第三の答え

谷川ベルノー

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第三の答え

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「俺達、結婚するに決まっているだろ?」
「……………………」
「………………ちっ! おい! 黙ってないで喋れよ!!」


 イライラのあまり顔面を憎悪の形へと醜く歪め始めた相手の様子を見て、内心で盛大に溜息を漏らした。


(………………あ~あ。優しい人かなって思ってたのに。とんだ見当違いだったなぁ………………)



 出会いは、なんてことはない。

 劇的なドラマ性なんて何一つ存在しない。
 たまたま偶然の出会い。

 弾む会話に優しい気配り。


 運命なんてご大層なものではないけど。
 合って、優しい人。

 ひょっとして、いい人かもしれないと思ったタイミングで言われた付き合いを了承して────────────────────けれど、それこそが相手の卑劣な罠。
 そしてわたしが後々、後悔した勘違い。



 話が合う──────────実際は、相手が好むであろう言葉で適当に話を合わせていただけ。

 優しい人──────────近寄りがたい人ではないと思われるように良い人のフリをしていただけ。




 本格的に付き合いだしてからというもの、身勝手で暴力的な本性を隠さず剥き出しにしてきたのだ。
 自分が言った言葉への返答は、どんなことであろうと肯定でなければ気が済まないという我儘ここに極めたりというか反吐が出るほど傲慢というか。

 とにかく自分勝手な奴だと言うことを知ってしまった今では、もう恋の熱は冷えに冷えて冷めきった。
 愛は氷みたいにすっかり凍りついてしまったのだ。



「いいか? お前は動物じゃないんだ。ちゃんと【はい】って言葉を使って答えればいいんだよ!!」


 まただ。
 普通だったら【はい】【いいえ】であるべきなのに。

 この男の提示する選択肢には、馬鹿の一つ覚えみたいに【はい】又は【はい】しか有り得なければいけないらしいのだ。


(………………こんな奴だなんて………………始めから知ってたら………………付き合うなんて有り得なかった。そう、例え天界と魔界がひっくり返ろうとも絶対に有り得なかったわよ………………)


 あれだ、恋人と家族という字のルビが所有物となっているタイプだ。
 自分だけのものだから、自分の思い通りになるべきであると考えている。
 いわゆる関わってはいけないタイプの人だ。


(もうあったまきた!!我慢なんてしないから! 思いきって言ってやる!!)

 わたしはわたしという人間だから、しっかりと言ってやるのだ。



「────────いいえ」
「なんだとぅっ!? ふざけんな!テメェ!!」


 あぁ、美味しい獲物を横取りされたゴブリンみたいな顔と態度で怒りだした。
 今にも殴ろうとしているところがすごいソックリ。
 物真似大会に出たら、きっと優勝間違いなしだわ。


(このまま、何もしなかったら。何時もみたいに殴られるわね)

 でも、残念。
 痛みに耐える日々は、今日でおしまい。

 だって、わたしの魔法で懲らしめてやるんだもん。

 そうよ! もう恋人でもなんでもないんだから。




 ──────────────思いっきり、ぶちのめしてあげる!!

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