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初めての告白
(こんな感じでいいのかな?)
何度も食事をした部屋で、使者達と夕食を取る。練習の時の食事とは違い静かな雰囲気だが、ウォルが前回の王子の訪問について話を広げたりと場を持たせている。
そして食事のコースも半分まできたところで、使者2人が俺に頭を下げた。
「マニエラ様。この度は不愉快な思いをさせたこと、申し訳ありません。」
「殿下も今回の報告で最後になさるとおっしゃってましたので、ご安心下さい。」
昼間に2人でした演技が効いたのか、彼らは俺達が愛し合っていると判断してくれたようだ。
「いえ、頭を上げてください。その言葉を聞いて安心しました。」
(2人は完全に諦めてるし、もう過度なイチャイチャはしなくていいかも。)
俺が期待のこもった目でウォルを見るが、彼は俺の心を読んで首を振る。
「これは食べたか?セラの好きそうな味付けだぞ。」
(や、やるのか…。)
この言葉の後は口の端に何かを付ける予定だ。
「はい!頂きます。」
スッとスプーンで重みのあるスープを掬うと、小さめに開けた口に入れる。口の端にスプーンが付いたと分かり、スッとそれを引くと俺の口の端に水っぽい違和感を感じる。
「わぁ、本当に美味しいですね。」
にこっと笑いながらウォルの方を向くと、彼は手を俺に近づけて、それをぬぐった…のだが、
(ゆ、指で?!)
練習では毎回布巾を使っていたが、どういうわけかウォルは指で俺の口の端を拭いた。そしてそのまま手を自分の口に持っていき、あろうことかペロッと舐めた。指は拭った時に俺の唇を掠めていき、指の腹の感触が残る。
(気まぐれで変な事するな!)
「ありがとうございます。」と言いながらも急にされた予定にない行動に焦って下を向いてしまった。それからは特に何も起こらず、俺は指示通りウォルを見つめていた。
明日の早朝帰るという使者達と別れ、俺とウォルは最初に話し合いをした医務室近くの部屋へ移動した。
入ってすぐに椅子に座る。そして堅苦しいスーツのボタンを1つ外して上着を脱いだ。
「はぁ~、やっと終わりましたね。」
「お前の頑張りもあって、無事婚約は免れた。」
ウォルも疲れているのか、俺の隣に座って足を組んだ。
「お疲れさん。」
隣から手が伸び、俺の頭をポンポンと撫でる。
「ウォルもお疲れ様でした。」
俺は疲れと安心から、思考が上手く働かない。頭に乗っている手に自分の手を乗せると、よしよしと撫でた。その手はビクッと反応し、自然と俺から離れていく。
「セラ。」
名前を呼んできたウォルに「はい。」と返事をすると、想像しようがない言葉が聞こえた。
「このまま、本当に結婚してしまうか?」
「え……?」
ウォルは俺の目をじっと見ている。冗談かと思うが、眼鏡の奥の目は真剣で茶化すこともできない。俺は言われた言葉の意味を考え黙り込む。
俺は今完全にアックスルートにおり、ウォルに告白まがいのことをされる理由が思い浮かばない。そして、この台詞はゲームにないものであり、どう返したらよいか分からない。
(だって、たった数日一緒にいただけなのに…。)
「お前と過ごしたこの5日間は悪くなかった。結婚はしないつもりでいたが、セラとならしてもいい。」
「え、何その上から目線…。」
驚いて思わず心の声が漏れる。
「……言い方が悪かったな。…セラ、好きだ。お前を俺にくれないか?」
(は…?)
頭は混乱しており、ポカンと開いた口からは「え…」という言葉しか出てこない。そして、俺が黙っていると、隣に座るウォルが屈むように俺に近づいてきた。顔があと数センチというところで、俺は思わずガタッと立ち上がる。
「あの!ウォルとお付き合いはできません!好きな人がいます!」
俺は立ち上がってウォルを見下ろしながら大声で言ってしまった。今度は俺の言葉にウォルが驚く。
俺の大声を最後にシーンとしてしまい、非常に気まずい。
(告白なんかされたことないから、どう返すのがいいか分かんないよ…!)
「…想う相手がいたのか。それは、すまなかったな。」
「えっと…」
まさかウォルから謝られるとは思わず、こちらこそ申し訳ない気持ちになる。ウォルは、「突然すぎた。」と言って俺に席に着くよう促した。
「すみません。あの、ウォルが嫌ってわけじゃなくて、本当のことなのでッ!」
「…いや、気にするな。俺も少し気持ちが高ぶっていたようだ。」
断る時の常套句のような台詞を言ってしまったが、ウォルは俺の返事になんだかスッキリした様子だ。たった5日間の疑似婚約で、気持ちを勘違いしていただけだろう。
(じゃないと、俺なんかに告白しないよね。)
ウォル攻略をしていて、好みそうな会話選択を返しているわけではないし、好かれる理由が思いつかない。
それから、ウォルは告白など無かったかのように今日の事やご褒美で欲しいものはないかと聞いてきた。そして話が盛り上がり、俺自身告白のことなどすっかり忘れだした頃、ウォルが俺の好きな人に関して聞いてきた。
「セラが好きなのは、一体どんな奴なんだ?」
「え?…えっと、完璧な人です。」
「…はは、ざっくりだな。全てがセラ好みってことか?」
勢いで好きな人がいることを言ってしまったが、まさかそれがシバだとは口が裂けても言えない。
(だからってアックスの事を言うわけにもいかないし…。)
俺は絶対名前は出さないようにしようと思いながら、ぽつぽつとシバについて告げた。そして、相手は俺のことを友達と思っていることや、その人と結ばれるのは諦めていることなど相談じみた話までしてしまった。
(ていうか、なんで俺の始めての恋愛相談相手がウォルなんだよ!)
「遅くなってしまったな。俺はこの後片づけをしてから戻るから送れないが、帰れそうか?」
「はい。あの、今日はお疲れ様でした。そして、すみません。」
「告白のことか…?言うなよ、忘れてもらおうと思ってたのに。」
「すみません…。」
恋愛事に慣れていない俺は、間違った言葉を言ってしまったらしい。情けないと自分を恥ずかしく思っていると、ウォルが笑いながら近づいた。
「そういう素直なところがいいと思ったんだ。もし振られたら俺のとこにきたらいい。」
「それってどういう…。」
俺がその意味を聞くが、フッと笑ってはぐらかされてしまった。
「こうやって話す関係になったんだ。これからは会ったら挨拶くらいしよう。」
「はい。」
「友人とでも思ってくれたらいい。」
「友人…。」
(俺とウォルが友達ってこと…?)
その言葉の並びはどうもしっくり来ず、違和感を感じる。
「おい、婚約までした仲だろう。そんな顔をするな。」
「あぅッ!」
黙っているとおでこをペチッと手で軽く弾かれた。ウォルは俺が弾みで出した変な声に笑っている。
「じゃあまたな。文官棟に用がある時はセラのところへ寄る。」
「はい。私も城に来た時には寄ります。」
俺とウォルはそう言って別れた。
(終わったぁ~…。)
とても長く感じた婚約者役も無事終わり、明日からはまた平和な日々がやってくる。最後の告白はなぜ起こったのか気になるが、もしかしたらウォルルートに行きたかった人の為の救済措置か…とも考えられる。
(アックスルート一択の俺には、ゲーム側のこの配慮も意味ないけどね。)
大きな城を後にして、俺は暗い夜道を宿舎目指して歩いた。
何度も食事をした部屋で、使者達と夕食を取る。練習の時の食事とは違い静かな雰囲気だが、ウォルが前回の王子の訪問について話を広げたりと場を持たせている。
そして食事のコースも半分まできたところで、使者2人が俺に頭を下げた。
「マニエラ様。この度は不愉快な思いをさせたこと、申し訳ありません。」
「殿下も今回の報告で最後になさるとおっしゃってましたので、ご安心下さい。」
昼間に2人でした演技が効いたのか、彼らは俺達が愛し合っていると判断してくれたようだ。
「いえ、頭を上げてください。その言葉を聞いて安心しました。」
(2人は完全に諦めてるし、もう過度なイチャイチャはしなくていいかも。)
俺が期待のこもった目でウォルを見るが、彼は俺の心を読んで首を振る。
「これは食べたか?セラの好きそうな味付けだぞ。」
(や、やるのか…。)
この言葉の後は口の端に何かを付ける予定だ。
「はい!頂きます。」
スッとスプーンで重みのあるスープを掬うと、小さめに開けた口に入れる。口の端にスプーンが付いたと分かり、スッとそれを引くと俺の口の端に水っぽい違和感を感じる。
「わぁ、本当に美味しいですね。」
にこっと笑いながらウォルの方を向くと、彼は手を俺に近づけて、それをぬぐった…のだが、
(ゆ、指で?!)
練習では毎回布巾を使っていたが、どういうわけかウォルは指で俺の口の端を拭いた。そしてそのまま手を自分の口に持っていき、あろうことかペロッと舐めた。指は拭った時に俺の唇を掠めていき、指の腹の感触が残る。
(気まぐれで変な事するな!)
「ありがとうございます。」と言いながらも急にされた予定にない行動に焦って下を向いてしまった。それからは特に何も起こらず、俺は指示通りウォルを見つめていた。
明日の早朝帰るという使者達と別れ、俺とウォルは最初に話し合いをした医務室近くの部屋へ移動した。
入ってすぐに椅子に座る。そして堅苦しいスーツのボタンを1つ外して上着を脱いだ。
「はぁ~、やっと終わりましたね。」
「お前の頑張りもあって、無事婚約は免れた。」
ウォルも疲れているのか、俺の隣に座って足を組んだ。
「お疲れさん。」
隣から手が伸び、俺の頭をポンポンと撫でる。
「ウォルもお疲れ様でした。」
俺は疲れと安心から、思考が上手く働かない。頭に乗っている手に自分の手を乗せると、よしよしと撫でた。その手はビクッと反応し、自然と俺から離れていく。
「セラ。」
名前を呼んできたウォルに「はい。」と返事をすると、想像しようがない言葉が聞こえた。
「このまま、本当に結婚してしまうか?」
「え……?」
ウォルは俺の目をじっと見ている。冗談かと思うが、眼鏡の奥の目は真剣で茶化すこともできない。俺は言われた言葉の意味を考え黙り込む。
俺は今完全にアックスルートにおり、ウォルに告白まがいのことをされる理由が思い浮かばない。そして、この台詞はゲームにないものであり、どう返したらよいか分からない。
(だって、たった数日一緒にいただけなのに…。)
「お前と過ごしたこの5日間は悪くなかった。結婚はしないつもりでいたが、セラとならしてもいい。」
「え、何その上から目線…。」
驚いて思わず心の声が漏れる。
「……言い方が悪かったな。…セラ、好きだ。お前を俺にくれないか?」
(は…?)
頭は混乱しており、ポカンと開いた口からは「え…」という言葉しか出てこない。そして、俺が黙っていると、隣に座るウォルが屈むように俺に近づいてきた。顔があと数センチというところで、俺は思わずガタッと立ち上がる。
「あの!ウォルとお付き合いはできません!好きな人がいます!」
俺は立ち上がってウォルを見下ろしながら大声で言ってしまった。今度は俺の言葉にウォルが驚く。
俺の大声を最後にシーンとしてしまい、非常に気まずい。
(告白なんかされたことないから、どう返すのがいいか分かんないよ…!)
「…想う相手がいたのか。それは、すまなかったな。」
「えっと…」
まさかウォルから謝られるとは思わず、こちらこそ申し訳ない気持ちになる。ウォルは、「突然すぎた。」と言って俺に席に着くよう促した。
「すみません。あの、ウォルが嫌ってわけじゃなくて、本当のことなのでッ!」
「…いや、気にするな。俺も少し気持ちが高ぶっていたようだ。」
断る時の常套句のような台詞を言ってしまったが、ウォルは俺の返事になんだかスッキリした様子だ。たった5日間の疑似婚約で、気持ちを勘違いしていただけだろう。
(じゃないと、俺なんかに告白しないよね。)
ウォル攻略をしていて、好みそうな会話選択を返しているわけではないし、好かれる理由が思いつかない。
それから、ウォルは告白など無かったかのように今日の事やご褒美で欲しいものはないかと聞いてきた。そして話が盛り上がり、俺自身告白のことなどすっかり忘れだした頃、ウォルが俺の好きな人に関して聞いてきた。
「セラが好きなのは、一体どんな奴なんだ?」
「え?…えっと、完璧な人です。」
「…はは、ざっくりだな。全てがセラ好みってことか?」
勢いで好きな人がいることを言ってしまったが、まさかそれがシバだとは口が裂けても言えない。
(だからってアックスの事を言うわけにもいかないし…。)
俺は絶対名前は出さないようにしようと思いながら、ぽつぽつとシバについて告げた。そして、相手は俺のことを友達と思っていることや、その人と結ばれるのは諦めていることなど相談じみた話までしてしまった。
(ていうか、なんで俺の始めての恋愛相談相手がウォルなんだよ!)
「遅くなってしまったな。俺はこの後片づけをしてから戻るから送れないが、帰れそうか?」
「はい。あの、今日はお疲れ様でした。そして、すみません。」
「告白のことか…?言うなよ、忘れてもらおうと思ってたのに。」
「すみません…。」
恋愛事に慣れていない俺は、間違った言葉を言ってしまったらしい。情けないと自分を恥ずかしく思っていると、ウォルが笑いながら近づいた。
「そういう素直なところがいいと思ったんだ。もし振られたら俺のとこにきたらいい。」
「それってどういう…。」
俺がその意味を聞くが、フッと笑ってはぐらかされてしまった。
「こうやって話す関係になったんだ。これからは会ったら挨拶くらいしよう。」
「はい。」
「友人とでも思ってくれたらいい。」
「友人…。」
(俺とウォルが友達ってこと…?)
その言葉の並びはどうもしっくり来ず、違和感を感じる。
「おい、婚約までした仲だろう。そんな顔をするな。」
「あぅッ!」
黙っているとおでこをペチッと手で軽く弾かれた。ウォルは俺が弾みで出した変な声に笑っている。
「じゃあまたな。文官棟に用がある時はセラのところへ寄る。」
「はい。私も城に来た時には寄ります。」
俺とウォルはそう言って別れた。
(終わったぁ~…。)
とても長く感じた婚約者役も無事終わり、明日からはまた平和な日々がやってくる。最後の告白はなぜ起こったのか気になるが、もしかしたらウォルルートに行きたかった人の為の救済措置か…とも考えられる。
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