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強力な助っ人
「アックス!…何かあったんですか?」
巡回中であろう彼は、俺達が地面に跪いている姿を見て眉をひそめた。先ほどの声のトーンから、この城で何かがあったのではと心配になりアックスに尋ねる。
「それはこっちの台詞だ。この宿舎の周辺で物音と不審者の陰が見えると連絡があってな。まさかセラ達だったとは…。」
「迷惑を掛けてすまない。探し物をしているだけだ。」
「探し物…?」
不思議そうにこちらを見ているアックスに、シバが立ちあがって頭を下げる。
アックスは、今日俺がシバへネックレスを渡すことを知っており、今頃は無事成功して部屋で過ごしていると思っていたようだ。俺にチラッと視線を送るその顔は「どういうことだ?」と聞いている。
「えっと、ネックレスをこの辺りに投げてしまって…。」
「は?……いや、どうしたらそんな状況になるんだ。」
「…私が悪いんだ。」
俺が手短に探し物を説明すると、アックスは頭にハテナマークを浮かべていた。そしてシバは自分が悪いのだと言いながら、捜索のため再び手を動かし始めた。
「とにかく、そういうことなので不審者では無いです。お仕事を増やしてしまってすみませんでした。」
「どれくらい探しているんだ。」
「1時間くらい…です。」
「……俺も探すのを手伝おう。」
説明不十分で状況が飲み込めていない様子のアックスだったが、腕を組むと、どこから投げたのか聞いてきた。
普段であれば「結構だ」と言って申し出を断りそうなシバも、どうしても見つけたい気持ちからか、「お願いできるか」と頭を下げた。
「どんなネックレスだ?」
窓の位置とどう投げたのかを説明した後、アックスはその特徴を聞いてきた。
「小さな青い宝石がついています。光に当たると光るので、さっきからランプを持って探してるんですが…。」
アックスは明かりを地面に置いて草をかき分けているシバを見て、少し考えるそぶりを見せた。
「投げた先は見えなかったんだな?」
「はい。そんなに飛距離はないはずなので、落ちるとしたらこの辺りだと思います。」
「窓の横に木があるが、そこへぶつかったかもしれないな。まっすぐネックレスが飛んでいったとも限らない。」
木は窓より少し右寄りに生えており、もしそれに当たったとすればすぐ下に落ちているはずだ。
「この辺りは十分に探したんだろう?では、次は木の下だ。」
「…さすがアックス!」
「こういうのは慣れてるんだ。街の巡回の時に探し物を頼まれることがあるからな。」
俺は凄いと尊敬の目で彼を見る。シバは俺達の会話を聞いて立ち上がると、黙って木の下へ移動した。
「うーん、無いですね…。」
アックスの発想に「それだ!」と期待したものの、木の下を見てもネックレスは落ちていなかった。
「…木に引っかかっている可能性があるな。明かりで照らしてみよう。」
アックスは部屋の窓横の木に向けて、持っていた手持ちのライトを当てる。枝の先から一つ一つ照らしていくと、特に葉が生い茂った部分で、キラッと何かが光った。
「あ、あれ!」
「ああ、何かあるな。もう一度当てるのでよく見ててくれ。」
再び光を当てると、そこにまたキラリと光る小さな粒が見えた。
「あれは…絶対にネックレスです。」
「よし、取りに行くか。」
「俺が取ります。あそこなら窓から手が届きそうだし、下から明かりを当ててもらってていいですか?」
「分かった。」
部屋へ向かおうとすると、シバが俺の服の袖を引いた。
「シバ?」
「危ないので私が取りに行く。」
「…大丈夫ですよ。」
「落ちたら怪我をする。」
シバが駄目だと念を押すが、俺は掴まれている服を引いてそれを外した。
「シバには俺から手渡したいので、まだ触っちゃ駄目です。」
俺が目を見てそう言うと、シバは諦めたように「分かった。」と言った。
(良かった。これでシバにネックレスを渡せる!)
俺は意気揚々と自分の部屋を目指す。その後ろでは、「アインラス殿、」とアックスが真剣な声色でシバに話し掛けていた。
「あと少し…。」
「セラ、大丈夫か?」「これは届きそうにないな。」
手を伸ばして光るネックレスに手を伸ばすが、あと2センチほど距離が足りない。2人は下から俺に降りてくるよう声を掛けた。
(あと少しなのに…。)
アックスの当てる明かりによりキラリと石が光り、まるで「早く助けて」といわんばかりだ。俺は窓の淵に乗せた足を少し前にずらし、枠を手で強く握ってグンと前へ出た。
「あ、…やった。」
俺の指にスッとチェーンが掛かり、やっと手の中にそれが戻ってきた。
思わずその輝きを確認しようと視線を向けた時、掴んでいた窓枠から手が滑った。そして落下する時の独特な浮遊感を感じ、ぎゅっと目を瞑る。
「ッわぁぁああ!」
「「セラ!!」」
ぼすッ…
「…い、ッつ…。」
「セラ、大丈夫か?!どこか打ったりは…ッ!」
ドンと勢いよく落ちたはずであるが、予想していたほどの衝撃は無い。そして恐怖でギュッと瞑っていた目を開くと、シバが焦った顔でこちらを見ている。その瞳は少し揺れており、震えた手が俺の頬を撫でた。
「セラ…無事か。」
「シバ、まさか俺の下敷きに…!」
「受け止めただけだ。怪我はないか?」
「…ありません。」
俺も彼が心配になり、大丈夫かとその頬に手を添え顔色を確かめる。衝撃は多少あったが、彼は俺を見事に受け止めたようで、お互いにどこも怪我をしていない。
「無事で良かった…。」
ぎゅっと抱きしめてくるシバに照れていると、後ろから名前を呼ばれた。
「見つかって良かったな。」
「アックス…ありがとうございました。あのままじゃ俺達ずっと見つけられなかったと思います。」
「いいさ。また礼に菓子でも作って持ってきてくれ。」
アックスはそう言って、抱きしめられている俺の頭を撫でて笑った。その手が離れていくと同時に、シバは俺を支えるように立ち上がるとアックスに向き合った。
「…迷惑を掛けた。」
「いや、気にするな。ただ…先程の件は忘れないでくれ。」
「ああ。」
(俺のいない間に何か話をしたのかな…。)
会話は少ないが、以前よりかは打ち解けた様子の2人を見て少し安心した。
「じゃあ、俺は行くから。セラもアインラス殿も、もう大人しく部屋に帰るんだぞ。」
「はい。」「…ああ。」
「またな。…あ、そうだセラ。誕生日おめでとう。」
「…ア、アックスッ!」
(シバの前で…い、言っちゃった!)
慌てて彼に「やめて」とジェスチャーを送る。
「ああ、まだ俺にしか伝えてなかったのか。」
アックスはいたずらっぽく笑うと、今度こそ俺達に背を向け颯爽と歩いて行った。
完全に彼が見えなくなってから恐る恐る隣を伺う。見上げた先には、表情を失ったシバが前を向いていた。
「シバ、離れてください。お風呂に入ってもう寝ましょう。」
「……。」
部屋に帰った俺達は、なんとなく気まずい雰囲気のままだった。俺は手の中のネックレスを一旦箱へ戻しに行くと、立ち尽くしているシバに「風呂でもどうか」と声を掛ける。
すると彼は俺を黙って見つめ、急に抱きしめてきたのだ。
(で、そのままだんまりか…。)
シバが無言でいる時は、必ず俺に何か伝えたいことがある。普段であれば少し待っていると自然と口を開くが、今日は様子が違い、ずっと黙ったままだ。
「シバ、もう夜も遅いですし…寝ましょう?」
「……。」
「あの、誕生日だと黙っていたのは謝りますから。でも、私にも計画がいろいろあって、」
「…君にこれ以上幻滅されたくない。」
(どういう意味だ…?)
「幻滅なんて最初からしていませんよ。」
「だが、君を泣かせた私が…今もトロント殿に嫉妬していると言ったら…狭量だと思うはずだ。」
(嫉妬…。誕生日をアックスだけに教えたからか。)
俺はシバの背中をポンポンと撫でる。
「心が狭いだなんて思いませんよ。それに理由があって黙っていたんです。」
「……。」
「その件は、ベッドの中で聞いてくれますか?」
「……。」
黙っていながらもコクリと頷いた彼にホッとする。腕の力が少し弱まり、俺は胸を軽く押すと「先にシャワーを浴びてきます。」と言って風呂場へ向かった。
(はぁ~、これから俺のキザな計画を説明しないといけないのか。)
それを伝えるのはかなり恥ずかしいが、彼を安心させるためには仕方がないと、諦めてシャワーの栓をひねった。
巡回中であろう彼は、俺達が地面に跪いている姿を見て眉をひそめた。先ほどの声のトーンから、この城で何かがあったのではと心配になりアックスに尋ねる。
「それはこっちの台詞だ。この宿舎の周辺で物音と不審者の陰が見えると連絡があってな。まさかセラ達だったとは…。」
「迷惑を掛けてすまない。探し物をしているだけだ。」
「探し物…?」
不思議そうにこちらを見ているアックスに、シバが立ちあがって頭を下げる。
アックスは、今日俺がシバへネックレスを渡すことを知っており、今頃は無事成功して部屋で過ごしていると思っていたようだ。俺にチラッと視線を送るその顔は「どういうことだ?」と聞いている。
「えっと、ネックレスをこの辺りに投げてしまって…。」
「は?……いや、どうしたらそんな状況になるんだ。」
「…私が悪いんだ。」
俺が手短に探し物を説明すると、アックスは頭にハテナマークを浮かべていた。そしてシバは自分が悪いのだと言いながら、捜索のため再び手を動かし始めた。
「とにかく、そういうことなので不審者では無いです。お仕事を増やしてしまってすみませんでした。」
「どれくらい探しているんだ。」
「1時間くらい…です。」
「……俺も探すのを手伝おう。」
説明不十分で状況が飲み込めていない様子のアックスだったが、腕を組むと、どこから投げたのか聞いてきた。
普段であれば「結構だ」と言って申し出を断りそうなシバも、どうしても見つけたい気持ちからか、「お願いできるか」と頭を下げた。
「どんなネックレスだ?」
窓の位置とどう投げたのかを説明した後、アックスはその特徴を聞いてきた。
「小さな青い宝石がついています。光に当たると光るので、さっきからランプを持って探してるんですが…。」
アックスは明かりを地面に置いて草をかき分けているシバを見て、少し考えるそぶりを見せた。
「投げた先は見えなかったんだな?」
「はい。そんなに飛距離はないはずなので、落ちるとしたらこの辺りだと思います。」
「窓の横に木があるが、そこへぶつかったかもしれないな。まっすぐネックレスが飛んでいったとも限らない。」
木は窓より少し右寄りに生えており、もしそれに当たったとすればすぐ下に落ちているはずだ。
「この辺りは十分に探したんだろう?では、次は木の下だ。」
「…さすがアックス!」
「こういうのは慣れてるんだ。街の巡回の時に探し物を頼まれることがあるからな。」
俺は凄いと尊敬の目で彼を見る。シバは俺達の会話を聞いて立ち上がると、黙って木の下へ移動した。
「うーん、無いですね…。」
アックスの発想に「それだ!」と期待したものの、木の下を見てもネックレスは落ちていなかった。
「…木に引っかかっている可能性があるな。明かりで照らしてみよう。」
アックスは部屋の窓横の木に向けて、持っていた手持ちのライトを当てる。枝の先から一つ一つ照らしていくと、特に葉が生い茂った部分で、キラッと何かが光った。
「あ、あれ!」
「ああ、何かあるな。もう一度当てるのでよく見ててくれ。」
再び光を当てると、そこにまたキラリと光る小さな粒が見えた。
「あれは…絶対にネックレスです。」
「よし、取りに行くか。」
「俺が取ります。あそこなら窓から手が届きそうだし、下から明かりを当ててもらってていいですか?」
「分かった。」
部屋へ向かおうとすると、シバが俺の服の袖を引いた。
「シバ?」
「危ないので私が取りに行く。」
「…大丈夫ですよ。」
「落ちたら怪我をする。」
シバが駄目だと念を押すが、俺は掴まれている服を引いてそれを外した。
「シバには俺から手渡したいので、まだ触っちゃ駄目です。」
俺が目を見てそう言うと、シバは諦めたように「分かった。」と言った。
(良かった。これでシバにネックレスを渡せる!)
俺は意気揚々と自分の部屋を目指す。その後ろでは、「アインラス殿、」とアックスが真剣な声色でシバに話し掛けていた。
「あと少し…。」
「セラ、大丈夫か?」「これは届きそうにないな。」
手を伸ばして光るネックレスに手を伸ばすが、あと2センチほど距離が足りない。2人は下から俺に降りてくるよう声を掛けた。
(あと少しなのに…。)
アックスの当てる明かりによりキラリと石が光り、まるで「早く助けて」といわんばかりだ。俺は窓の淵に乗せた足を少し前にずらし、枠を手で強く握ってグンと前へ出た。
「あ、…やった。」
俺の指にスッとチェーンが掛かり、やっと手の中にそれが戻ってきた。
思わずその輝きを確認しようと視線を向けた時、掴んでいた窓枠から手が滑った。そして落下する時の独特な浮遊感を感じ、ぎゅっと目を瞑る。
「ッわぁぁああ!」
「「セラ!!」」
ぼすッ…
「…い、ッつ…。」
「セラ、大丈夫か?!どこか打ったりは…ッ!」
ドンと勢いよく落ちたはずであるが、予想していたほどの衝撃は無い。そして恐怖でギュッと瞑っていた目を開くと、シバが焦った顔でこちらを見ている。その瞳は少し揺れており、震えた手が俺の頬を撫でた。
「セラ…無事か。」
「シバ、まさか俺の下敷きに…!」
「受け止めただけだ。怪我はないか?」
「…ありません。」
俺も彼が心配になり、大丈夫かとその頬に手を添え顔色を確かめる。衝撃は多少あったが、彼は俺を見事に受け止めたようで、お互いにどこも怪我をしていない。
「無事で良かった…。」
ぎゅっと抱きしめてくるシバに照れていると、後ろから名前を呼ばれた。
「見つかって良かったな。」
「アックス…ありがとうございました。あのままじゃ俺達ずっと見つけられなかったと思います。」
「いいさ。また礼に菓子でも作って持ってきてくれ。」
アックスはそう言って、抱きしめられている俺の頭を撫でて笑った。その手が離れていくと同時に、シバは俺を支えるように立ち上がるとアックスに向き合った。
「…迷惑を掛けた。」
「いや、気にするな。ただ…先程の件は忘れないでくれ。」
「ああ。」
(俺のいない間に何か話をしたのかな…。)
会話は少ないが、以前よりかは打ち解けた様子の2人を見て少し安心した。
「じゃあ、俺は行くから。セラもアインラス殿も、もう大人しく部屋に帰るんだぞ。」
「はい。」「…ああ。」
「またな。…あ、そうだセラ。誕生日おめでとう。」
「…ア、アックスッ!」
(シバの前で…い、言っちゃった!)
慌てて彼に「やめて」とジェスチャーを送る。
「ああ、まだ俺にしか伝えてなかったのか。」
アックスはいたずらっぽく笑うと、今度こそ俺達に背を向け颯爽と歩いて行った。
完全に彼が見えなくなってから恐る恐る隣を伺う。見上げた先には、表情を失ったシバが前を向いていた。
「シバ、離れてください。お風呂に入ってもう寝ましょう。」
「……。」
部屋に帰った俺達は、なんとなく気まずい雰囲気のままだった。俺は手の中のネックレスを一旦箱へ戻しに行くと、立ち尽くしているシバに「風呂でもどうか」と声を掛ける。
すると彼は俺を黙って見つめ、急に抱きしめてきたのだ。
(で、そのままだんまりか…。)
シバが無言でいる時は、必ず俺に何か伝えたいことがある。普段であれば少し待っていると自然と口を開くが、今日は様子が違い、ずっと黙ったままだ。
「シバ、もう夜も遅いですし…寝ましょう?」
「……。」
「あの、誕生日だと黙っていたのは謝りますから。でも、私にも計画がいろいろあって、」
「…君にこれ以上幻滅されたくない。」
(どういう意味だ…?)
「幻滅なんて最初からしていませんよ。」
「だが、君を泣かせた私が…今もトロント殿に嫉妬していると言ったら…狭量だと思うはずだ。」
(嫉妬…。誕生日をアックスだけに教えたからか。)
俺はシバの背中をポンポンと撫でる。
「心が狭いだなんて思いませんよ。それに理由があって黙っていたんです。」
「……。」
「その件は、ベッドの中で聞いてくれますか?」
「……。」
黙っていながらもコクリと頷いた彼にホッとする。腕の力が少し弱まり、俺は胸を軽く押すと「先にシャワーを浴びてきます。」と言って風呂場へ向かった。
(はぁ~、これから俺のキザな計画を説明しないといけないのか。)
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