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13.因果応報
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13.因果応報
「あなた…今更急に不安になって来ましたわ…わたくし陛下にお会いするのは初めてですもの」
妻が皇宮内を歩きながら、不安に揺れた瞳で聞いてきた。
自分と妻に突如皇宮から呼び出しがかかった。
理由を使者に問うても「ここでは話せません」とがんとして教えてはもらえなかった。
宰相府という雅国でも貴族の最高位である場所でも口に出来ぬ内容とは一体何なのか。
夫妻は期待と不安が綯い交ぜになっていた。
皇宮へ向かう道中での事…。
急ぎ準備して馬車に乗り込み、御者に急ぐ様伝える。
「瑞麗の身に何かあったのでしょうか……」
妻が恐る恐る口にする。
「わからん。しかし、怪我をしたり病気なら口を閉ざす意味もないだろう。その線は薄い。ましてや親を皇宮にお呼びとは…もしや」
「まさか…!」
妻が想像に歓喜する。
自分ももしやの想像に頬が緩んでくるのが止められない。
「もしかしたら、瑞麗は番に選ばれたかもしれないのですねっ…!!」
「待て待て。まだ早計過ぎる。しかし、龍妃ならば極秘で親が呼ばれる事も無いはず…」
50年前に見出された序列2位の番様の実家は現在も大きな恩恵を受けている。序列2位という事は龍王の次に力の強い龍族だ。当時の騒がれぶりはそれはそれは大きかった。
番様の直系の親や兄弟達は既に殆どが亡くなったりしているが、その孫や曾孫の代に移っても血族として繁栄していた。
もしかしたら、我が家も。
そんな甘い想像が2人を満たす。
「どなたの番様に選ばれたのでしょうか。ここまで厳重にという事はもしや序列の高い龍族のお方という可能性も…」
「これ、滅多な事を口にするな。幸運が逃げてしまうかもしれぬだろう」
「あっ申し訳ありません!そうですわね…!」
2人とも口では否定しながらであったが、想像している事は一緒である。
完全に自分達の娘が幸運に恵まれたと確信していた。
まぁ、それもあながち間違いではなかったが。
そちらの可能性ははなから思いもしていない。
「瑞麗なら、やってくれるとわたくしは信じていましたの。あの子は本当に親孝行な娘です。ねぇあなた」
「正しく。瑞麗…いや瑞麗様には感謝しなくてはな」
ほほほ、はははと2人は馬車の中で笑っていた。
これから訪れるであろう運命を2人はまだ知らない。
◇◇◇
「こちらへどうぞ。龍王陛下がお待ちです」
「おお。わかりました。これ、早くせぬか!」
「申し訳ないわ。歩くのが遅くて…」
「ゆっくりで構いませんよ」
夫婦は勇み足になりそうな気持ちを落ち着けようとしたが、失敗していた。
表情は始終緩みっ放し。
使者の人間も夫婦の様子には気が付いていたが、特に否定もしないので2人の誤解を否定する者がいなかった。
使者が大きな扉の前で立ち止まると、両脇にいた龍族の兵士に頭を下げた。
2人もそれに習う。
「龍王陛下。御命令通りお2人をお連れしました。入室のご許可を」
「…入れ」
重厚な扉の向こうから威厳のある低い男性の声が響いてきた。
夫婦の緊張は最高潮になる。
宰相は茶会や祝賀会などで何度か龍王に目通りをし、言葉も少し交わした事があったが世間話をするほど交流した事はないし、妻に至っては初お目通りだ。
それだけ龍王とは遠い雲の上の存在だ。一小国の宰相など相手にされない。
緊張しない方がおかしかった。
たが、しかし。
これからは違うかもしれない。
一族の誉れがすぐ目の前にあったーーーー。
「あなた…今更急に不安になって来ましたわ…わたくし陛下にお会いするのは初めてですもの」
妻が皇宮内を歩きながら、不安に揺れた瞳で聞いてきた。
自分と妻に突如皇宮から呼び出しがかかった。
理由を使者に問うても「ここでは話せません」とがんとして教えてはもらえなかった。
宰相府という雅国でも貴族の最高位である場所でも口に出来ぬ内容とは一体何なのか。
夫妻は期待と不安が綯い交ぜになっていた。
皇宮へ向かう道中での事…。
急ぎ準備して馬車に乗り込み、御者に急ぐ様伝える。
「瑞麗の身に何かあったのでしょうか……」
妻が恐る恐る口にする。
「わからん。しかし、怪我をしたり病気なら口を閉ざす意味もないだろう。その線は薄い。ましてや親を皇宮にお呼びとは…もしや」
「まさか…!」
妻が想像に歓喜する。
自分ももしやの想像に頬が緩んでくるのが止められない。
「もしかしたら、瑞麗は番に選ばれたかもしれないのですねっ…!!」
「待て待て。まだ早計過ぎる。しかし、龍妃ならば極秘で親が呼ばれる事も無いはず…」
50年前に見出された序列2位の番様の実家は現在も大きな恩恵を受けている。序列2位という事は龍王の次に力の強い龍族だ。当時の騒がれぶりはそれはそれは大きかった。
番様の直系の親や兄弟達は既に殆どが亡くなったりしているが、その孫や曾孫の代に移っても血族として繁栄していた。
もしかしたら、我が家も。
そんな甘い想像が2人を満たす。
「どなたの番様に選ばれたのでしょうか。ここまで厳重にという事はもしや序列の高い龍族のお方という可能性も…」
「これ、滅多な事を口にするな。幸運が逃げてしまうかもしれぬだろう」
「あっ申し訳ありません!そうですわね…!」
2人とも口では否定しながらであったが、想像している事は一緒である。
完全に自分達の娘が幸運に恵まれたと確信していた。
まぁ、それもあながち間違いではなかったが。
そちらの可能性ははなから思いもしていない。
「瑞麗なら、やってくれるとわたくしは信じていましたの。あの子は本当に親孝行な娘です。ねぇあなた」
「正しく。瑞麗…いや瑞麗様には感謝しなくてはな」
ほほほ、はははと2人は馬車の中で笑っていた。
これから訪れるであろう運命を2人はまだ知らない。
◇◇◇
「こちらへどうぞ。龍王陛下がお待ちです」
「おお。わかりました。これ、早くせぬか!」
「申し訳ないわ。歩くのが遅くて…」
「ゆっくりで構いませんよ」
夫婦は勇み足になりそうな気持ちを落ち着けようとしたが、失敗していた。
表情は始終緩みっ放し。
使者の人間も夫婦の様子には気が付いていたが、特に否定もしないので2人の誤解を否定する者がいなかった。
使者が大きな扉の前で立ち止まると、両脇にいた龍族の兵士に頭を下げた。
2人もそれに習う。
「龍王陛下。御命令通りお2人をお連れしました。入室のご許可を」
「…入れ」
重厚な扉の向こうから威厳のある低い男性の声が響いてきた。
夫婦の緊張は最高潮になる。
宰相は茶会や祝賀会などで何度か龍王に目通りをし、言葉も少し交わした事があったが世間話をするほど交流した事はないし、妻に至っては初お目通りだ。
それだけ龍王とは遠い雲の上の存在だ。一小国の宰相など相手にされない。
緊張しない方がおかしかった。
たが、しかし。
これからは違うかもしれない。
一族の誉れがすぐ目の前にあったーーーー。
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