断罪のアベル

都沢むくどり

文字の大きさ
7 / 190
新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

高慢なレストラン

しおりを挟む
 さて。

 俺とカレンは今、食事をするためにレストランを散策している。

 ただ問題が…………。

「高い」

 それは地上から塔を見上げるように。また、平民が王侯貴族を羨望と嫉妬の眼差しで見上げるように。



…………………高かった………………………。



「大丈夫……?」

「……………ハッ!?」

 いかん。意識が飛んでた。カレンが心配そうに横から顔を覗く。

「やっぱり、私と食事行くの嫌だったのね…………。無理して食事に付いてきてくれたばかりに…………」

 ションボリしている。この子、早とちりで勘違い多くないか?

「いや俺がボーッとしてたのは、その、ここの地区のレストラン。値段がな……」

 そう、高いのだ。現在豪奢な作りのレストランの前に設置されてるメニューの看板を眺めているのだが、一番安い【ミネストローネ】が五千ウォルス…………。

 俺の寒い懐には六千ウォルスしかない。明日から働くが、そう毎日良質な案件に恵まれることは滅多にないだろう。しばらくは節約しなくては。

「私の家も収入が裕福とは言えないからあまり行かないわよ。でもミネストローネぐらいなら奢れるし、一緒に食べない?」

「いやいや! 異義あり! 男の恥だ!」

 レディに奢らせたらさすがにまずい。何がまずいかって? 俺のプライドだよ!!!
 
それにカレンも歩き疲れただろう。もうここらの通りは今いるとこ以外全部見たし。
ええい、ままよッッ!


「 ……入ろう」



 店の中は人が通る道全てにレッドカーペット。天井にはいくつもの綺麗なシャンデリア。

 そして目の前には黒服の店員が待機していた。

「いらっしゃいませ。お客さ…ま………」

 店員が何故か俺を見た瞬間。固まる。

 そしてすぐに品定めするような視線を浴びせてきて、

「お帰りくださいませ」

「は?」

 何を言ったんだ?うまく聞き取れなかった。空耳かな?

「貴方のような身分の卑しい者を当店でお客様として扱う事は不可能にございます。お隣にいらっしゃるノスタルジア家のご令嬢が食事を終えるまで外にいては?」

 空耳じゃなかった……。ベネット商会の宿の人は洗練した対応だったのに、こいつ何様だ?

 貴族は自分達の身なりに沢山の資産を費やし、気をつかう。理解できないが、それが彼らの身分や特権を誇示し、影響力を周囲の政敵に見せつける手段のひとつらしい。
 
ここは、貴族の居住ブロック。店内を見渡すと俺以外の客は全て高級な服に身を包んでいる。

 ある者は金糸をふんだんに使った貴族服を羽織っていて、またある貴婦人は自らをするような角度で座り、ふさふささせたフラミンゴの羽で作ったピンクの扇子を片手に仰いでいた。ちなみに顔は失礼ながらあまりよろしくない。隣のカレンもあいつらと比べると劣るがやはり格調高い服だ。

 俺は庶民服にボロいローブを着けただけだからな。確かに普通ならこんな店に平民が入るとかおかしい。座っている客もこちらに視線を送っている。

 でもまぁ、門前払いなら仕方ないな。彼女には悪いが俺は外に出よう。こんな客を不快にさせる店に金を払いたくないし。

 来た道を元に戻って出る。

「ま、待って! あなたが出るなら私もそうする!」

「お客様、あのような下銭、放っておけばよいのです。平民風情に気遣いは無用です」

「うるさいッッッッ! もう二度と来ないわ!」

 後ろでベルと木製の扉を蹴りとばすような音が聞こえた。

 カレン……ドアを蹴っちゃいけないよ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...