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憧れの一人暮らしと不法侵入な狐
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「それでは私たちはこれで」
「ありがとうございましたー」
そう言って自宅を出ていく引っ越し業者の方に頭を下げながら見送る。忘れずにドアの鍵を閉めた後私は「よっしゃー!」と声をあげながらぐぐっと伸びをした。
「やっと、やーーっと一人暮らしだー!」
高校を無事卒業して4月からは家から少し離れた所にある大学に行くことになった為、今日から大学の近くにあるこのアパートで一人暮らしをすることになったのだ。ずっと一人暮らしにあこがれていたので今日という日を今か今かと待っていた。
ひとしきり玄関で騒いだ後、まだ運び込まれたばかりの段ボールしか置かれていない洋室に移動して段ボールの中からローテーブルや座椅子など取りあえず今すぐに必要なものを引っ張り出して組み立てる。大分時間はかかったが取りあえずこれから夕飯を食べるのに困らない程度の準備が出来たのを確認し、元々置いてあるテレビや冷蔵庫が使えることも確認できた私は座椅子に腰掛けて小さくため息をつく。
「ふう、取りあえずこれくらいかな。他の段ボールの荷解きは明日でいいや」
そうしてふっと気を抜くと一気に引っ越し作業の疲れが体を襲う。さっきまでは引っ越し作業に夢中で疲れに気付かなかったのだろうかと考えながら隣に置いてあるリュックの中をガサガサと漁る。と、指先に探していたものが当たる感触があったのでそれを引っ張り出して机の上に置く。
机の上に置いた飴の袋から一つ取り出して包みを開いて口に放り込むと、途端に口中にほんのりと甘いいちごの味が広がる。
「ん~甘さが染み渡る…」
昔からよく疲れた時に飴玉をなめるのが好きだった私は大体リュックの中には様々な味の飴が入っているのだ。今日もその例に漏れず疲れを感じた時には体が欲していた。
そんなこんなで口に入れた分を食べ終わった私は、別の段ボールからタオルや事前に買っておいたシャンプーなどを取り出して腕に抱えて立ち上がった。たしか今日からお風呂に入れるようにしてくれたと大家さんが言っていたので、引っ越し作業による汗や埃を落とすためにシャワーを浴びることにしようと浴室へ向かった。
この時の私は、どこからかじーっと見つめられている視線に全く気付かなかった。
「ふう、さっぱりした」
すっかり髪も乾かし終わってさっぱりした私は小さく鼻歌を歌いながら冷蔵庫へ向かい冷蔵庫の中から525mlペットボトルのお茶を取り出し、それを手に自室も兼ねることになった洋室へと向かう。
しかし洋室に一歩足を踏み入れた時、私は立ち止まって放心してしまった。それこそ手に持っていたペットボトルを落としてしまうくらいには。
目の前には先ほど自分が置いたローテーブルや座椅子、そしてまだ荷解きのされていない段ボールが置いてある。それはシャワーを浴びに行く前と何ら変わりない光景。しかし驚いたのはそこにいたものである。
顔まわりやお腹としっぽの先の真っ白な毛や耳先と手元の黒っぽい毛以外は綺麗な金色のような色のふさふさの毛に包まれ、つんと尖がったはなと口、猫の様にぴんと立った耳、そしてふさふさのしっぽ。そんな何かが座椅子の上に礼儀正しく座ってテーブルの上の飴玉の袋を見つめていた。若干よだれたらしながら。いや全然礼儀正しくないやん。
きっと誰しも一度は見たことあるし名前も聞いたことがあるであろう、その動物。
そう。
狐 が い た 。
いや、え?ここって東京だよ?私狐なんて飼ってませんよ?飼った事ありませんよ?と一人プチパニックに陥りながら口をパクパクしながら狐を見つめる。と、狐は入口で立ちすくんでいた私に気付いたのかーーペットボトル落としたときは無反応だったくせにーーこちらに綺麗な黒い目を向ける。お互いしばらく無言で見合いっこをした後、先に沈黙を破ったのは私だった。
「…こういう場合ってどこに連絡すればいいの?まず大家さん?それとも警察?」
『ちょ、待っ』
「狐が喋ったぁぁぁぁぁ!?」
私の呟きを聞いて焦ったのか口をパクパクする狐。パクパクすると同時に幼い少女のような声が聞こえたことから狐が喋ったと分かり驚きながら一歩後ずさる。するとまた先ほどと同じ声が聞こえる。
『大丈夫!変な奴じゃないの!』
「いや急に現れたってだけで十分変な奴なんだけど…奴?人?狐?ん??」
『瑠璃は神様だよ!』
「目の前に神様を名乗る狐がいるんですけど…って大家さんに伝えてこよう」
『待ってー!』
思考落ち着かせるのに10分くらいかかった。
~・~・~・~
「で?なんで不法侵入して飴の袋見つめてよだれたらしてたの?」
『美味しそうなんだもん!』
「うん、だと思った。で、なんで不法侵入してたの?」
『不法じゃないもん!』
「神様がどうのこうのっていうのは?やっぱり自称?」
『ちがーう!』
お互い向かい合って座ったーー相変わらず狐は座椅子に座っている。フローリング冷たいーー私たちは、先ほどからこんな会話を繰り広げていた。狐の言い分はこうだ。
神様である狐は街をうろうろとしていた。その時、他の人とオーラの違う私が歩いているのを見つけてついて歩いていたところ今日ここに引っ越すことを知ったので、引っ越し荷物の運び込みに紛れて入ってきて段ボールの陰にいた。そしたらいい香りがして来てしかも私がいなくなったので出て来てみるとおいしそうな飴玉が沢山あった。だけど勝手に食べたら怒られるから座って待ってた。
…ということだ。いろいろ突っ込みたいがまず一つ。
「神様のくせにうろうろしてるなんて暇なの?」
『うん』
「そうなの?でさ」
『うん』
「飴食べたら怒られるーって前に不法侵入しちゃあかんでしょ…」
『でもね、お姉さんは他の人となんか違う感じしたから平気かなって!』
「それさっきも言ってたね。どんな感じなの?」
『よく分かんないけど違うの。瑠璃には見えるんだよ』
「ほう。とりあえずその飴あげるから元いた場所に帰りなよ」
そういうと狐は黙って俯いてしまったので何事かと首をかしげていると、先ほどまでの喋り方とは違い呟くようにこう言った。
『瑠璃がいた神社もうすぐなくなっちゃうの。だからね、いる場所ないの』
「もしかしてそれで住む場所探してたってこと?」
『うん』
それを聞いた私は大きなため息をつきながらまだ俯いている狐に向かって話しかけた。
「いいよ、じゃあしばらくうちに居たら?」
『え?』
「別にここペット不可物件じゃないし。狐がペットっていうのか分からないからあんまり公にはしないけど」
『いいの!?』
「というか居場所がないっていう話を聞いた後で『そうですか。でも出てってくださいね』なんて言えるわけなかろうに。それにこんな毛並みのいい狐なんて妙な人につかまったら危ないよ」
そう言うと突然私の方に向かってぴょんと飛んできたので、びっくりして抱きかかえると本体は小さいのか想像以上に毛が長くふわふわとしていたためまた驚く。すると狐は腕の中で顔を上げ私を見ながら口を開く。
『ありがとう…ありがとう!』
「いえいえ」
『お姉さんは何ていう名前なの?』
「梨衣だよ。あなたは瑠璃だっけ」
『うん。よろしくね、りー!』
「うーん、まありーでもいっか…」
腕の中に収まっている毛玉のようなふさふさを見ながら、想像していたような一人暮らしは出来なさそうだなと苦笑いを浮かべた。
「ありがとうございましたー」
そう言って自宅を出ていく引っ越し業者の方に頭を下げながら見送る。忘れずにドアの鍵を閉めた後私は「よっしゃー!」と声をあげながらぐぐっと伸びをした。
「やっと、やーーっと一人暮らしだー!」
高校を無事卒業して4月からは家から少し離れた所にある大学に行くことになった為、今日から大学の近くにあるこのアパートで一人暮らしをすることになったのだ。ずっと一人暮らしにあこがれていたので今日という日を今か今かと待っていた。
ひとしきり玄関で騒いだ後、まだ運び込まれたばかりの段ボールしか置かれていない洋室に移動して段ボールの中からローテーブルや座椅子など取りあえず今すぐに必要なものを引っ張り出して組み立てる。大分時間はかかったが取りあえずこれから夕飯を食べるのに困らない程度の準備が出来たのを確認し、元々置いてあるテレビや冷蔵庫が使えることも確認できた私は座椅子に腰掛けて小さくため息をつく。
「ふう、取りあえずこれくらいかな。他の段ボールの荷解きは明日でいいや」
そうしてふっと気を抜くと一気に引っ越し作業の疲れが体を襲う。さっきまでは引っ越し作業に夢中で疲れに気付かなかったのだろうかと考えながら隣に置いてあるリュックの中をガサガサと漁る。と、指先に探していたものが当たる感触があったのでそれを引っ張り出して机の上に置く。
机の上に置いた飴の袋から一つ取り出して包みを開いて口に放り込むと、途端に口中にほんのりと甘いいちごの味が広がる。
「ん~甘さが染み渡る…」
昔からよく疲れた時に飴玉をなめるのが好きだった私は大体リュックの中には様々な味の飴が入っているのだ。今日もその例に漏れず疲れを感じた時には体が欲していた。
そんなこんなで口に入れた分を食べ終わった私は、別の段ボールからタオルや事前に買っておいたシャンプーなどを取り出して腕に抱えて立ち上がった。たしか今日からお風呂に入れるようにしてくれたと大家さんが言っていたので、引っ越し作業による汗や埃を落とすためにシャワーを浴びることにしようと浴室へ向かった。
この時の私は、どこからかじーっと見つめられている視線に全く気付かなかった。
「ふう、さっぱりした」
すっかり髪も乾かし終わってさっぱりした私は小さく鼻歌を歌いながら冷蔵庫へ向かい冷蔵庫の中から525mlペットボトルのお茶を取り出し、それを手に自室も兼ねることになった洋室へと向かう。
しかし洋室に一歩足を踏み入れた時、私は立ち止まって放心してしまった。それこそ手に持っていたペットボトルを落としてしまうくらいには。
目の前には先ほど自分が置いたローテーブルや座椅子、そしてまだ荷解きのされていない段ボールが置いてある。それはシャワーを浴びに行く前と何ら変わりない光景。しかし驚いたのはそこにいたものである。
顔まわりやお腹としっぽの先の真っ白な毛や耳先と手元の黒っぽい毛以外は綺麗な金色のような色のふさふさの毛に包まれ、つんと尖がったはなと口、猫の様にぴんと立った耳、そしてふさふさのしっぽ。そんな何かが座椅子の上に礼儀正しく座ってテーブルの上の飴玉の袋を見つめていた。若干よだれたらしながら。いや全然礼儀正しくないやん。
きっと誰しも一度は見たことあるし名前も聞いたことがあるであろう、その動物。
そう。
狐 が い た 。
いや、え?ここって東京だよ?私狐なんて飼ってませんよ?飼った事ありませんよ?と一人プチパニックに陥りながら口をパクパクしながら狐を見つめる。と、狐は入口で立ちすくんでいた私に気付いたのかーーペットボトル落としたときは無反応だったくせにーーこちらに綺麗な黒い目を向ける。お互いしばらく無言で見合いっこをした後、先に沈黙を破ったのは私だった。
「…こういう場合ってどこに連絡すればいいの?まず大家さん?それとも警察?」
『ちょ、待っ』
「狐が喋ったぁぁぁぁぁ!?」
私の呟きを聞いて焦ったのか口をパクパクする狐。パクパクすると同時に幼い少女のような声が聞こえたことから狐が喋ったと分かり驚きながら一歩後ずさる。するとまた先ほどと同じ声が聞こえる。
『大丈夫!変な奴じゃないの!』
「いや急に現れたってだけで十分変な奴なんだけど…奴?人?狐?ん??」
『瑠璃は神様だよ!』
「目の前に神様を名乗る狐がいるんですけど…って大家さんに伝えてこよう」
『待ってー!』
思考落ち着かせるのに10分くらいかかった。
~・~・~・~
「で?なんで不法侵入して飴の袋見つめてよだれたらしてたの?」
『美味しそうなんだもん!』
「うん、だと思った。で、なんで不法侵入してたの?」
『不法じゃないもん!』
「神様がどうのこうのっていうのは?やっぱり自称?」
『ちがーう!』
お互い向かい合って座ったーー相変わらず狐は座椅子に座っている。フローリング冷たいーー私たちは、先ほどからこんな会話を繰り広げていた。狐の言い分はこうだ。
神様である狐は街をうろうろとしていた。その時、他の人とオーラの違う私が歩いているのを見つけてついて歩いていたところ今日ここに引っ越すことを知ったので、引っ越し荷物の運び込みに紛れて入ってきて段ボールの陰にいた。そしたらいい香りがして来てしかも私がいなくなったので出て来てみるとおいしそうな飴玉が沢山あった。だけど勝手に食べたら怒られるから座って待ってた。
…ということだ。いろいろ突っ込みたいがまず一つ。
「神様のくせにうろうろしてるなんて暇なの?」
『うん』
「そうなの?でさ」
『うん』
「飴食べたら怒られるーって前に不法侵入しちゃあかんでしょ…」
『でもね、お姉さんは他の人となんか違う感じしたから平気かなって!』
「それさっきも言ってたね。どんな感じなの?」
『よく分かんないけど違うの。瑠璃には見えるんだよ』
「ほう。とりあえずその飴あげるから元いた場所に帰りなよ」
そういうと狐は黙って俯いてしまったので何事かと首をかしげていると、先ほどまでの喋り方とは違い呟くようにこう言った。
『瑠璃がいた神社もうすぐなくなっちゃうの。だからね、いる場所ないの』
「もしかしてそれで住む場所探してたってこと?」
『うん』
それを聞いた私は大きなため息をつきながらまだ俯いている狐に向かって話しかけた。
「いいよ、じゃあしばらくうちに居たら?」
『え?』
「別にここペット不可物件じゃないし。狐がペットっていうのか分からないからあんまり公にはしないけど」
『いいの!?』
「というか居場所がないっていう話を聞いた後で『そうですか。でも出てってくださいね』なんて言えるわけなかろうに。それにこんな毛並みのいい狐なんて妙な人につかまったら危ないよ」
そう言うと突然私の方に向かってぴょんと飛んできたので、びっくりして抱きかかえると本体は小さいのか想像以上に毛が長くふわふわとしていたためまた驚く。すると狐は腕の中で顔を上げ私を見ながら口を開く。
『ありがとう…ありがとう!』
「いえいえ」
『お姉さんは何ていう名前なの?』
「梨衣だよ。あなたは瑠璃だっけ」
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