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しおりを挟む「ちゃんと洗わないと駄目っ!」
夜になって、小太郎とルネアの2人は、メイド達が浸かった後の残り湯に一緒に入る。
メイドというのは奉公人よりも格が高く、一般人が成れるものではない。
普通は貴族の娘でなければメイドには成れない。
ルネアの両親はすでに亡くなっている。
1人で餓死しそうになっていた所をオリヴィア女王に助けられ、奉公人(下女)という形で雑事を担当し、お城に住むことを許された。
だからこそ彼女は、同じ境遇の小太郎を見捨てなかったのだ。
「私が洗ってあげるから、じっとして!」
石鹸で泡を立て、手につけた泡でオカッパ頭を洗い、背中を洗ってあげる。
前は自分で洗わせて泡だらけになった小太郎を、お湯で流してあげる。
先に彼をお湯に入らせ、ルネアも自分の身体を洗い終えて、一緒にお湯に浸かる。
「はぁ~気持ちいいねコタロウ」
「うん」
今日あった出来事を振り返る彼女は、小太郎が木の棒でゴブリンを倒した事を思い出して、彼に聞いてみる。
「コタロウは剣の稽古でもしてなの?」
「うん! 3歳のときから、してたよ」
「え……? そんな小さい時から? だから強いんだ」
さらに詳しく小太郎の事情を聞きだし、賢くて勘の良いルネアは彼の強さに納得する。
なんとなくだが彼女は、彼が天才だという事に気づいた。
普通の天才ではないという事実に……
◆◆◆
女王様や王女様がいる宮殿から離れた場所にある小屋で、小太郎とルネアは一緒に寝泊まりする事になった。
常識的に男女は別々に寝るものだが、ルネアは女王様に姉弟として、この城に仕えたいと申し出た為に、このような結果になった。
1つのベッドを2人で使う。
彼女は明日、朝早いので寝ようとするが、小太郎は中々寝付けずにいる。
「どうしたの? 何か不安?」
「う~ん……素振りしてないから、ねむれない」
「素振り?」
彼が言っている素振りとは、剣を振ること。
5歳という年はもいかぬ年齢でありながら、日課として夜には刀を握り素振りしてきた。
いつもの習慣が抜けず、身体が落ち着かないのだ。
「うん、刀がないと、素振りできない……」
刀なんて聞いたことないルネアだが、子どもがチャンバラに使う剣が欲しいのだろうと解釈した。
「分かったわ! お姉ちゃんに任せて! 明日、私が木剣を持ってくるから、今日は我慢して」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
優しい姉はニコリっと微笑み、2人は眠りについた。
◆◆◆
翌朝、ルネアは小太郎と共に食堂へと向かい食事をする。
自分で料理を取りに行き、お盆に料理が乗った皿を取る。
野菜の入った具沢山のスープ、柔らかく甘いパンが2つ、それにドレッシングがかかったサラダと朝は軽食だが、市民が食べているものよりは豪華だ。
普通の市民が普段食べている朝食は、具の無いスープと、硬くて味気ないパン1つだけ。
「ふわぁ~おいしい!」
「そうでしょう! お城で雇って貰えば、いい食事にありつけるんだから、女王様に感謝しないとね」
今まで1度もパンを口にした事がない小太郎は、あまりの美味しさに、喜びはしゃぐ。
お菓子を食べたような感覚で、すぐに平らげてしまった。
ルネアは食事を済ませて王女様の元に小太郎を連れて行く。
「アイリス様に不敬がないようにね」
「うん、わかった!」
「じゃあ、私は仕事があるから、また後でね」
「お姉ちゃんがんばってぇ~」
「ありがとうっ!」
去っていくルネアに手を振って見送る。
今日は従者としてアイリスに仕える初日だが小太郎は上手くできるだろうか。
王女アイリスがいる部屋の前に残された彼は、ノックする礼儀も知らず、そのままドアを開けて勢いよく部屋の中に入っていく。
「アイリスあそぼ~!」
「きゃあっ!? ……ノックもせず、レディーの部屋にいきなり入ってくるなんて何を考えてますの!?」
起きてはいたがベッドで、くつろいでいた彼女は飛び起きて、小太郎に叱責した。
「あそびにきた!」
「遊びって……従者は遊びではないですわ! はぁ~礼儀もなってないし、頭は悪いしで疲れますわ……」
何も考えていない5歳の小太郎には無理な話。
彼には従者が何なのか分からい。
アイリスは考える。
こんな頭の悪い子どもといたら、自分が苦労するだけ、それなら1人で遊ばせておけばいいと……
「コタロウ命令よ……どっかで遊んで来なさい」
「うん、わかった」
大事な初日にやらかした小太郎は、全く悪びれる様子がない。
お城を抜け出して、気にせずにお外にお出かけする。
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