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2話
翌日、フルダはパン屋での出勤と同時に目を丸くしていた。
「フルダちゃん~! 良い話、持ってきたのよ」
フルダはパン屋の主人であるナーナの言葉に頭を傾けた。ナーナはフルダよりも20歳年上の女性で面倒見が良く、いつもフルダのことを気にかけてくれていた。
フルダが孤児院の出身だと伝えた時に「ここで働かない?」と誘ってくれて、学も金もないフルダを救ってくれた大恩人でもある。
そんな彼女が楽しそうに言うものだから、フルダも嬉しくなってにこりと微笑んだ。するとナーナは頬を染めて「フルダちゃん、今日も可愛い!」と抱きしめてきた。フルダも抱きしめ返したあと問いかける。
「店長。お話って?」
ナーナはにやりと意味深な笑みを浮かべて口にする。
「お見合いしましょう!」
「お見合い、ですか?」
予想外な言葉に目を瞬かせながら言えば、ナーナは頷きながら告げる。
「お相手は有名な商家の三男で29歳。とっても優しくてハンサムだし、きっとフルダちゃんにぴったりよ」
「ええっ! そんなっ、いきなり!」
驚いた声が出てしまったが、ナーナはそんなフルダを気にすることなく続ける。
「ありがた迷惑だったらごめんなさいね。でも、あなたもそろそろ家庭を持ってもいい年齢でしょう? うちとしてはこのままずっと働き続けてもらえるなら嬉しいけれど、あなたの将来を考えればこういう選択肢もありだと思ったのよ」
たしかにナーナの言う通りだった。
30近くになった未婚の女性が世間でなんと言われるかフルダはよく分かっている。
同じくらいの年齢の友人たちはすでにみな結婚し、子供がいる子さえいる。けれどフルダは自分が誰かと一緒になることを想像することができず、ずるずるとこの年齢まで来てしまっていた。
パン屋の常連客でフルダに告白してくれた男性も稀にいたが、なんとなくしっくりこなかった為断るばかりだ。
ナーナはそんなフルダのことを気遣い、提案をしてくれたのだろう。
有名商家の三男であれば、金銭的に困ることがないし、ナーナの紹介ならば信頼がおける。
フルダはぐっと押し黙りながら思考を巡らせた。
そろそろ自分も誰かとともに生きる覚悟を決めたろうがいいのかもしれない。
それにナーナにも心配をかけ続けるのも忍びない。
フルダは顔を上げ、ナーナに微笑み返す。
「はい、分かりました。私、そのお見合いしてみたいです」
フルダは見合いの提案を受け入れることにした。
*
数日後。
フルダは近所でも有名な料理店で見合いをした。
相手はとても優しそうな男性で、エスコートに不慣れなフルダを上手く導いてくれた。とても頼り甲斐がある好印象な人。彼のおかげで非常に充実した時間を送ることができた。
食事を終えると既に日は暮れ、月が顔を覗かせていた。薄暗い帰り道、お見合い相手の男性はフルダをアパートの前まで送ってくれた。
お礼の言葉を告げれば相手の男性から「また会いたいです」と言葉を投げかけられる。
フルダは浮き足だったまま自宅アパートの扉前まで辿り着く。鍵を開ようとしたそのとき、突如隣の扉ががちゃりと開かれた。
「フルダ」
いきなり名前を呼びかけられて心臓がどくりと跳ね上がる。顔を見せたのは見慣れた顔──ヴィダルで、いつもながら治安の悪そうな出立でこちらに視線を寄越してきた。
わざわざ部屋から出てきたので何か用があったのかと彼を見つめていると。
「こっち来い」
「え、ちょっと、突然何!?」
腕を強く引かれ、されるがままに彼の部屋へと引き摺り込まれた。
「フルダちゃん~! 良い話、持ってきたのよ」
フルダはパン屋の主人であるナーナの言葉に頭を傾けた。ナーナはフルダよりも20歳年上の女性で面倒見が良く、いつもフルダのことを気にかけてくれていた。
フルダが孤児院の出身だと伝えた時に「ここで働かない?」と誘ってくれて、学も金もないフルダを救ってくれた大恩人でもある。
そんな彼女が楽しそうに言うものだから、フルダも嬉しくなってにこりと微笑んだ。するとナーナは頬を染めて「フルダちゃん、今日も可愛い!」と抱きしめてきた。フルダも抱きしめ返したあと問いかける。
「店長。お話って?」
ナーナはにやりと意味深な笑みを浮かべて口にする。
「お見合いしましょう!」
「お見合い、ですか?」
予想外な言葉に目を瞬かせながら言えば、ナーナは頷きながら告げる。
「お相手は有名な商家の三男で29歳。とっても優しくてハンサムだし、きっとフルダちゃんにぴったりよ」
「ええっ! そんなっ、いきなり!」
驚いた声が出てしまったが、ナーナはそんなフルダを気にすることなく続ける。
「ありがた迷惑だったらごめんなさいね。でも、あなたもそろそろ家庭を持ってもいい年齢でしょう? うちとしてはこのままずっと働き続けてもらえるなら嬉しいけれど、あなたの将来を考えればこういう選択肢もありだと思ったのよ」
たしかにナーナの言う通りだった。
30近くになった未婚の女性が世間でなんと言われるかフルダはよく分かっている。
同じくらいの年齢の友人たちはすでにみな結婚し、子供がいる子さえいる。けれどフルダは自分が誰かと一緒になることを想像することができず、ずるずるとこの年齢まで来てしまっていた。
パン屋の常連客でフルダに告白してくれた男性も稀にいたが、なんとなくしっくりこなかった為断るばかりだ。
ナーナはそんなフルダのことを気遣い、提案をしてくれたのだろう。
有名商家の三男であれば、金銭的に困ることがないし、ナーナの紹介ならば信頼がおける。
フルダはぐっと押し黙りながら思考を巡らせた。
そろそろ自分も誰かとともに生きる覚悟を決めたろうがいいのかもしれない。
それにナーナにも心配をかけ続けるのも忍びない。
フルダは顔を上げ、ナーナに微笑み返す。
「はい、分かりました。私、そのお見合いしてみたいです」
フルダは見合いの提案を受け入れることにした。
*
数日後。
フルダは近所でも有名な料理店で見合いをした。
相手はとても優しそうな男性で、エスコートに不慣れなフルダを上手く導いてくれた。とても頼り甲斐がある好印象な人。彼のおかげで非常に充実した時間を送ることができた。
食事を終えると既に日は暮れ、月が顔を覗かせていた。薄暗い帰り道、お見合い相手の男性はフルダをアパートの前まで送ってくれた。
お礼の言葉を告げれば相手の男性から「また会いたいです」と言葉を投げかけられる。
フルダは浮き足だったまま自宅アパートの扉前まで辿り着く。鍵を開ようとしたそのとき、突如隣の扉ががちゃりと開かれた。
「フルダ」
いきなり名前を呼びかけられて心臓がどくりと跳ね上がる。顔を見せたのは見慣れた顔──ヴィダルで、いつもながら治安の悪そうな出立でこちらに視線を寄越してきた。
わざわざ部屋から出てきたので何か用があったのかと彼を見つめていると。
「こっち来い」
「え、ちょっと、突然何!?」
腕を強く引かれ、されるがままに彼の部屋へと引き摺り込まれた。
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