろう。俺は顔に力を入れて、表情を出来るだけ変えずにいることと、そっけない返事をするので精いっぱいだった。
「大好きなセラと早く話したいってことだね。」
「ち、違うから!」
(勝手に都合良い要約しないでよ!)
「そう?じゃあ、そういう事にしとこうか。あ!アインラスさんが帰ってきたらお祝いしなきゃね!またご飯に誘ったらどう?」
「うん。誘ってみる。」
父は、前回4人で食事をしたのが相当楽しかったようだ。父とラルクはシバが持参した酒をぐいぐい飲み、最後は笑い上戸の酔っぱらいと化していた。
(シバが帰る日は、何としても空けとこう。)
暦を確認すると、彼が帰ってくる日まではあと8日。声だけでなくやっと本人に会えるのだと思うと、想像だけで舞い上がってしまう。
「さ、寝ようか。お風呂は朝入ったら?」
「そうしようかな~。疲れた…。」
父は笑って、俺に伝言を書き留めた紙を渡すと、先に寝ると言って部屋へ入っていった。
(本当にあんなこと父さんに言ったのかな…。)
父とラルクは俺達が仲が良いことは知っており、シバの距離感が近いことも理解している。シバ自身も父達の前で俺に触ったりするのを躊躇う感じではないし、こういった少し恥ずかしい伝言も平気なのかもしれない。
俺はその紙に書かれている内容をもう一度見て、シバの低い声を思い出す。
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