59 / 76
第五章:未来への兆し
未来への兆し 10
しおりを挟む
「あはは。そうだね、その辺りのことも、これから少しずつ調べて勉強してみるよ。おれだって、ただ夢を語ってるだけじゃ前には進めないし」
根拠もなく告げたアドバイスの責任から逃れようと、ふざけて目線を逸らす俺を笑いながら守草は言った。
「真理だな。でも、守草が頑張って夢叶えちまったら、こっちとしては更にプレッシャーになるんだよなぁ」
「え? どうして?」
「そこまで周りが結果だして、もし俺だけがいつまでも燻ぶり続けてたら、滅茶苦茶情けねぇじゃんか。いずれ三十歳とか四十歳になって、九条先輩も妃夏も守草も、小説家や編集者になっててさ、泉も詩集を出して結婚して子供育ててお母さんやってさ、そんで俺だけまだ小説家の夢追いかけてます! ……って、想像すると胸苦しくなるぞ?」
「うーん……」
苦笑いを浮かべて告げた、俺の将来へ抱く一抹の不安に、守草は口を僅かに尖らせるようにしながら何事かを思案する表情をみせる。
「それは、気にしすぎじゃない? と言うか、おれならそんなこと気にしないよ。仮におれたちが四十歳になったとして、まだ才樹が夢を叶えずに追ってる最中だって知ったら、おれは何だか嬉しくなるかな」
「どういうことだよ、それ」
いい年をしたおっさんが、夢追い虫になっている姿は嬉しいものなのか。
むしろ情けなく映りはしないだろうかと思う俺に、守草は当然でしょと言いたげに肩を竦め、更に話を続けてきた。
「だって、夢を追いかけてきた仲間が挫折した人生を送ってる姿を見せられるより、今もまだ諦めてないぞって姿を見せられた方が、今のこの瞬間の続きをちゃんと生きてくれてる感じがして安心するみたいな、何かうまく表現できないけど、そんな気分になるかな。まぁ、少なくとも情けないとか可哀想とか、そういうマイナスなイメージなんて持たないよ。創作に興味がなかったりおれたちのことを知らない赤の他人なら、好き勝手に白い目で見てくるのかもしれないけど、星咲さんたちだっておれと同じ意見だと思うよ」
「……そうか? そういうもんなのかな」
いまいち釈然としない気分のまま、俺は一応納得することにして引き下がる態度を示す。
「うん、そういうもの。逆に考えてさ、もしおれや星咲さんがいくつになっても夢を追いかけてたら、才樹は馬鹿にしたりする? 応援したいって気持ちにならない?」
「いや、それは普通に応援するさ」
「でしょ? おれたちだって、それと同じってこと」
「ああ……なるほど。それ、一番わかりやすいな。しっくりきたわ」
例えどんなに時間をかけてでも、自分のやりたいことに人生を賭けている仲間を無下にする奴はそういない。
それは俺に限らず、みんなが共通して持つ当たり前の意識なのだと、それを改めて教えられた。
「そんな風に思ってくれる仲間が担当編集についてくれるなら、安心して書き続けられそうだな」
「でしょ? おれが先に夢を叶えちゃったら、そのときは何年でも気長に待ってるから」
「ああ。なるべく待たせないように頑張るわ――って、俺が遅れる前提みたいな話になっちまったな」
根拠もなく告げたアドバイスの責任から逃れようと、ふざけて目線を逸らす俺を笑いながら守草は言った。
「真理だな。でも、守草が頑張って夢叶えちまったら、こっちとしては更にプレッシャーになるんだよなぁ」
「え? どうして?」
「そこまで周りが結果だして、もし俺だけがいつまでも燻ぶり続けてたら、滅茶苦茶情けねぇじゃんか。いずれ三十歳とか四十歳になって、九条先輩も妃夏も守草も、小説家や編集者になっててさ、泉も詩集を出して結婚して子供育ててお母さんやってさ、そんで俺だけまだ小説家の夢追いかけてます! ……って、想像すると胸苦しくなるぞ?」
「うーん……」
苦笑いを浮かべて告げた、俺の将来へ抱く一抹の不安に、守草は口を僅かに尖らせるようにしながら何事かを思案する表情をみせる。
「それは、気にしすぎじゃない? と言うか、おれならそんなこと気にしないよ。仮におれたちが四十歳になったとして、まだ才樹が夢を叶えずに追ってる最中だって知ったら、おれは何だか嬉しくなるかな」
「どういうことだよ、それ」
いい年をしたおっさんが、夢追い虫になっている姿は嬉しいものなのか。
むしろ情けなく映りはしないだろうかと思う俺に、守草は当然でしょと言いたげに肩を竦め、更に話を続けてきた。
「だって、夢を追いかけてきた仲間が挫折した人生を送ってる姿を見せられるより、今もまだ諦めてないぞって姿を見せられた方が、今のこの瞬間の続きをちゃんと生きてくれてる感じがして安心するみたいな、何かうまく表現できないけど、そんな気分になるかな。まぁ、少なくとも情けないとか可哀想とか、そういうマイナスなイメージなんて持たないよ。創作に興味がなかったりおれたちのことを知らない赤の他人なら、好き勝手に白い目で見てくるのかもしれないけど、星咲さんたちだっておれと同じ意見だと思うよ」
「……そうか? そういうもんなのかな」
いまいち釈然としない気分のまま、俺は一応納得することにして引き下がる態度を示す。
「うん、そういうもの。逆に考えてさ、もしおれや星咲さんがいくつになっても夢を追いかけてたら、才樹は馬鹿にしたりする? 応援したいって気持ちにならない?」
「いや、それは普通に応援するさ」
「でしょ? おれたちだって、それと同じってこと」
「ああ……なるほど。それ、一番わかりやすいな。しっくりきたわ」
例えどんなに時間をかけてでも、自分のやりたいことに人生を賭けている仲間を無下にする奴はそういない。
それは俺に限らず、みんなが共通して持つ当たり前の意識なのだと、それを改めて教えられた。
「そんな風に思ってくれる仲間が担当編集についてくれるなら、安心して書き続けられそうだな」
「でしょ? おれが先に夢を叶えちゃったら、そのときは何年でも気長に待ってるから」
「ああ。なるべく待たせないように頑張るわ――って、俺が遅れる前提みたいな話になっちまったな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
負けヒロインに花束を!
遊馬友仁
キャラ文芸
クラス内で空気的存在を自負する立花宗重(たちばなむねしげ)は、行きつけの喫茶店で、クラス委員の上坂部葉月(かみさかべはづき)が、同じくクラス委員ので彼女の幼なじみでもある久々知大成(くくちたいせい)にフラれている場面を目撃する。
葉月の打ち明け話を聞いた宗重は、後日、彼女と大成、その交際相手である名和立夏(めいわりっか)とのカラオケに参加することになってしまう。
その場で、立夏の思惑を知ってしまった宗重は、葉月に彼女の想いを諦めるな、と助言して、大成との仲を取りもとうと行動しはじめるが・・・。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる