隣人よ、大志を抱け!

ざっく

文字の大きさ
4 / 12
婚約破棄

銀色の彼

しおりを挟む
見惚れるフィリアの瞳を見返して、その銀色の瞳は気に入らなそうに眇められた。
「人間のくせに、何故草の上に座っている」
その言い方に、フィリアはムッとして言い返した。
「人間のくせにってなに。草の上に座るのは獣人の特権だとでもいうの?」

昨日に引き続き、どうして失礼な人が多いのだろうと言い返したところで、彼が戸惑いの表情を浮かべていた。
「そんなことは言っていない馬鹿にしたつもりもない。ドレスが汚れると言いたかったのだが」
困ったように耳が垂れる様子を見て、フィリアは首を傾げながらも、不快に思った理由を言葉にした。
「くせにっていうのは、よくない言い方だわ。人間が草の上に座るなんておこがましいってことでしょう?くせにじゃなくて……」
「……なのに?」
フィリアが話している最中に、他の言い方を思い付いたらしい。
自信なさそうに言った彼に、フィリアは笑った。
「そう。それなら、私は笑って答えるわ。……だって、ふわふわしてとっても気持ちがいいのだもの」
フィリアの笑顔に、彼は少し目を瞠った後に優しく微笑んだ。
「そうか。―――隣に座っても?」
そう聞かれて、フィリアは一瞬ためらった。
そのためらった間を悪くとらえたのだろう。彼が顔をこわばらせて踵を返そうとした。
「すまない。邪魔をした―――」
「ごめんなさい。違うのよ。嫌なわけではないの」
さっきは失礼な態度に怒っておきながら、今度はこちらが失礼なことをするだなんて。
フィリアは反省しながら横に置いていたバスケットを持ち上げた。
「私、とっても大切なものを持っているのよ」
彼は、去ろうとしたまま、フィリアを見て首を傾げる。
「ドレスが汚れても構わないけれど、これを分けることに躊躇してしまったのよ」
ため息を吐くフィリアに、彼は遠慮がちに声をかける。
「大切なものを分けてもらおうなどと考えていないよ。少し話ができるかと思っただけだ」
首を振る彼を見ながら、フィリアはこくんと頷いた。
「いいわ。どうぞ?―――そして、特別よ?少しだけ分けてあげるわ」
フィリアは、隣を示してから、バスケットの蓋を取った。

中身は、フィリアがさっき作ってきたサンドイッチだ。
こそこそと、厨房に忍び込んで、自分が好きなものをてんこ盛りにした、スペシャルサンドなのだ。
怒られることは想定済みの、それを分かっていながらに味わなければならない、大変貴重なものなのである。
「私が作ったのよ。でも、味付けは料理長だから、おいしいわ」
作ったなどと言っても、フィリアがしたことは、そこら辺にある食材を切ってサンドしただけだ。
なのに、銀髪の彼はとても驚いた。
「君が?作ったの?」
興味深そうにバスケットの中を覗き込んで、フィリアの隣に座った。
「そうよ!食べていいわよ。感想を教えてね。美味しい以外言ってはダメだけど」
「ははっ!感想の意味がないじゃないか」
おもしろそうに笑って、大きな口を開けてぱくりと噛みついた。
綺麗な顔のわりに、とっても大きな口で豪快に食べるので、フィリアは目を丸くして見てしまった。
「うん、うまい」
もぐもぐとしっかりと味わってから発された言葉に、フィリアは嬉しくてにっこりと笑った。
口に入れた途端「おいしい」と言われても、それはパンの味だから。
このスペシャルサンドは、「この組み合わせ!」というフィリア自作のサンドイッチなので、しっかりと噛まなければ美味しさが分からない!
それを言わなくてもしっかりと味わってくれたことが、フィリアは嬉しかった。
「でしょう?じゃあ、最後もう一つだけあげるわ」
フィリアが胸を張ってバスケットをしめすと、困ったような顔が返ってきた。
「それは嬉しいけれど、四つのうち、二つもオレが食べたら、君の分がなくなる」
「私は、食いしん坊なのよ」
あげると言っておきながら、それと反対のことを言うフィリアに、銀髪を揺らして彼はフィリアの言葉を待つ。
「本当は、二つでお腹がいっぱいになるの。だけど、食べられるものなら食べたいと、食べられないほどのものを準備してしまうの」
本当は良くないことだ。
食べ物を残すことはしてはいけないのに、「今とってもお腹がすいているから」と、食べられるような気分になるのだ。
ほうっ…と、大人のようなため息を吐くフィリアを目をぱちぱちさせて見ていた銀髪の彼は―――
「あっ…はははははっ!」
空に向かって大きな口を開けて笑い始めた。
「なっ!なんで笑うのよ!多く準備していた理由を教えてあげたのよ!?」
しかも、女の子が「食いしん坊」だということをカミングアウトまでしたのだ。
笑う場所では断じてない。
「ああ、そうだね。とっても嬉しいよ。まるで、最初からオレの分みたいじゃないか?」
だけど、彼がそう言って、本当に嬉しそうに食べるから、フィリアも笑ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。

佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。 そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。 しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。 不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。 「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」 リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。 幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。 平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

京月
恋愛
 それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...