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いよいよ明日は
「セラのおかげで良い品が買えた。」
「良かった。どんなお茶を普段飲んでるのか覚えててくれたから、好みが分かりやすくて助かったよ。」
「しかし、あんなに種類があるとは知らなかった。」
オリアと出掛ける日、彼は約束通り俺の宿舎まで迎え来た。
以前シバと訪れた店に案内し、そこで店員に色々尋ねるつもりであったが、真面目なオリアは、上司が普段どのようなお茶を飲んでいるのかを詳細に覚えており、そのおかげでスムーズに買い物が済んだ。お茶の葉と味を変化させる為のスパイスを購入し、オリアは満足そうだ。
「次はセラの番だな。どこへ行くんだ?」
「あの、今から行く所なんだけど、宝石店なんだ。」
「…セラ、装飾品なら市場でもいいんじゃないか?宝石店は父と昔行ったことがあるが、値段に驚いた記憶しかない。」
「高いのは承知なんだけど、どうしても欲しくて…。」
「セラ、大事な給金なのだから本当に欲しいのかどうか考えなければ駄目だ。」
オリアは心配げな雰囲気であり、彼の発言は俺を思ってのことだろう。このままでは「一晩考えろ」と連れて帰られそうだ。
(誕生日まであと少しだし、今日買っておかないと。)
「オリアに隠してたわけじゃないんだけどさ…。」
「どうしたセラ。」
「俺、恋人がいてネックレスを贈りたいんだ。」
「……。」
俺が正直に理由を話すと、オリアはポカンと口を開けてフリーズした。黙っている彼に、「だから、どうしても買いたいんだけど…。」と告げると、オリアは俺の手を取った。
「…そうだったのか。セラに恋人がいたとは知らなかった!」
「えっと、最近できたから、まだ伝えれてなくて。」
「そういうものは、言いたい時でいいんだ!…よし、行くぞ!」
オリアは若干頬を蒸気させ、目は輝いている。
(なんだか、はりきってる…?)
俺の大事なネックレス選びを早く助けたいのか、オリアは普段より若干大きな声で「店はどこだ?」と言いながら俺の手を引いた。
店の名前を覚えていた俺は、人に尋ねながら父に教えてもらった裏通りの店に入った。
「いらっしゃいませ。」
「こんばんは。」「世話になる!」
感じの良いおじいさんに迎えられ、俺とオリアは店内を見渡した。そこはこじんまりとしていながらも、上品な雰囲気であり、華美過ぎない装飾品が並んでいる。
「あの、ネックレスを見たいんですが。」
「かしこまりました。ご希望はございますか?」
「えっと、付けるのは20歳代の男性なので、あまり華奢なデザインは…。」
「男なのか…!」
横からオリアが俺に反応し、それに頷きながら店員に希望を伝える。
「背は高くてがっしりしてて…耳に青くて丸いピアスをしているので、それに合うようなものを探してます。」
「青い…ピアス…?」
俺が店員と会話をする間、オリアはその特徴から、誰なのか特定しているようだ。
「かしこまりました。こちらへどうぞ。」
店員は俺の言葉から素早く何点か見積もると、箱を開けて中身を見せてきた。青く丸い粒の付いたネックレスがいくつかあり、俺はその中で1つピンときたものを指差す。
(これ、シバのピアスの色に一番近い。それに肌の色にも合いそう。)
「こんな感じがいいです。」
「この石のネックレスは何点かありますので、全て持ってきますね。」
「お願いします。」
俺がそう言うと、素早く店の奥へ入っていった店員。こんなにすぐに決まるとは…と俺が安心していると、黙っていたオリアがおずおずと声を掛けた。
「セラ、詮索する気はないので答えなくても良いが…その、相手はもしかして…、」
「えっと…アインラス様だよ。」
「アッ…?!」
オリアは目を見開いて、またフリーズしてしまった。
「セラ、すまなかった。」
「気にしないで。凄くかっこいいのが買えたし。」
オリアは店から出てから、ずっとこの調子でズーンと沈んでいる。というのも、俺とシバが親しくしていることを知らなかったオリアは、いきなり告げられた事実に混乱したようだ。あれほど俺にアドバイスをするのだとはりきっていたにも関わらず、結局は俺一人で全て決めてしまった。
「オリアにとっては急だったよね。実は、前から仲良くさせてもらってたんだ。」
「そうだったのか…。私はてっきり、セラと仲の良いシュリ殿と恋仲なのかと…。」
「え!オリア、シュリと俺が付き合ってると思ってたの?」
「いや…恋人がいると言われて思い浮かんだのが彼女だっただけだ。勝手に変な憶測を…すまない。」
そう言ってさらに謝る姿に、「気にしてないよ」と笑うと、オリアが「ひとつ言ってもいいか?」と俺に尋ねてきた。
(え…なんだろ…。)
シバと付き合っていることに関して兄目線で何かを言われるのか、それとも給金の1か月分を使って買ってしまったネックレスに対して意見するのか。俺が続きを待っていると、オリアは頬を少し赤らめて口を開いた。
「アインラス様は、素晴らしい方だ。」
そう話しだしたオリアは、仕事で何度かシバと関わっており、その度にその有能さに憧れるのだと熱く説明し始めた。どうやら先ほどは、尊敬している彼と友人である俺の関係がリンクせず驚いただけのようだ。
(もしかして、オリアもシバの熱狂的ファンの1人…?)
そう思わざるを得ないほど、オリアは帰りの馬車の中でずっとシバについて語っていた。
「アックス!」
「セラ、お疲れ。」
オリアとの買い物をして数日が経ち、明日はいよいよ俺の誕生日だった。シバとは毎朝執務室で顔を合わせているが、それ以降はずっと別々に過ごした。日が経つにつれだんだんと寂しそうな姿を見せる彼に、俺はせめてもと毎日弁当を手渡していた。
しかし明日は一緒に過ごせる。そして大切なミッションもある。
(明日、ネックレスを渡すんだ。)
人生で一番の高い買い物と、それを渡した時の反応を考えるとワクワクし、毎晩ネックレスを眺めた。
そして今日、仕事終わりにアックスのいる馬小屋を訪ねたのは、昼間彼が文官棟を訪ねて来たからだった。
「セラ、昼間はすまなかったな。」
「いえいえ!ちょうど俺の担当の案件だったので、お話できてよかったです。」
騎士棟と関わる仕事を回されることが多い俺は、アックスが街への巡回を増やす為の予算の相談に資料を交えて説明をした。
「エマが寂しがってるって聞いて、さっそく来ちゃいました。」
「最近忙しかったのか?ここに来ないから心配してたんだ。」
俺と友人でいると決めた彼は、以前と変わらず親しく接してくれる。もしかしたら気まずくなるかもしれないと心配していただけに、彼とこれからも仲良く付き合っていけるのだと嬉しく思った。
「えっと、ちょっと準備があって…。」
「準備?もしかして誕生日のか?」
「アックス、日付を覚えてるんですか?」
「当たり前だろ。…今度改めて祝わせてくれ。あいつらも一緒にな。」
「ありがとうございます。」
職場体験の最中、騎士棟の会議室で誕生日を聞かれたことがある。
その時アックスは、「一緒に過ごそう」と2人きりを連想させるような発言をした。しかし、今は俺がシバと交際を始めたと知っているため、同僚を含め大人数で祝いたいと言ってくれたのだろう。
「明日はアインラス殿と過ごすんだろう?セラが何かを準備する必要なんてあるのか?」
「えっと、誕生日ってことはシバには伝えてないんです。」
「そうなのか?…アインラス殿が後日それを知ることになったら、悲しむと思うが。」
アックスはシバを若干心配しているようで、「先に伝えた方がいい。」とアドバイスもしてくれた。
「作戦があって…実はネックレスを渡す予定なんです。」
「………は?」
アックスは俺の言葉に、思わずと言った風に驚いた声を出した。
さらっと終わらせるつもりが、予想以上にアックスがネックレスについて尋ねてくる為、俺は全てを説明した。明日の誕生日に、サプライズでそれを渡して「最高の誕生日になりました」と言うのだと…キザな計画を打ち明けるのは少し恥ずかしいが、誰かに聞いて欲しい気持ちもあった。
説明を静かに聞いていたアックスだったが、一通り聞くと頷いた。
「セラがそんなに…思い切った行動に出るとはな。」
「え?そ、そうですか?」
(俺がネックレス準備するの…そんなに意外?)
「ああ。少し驚いたが……俺は良いと思う。」
乙女ゲーム攻略キャラ人気No.1に言われると、この計画は正解なのだと自信がついた。
「明日、頑張れよ。」
「はい!」
アックスは俺の頭を撫で、それからは談笑しながら一緒にエマの手入れをして楽しい時間を過ごした。
「良かった。どんなお茶を普段飲んでるのか覚えててくれたから、好みが分かりやすくて助かったよ。」
「しかし、あんなに種類があるとは知らなかった。」
オリアと出掛ける日、彼は約束通り俺の宿舎まで迎え来た。
以前シバと訪れた店に案内し、そこで店員に色々尋ねるつもりであったが、真面目なオリアは、上司が普段どのようなお茶を飲んでいるのかを詳細に覚えており、そのおかげでスムーズに買い物が済んだ。お茶の葉と味を変化させる為のスパイスを購入し、オリアは満足そうだ。
「次はセラの番だな。どこへ行くんだ?」
「あの、今から行く所なんだけど、宝石店なんだ。」
「…セラ、装飾品なら市場でもいいんじゃないか?宝石店は父と昔行ったことがあるが、値段に驚いた記憶しかない。」
「高いのは承知なんだけど、どうしても欲しくて…。」
「セラ、大事な給金なのだから本当に欲しいのかどうか考えなければ駄目だ。」
オリアは心配げな雰囲気であり、彼の発言は俺を思ってのことだろう。このままでは「一晩考えろ」と連れて帰られそうだ。
(誕生日まであと少しだし、今日買っておかないと。)
「オリアに隠してたわけじゃないんだけどさ…。」
「どうしたセラ。」
「俺、恋人がいてネックレスを贈りたいんだ。」
「……。」
俺が正直に理由を話すと、オリアはポカンと口を開けてフリーズした。黙っている彼に、「だから、どうしても買いたいんだけど…。」と告げると、オリアは俺の手を取った。
「…そうだったのか。セラに恋人がいたとは知らなかった!」
「えっと、最近できたから、まだ伝えれてなくて。」
「そういうものは、言いたい時でいいんだ!…よし、行くぞ!」
オリアは若干頬を蒸気させ、目は輝いている。
(なんだか、はりきってる…?)
俺の大事なネックレス選びを早く助けたいのか、オリアは普段より若干大きな声で「店はどこだ?」と言いながら俺の手を引いた。
店の名前を覚えていた俺は、人に尋ねながら父に教えてもらった裏通りの店に入った。
「いらっしゃいませ。」
「こんばんは。」「世話になる!」
感じの良いおじいさんに迎えられ、俺とオリアは店内を見渡した。そこはこじんまりとしていながらも、上品な雰囲気であり、華美過ぎない装飾品が並んでいる。
「あの、ネックレスを見たいんですが。」
「かしこまりました。ご希望はございますか?」
「えっと、付けるのは20歳代の男性なので、あまり華奢なデザインは…。」
「男なのか…!」
横からオリアが俺に反応し、それに頷きながら店員に希望を伝える。
「背は高くてがっしりしてて…耳に青くて丸いピアスをしているので、それに合うようなものを探してます。」
「青い…ピアス…?」
俺が店員と会話をする間、オリアはその特徴から、誰なのか特定しているようだ。
「かしこまりました。こちらへどうぞ。」
店員は俺の言葉から素早く何点か見積もると、箱を開けて中身を見せてきた。青く丸い粒の付いたネックレスがいくつかあり、俺はその中で1つピンときたものを指差す。
(これ、シバのピアスの色に一番近い。それに肌の色にも合いそう。)
「こんな感じがいいです。」
「この石のネックレスは何点かありますので、全て持ってきますね。」
「お願いします。」
俺がそう言うと、素早く店の奥へ入っていった店員。こんなにすぐに決まるとは…と俺が安心していると、黙っていたオリアがおずおずと声を掛けた。
「セラ、詮索する気はないので答えなくても良いが…その、相手はもしかして…、」
「えっと…アインラス様だよ。」
「アッ…?!」
オリアは目を見開いて、またフリーズしてしまった。
「セラ、すまなかった。」
「気にしないで。凄くかっこいいのが買えたし。」
オリアは店から出てから、ずっとこの調子でズーンと沈んでいる。というのも、俺とシバが親しくしていることを知らなかったオリアは、いきなり告げられた事実に混乱したようだ。あれほど俺にアドバイスをするのだとはりきっていたにも関わらず、結局は俺一人で全て決めてしまった。
「オリアにとっては急だったよね。実は、前から仲良くさせてもらってたんだ。」
「そうだったのか…。私はてっきり、セラと仲の良いシュリ殿と恋仲なのかと…。」
「え!オリア、シュリと俺が付き合ってると思ってたの?」
「いや…恋人がいると言われて思い浮かんだのが彼女だっただけだ。勝手に変な憶測を…すまない。」
そう言ってさらに謝る姿に、「気にしてないよ」と笑うと、オリアが「ひとつ言ってもいいか?」と俺に尋ねてきた。
(え…なんだろ…。)
シバと付き合っていることに関して兄目線で何かを言われるのか、それとも給金の1か月分を使って買ってしまったネックレスに対して意見するのか。俺が続きを待っていると、オリアは頬を少し赤らめて口を開いた。
「アインラス様は、素晴らしい方だ。」
そう話しだしたオリアは、仕事で何度かシバと関わっており、その度にその有能さに憧れるのだと熱く説明し始めた。どうやら先ほどは、尊敬している彼と友人である俺の関係がリンクせず驚いただけのようだ。
(もしかして、オリアもシバの熱狂的ファンの1人…?)
そう思わざるを得ないほど、オリアは帰りの馬車の中でずっとシバについて語っていた。
「アックス!」
「セラ、お疲れ。」
オリアとの買い物をして数日が経ち、明日はいよいよ俺の誕生日だった。シバとは毎朝執務室で顔を合わせているが、それ以降はずっと別々に過ごした。日が経つにつれだんだんと寂しそうな姿を見せる彼に、俺はせめてもと毎日弁当を手渡していた。
しかし明日は一緒に過ごせる。そして大切なミッションもある。
(明日、ネックレスを渡すんだ。)
人生で一番の高い買い物と、それを渡した時の反応を考えるとワクワクし、毎晩ネックレスを眺めた。
そして今日、仕事終わりにアックスのいる馬小屋を訪ねたのは、昼間彼が文官棟を訪ねて来たからだった。
「セラ、昼間はすまなかったな。」
「いえいえ!ちょうど俺の担当の案件だったので、お話できてよかったです。」
騎士棟と関わる仕事を回されることが多い俺は、アックスが街への巡回を増やす為の予算の相談に資料を交えて説明をした。
「エマが寂しがってるって聞いて、さっそく来ちゃいました。」
「最近忙しかったのか?ここに来ないから心配してたんだ。」
俺と友人でいると決めた彼は、以前と変わらず親しく接してくれる。もしかしたら気まずくなるかもしれないと心配していただけに、彼とこれからも仲良く付き合っていけるのだと嬉しく思った。
「えっと、ちょっと準備があって…。」
「準備?もしかして誕生日のか?」
「アックス、日付を覚えてるんですか?」
「当たり前だろ。…今度改めて祝わせてくれ。あいつらも一緒にな。」
「ありがとうございます。」
職場体験の最中、騎士棟の会議室で誕生日を聞かれたことがある。
その時アックスは、「一緒に過ごそう」と2人きりを連想させるような発言をした。しかし、今は俺がシバと交際を始めたと知っているため、同僚を含め大人数で祝いたいと言ってくれたのだろう。
「明日はアインラス殿と過ごすんだろう?セラが何かを準備する必要なんてあるのか?」
「えっと、誕生日ってことはシバには伝えてないんです。」
「そうなのか?…アインラス殿が後日それを知ることになったら、悲しむと思うが。」
アックスはシバを若干心配しているようで、「先に伝えた方がいい。」とアドバイスもしてくれた。
「作戦があって…実はネックレスを渡す予定なんです。」
「………は?」
アックスは俺の言葉に、思わずと言った風に驚いた声を出した。
さらっと終わらせるつもりが、予想以上にアックスがネックレスについて尋ねてくる為、俺は全てを説明した。明日の誕生日に、サプライズでそれを渡して「最高の誕生日になりました」と言うのだと…キザな計画を打ち明けるのは少し恥ずかしいが、誰かに聞いて欲しい気持ちもあった。
説明を静かに聞いていたアックスだったが、一通り聞くと頷いた。
「セラがそんなに…思い切った行動に出るとはな。」
「え?そ、そうですか?」
(俺がネックレス準備するの…そんなに意外?)
「ああ。少し驚いたが……俺は良いと思う。」
乙女ゲーム攻略キャラ人気No.1に言われると、この計画は正解なのだと自信がついた。
「明日、頑張れよ。」
「はい!」
アックスは俺の頭を撫で、それからは談笑しながら一緒にエマの手入れをして楽しい時間を過ごした。
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