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第三章 和二一族( 太康十年・西暦二八九年)
クマノクスビの思い
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ワニ一族の能力を初めて見た石見、長門の兵たちからは、「敵でなくてよかった」というささやき声が聞こえた。
勝負は一刻ほどで決着した。城内ではコウタリとアシカルが走り回り、国王の儒礼尼師今を捕まえてきた。
「久しぶりだな、儒礼尼師今。こちらの要求は斯蘆を征服することではない。日高三国の交易の邪魔はしないと約束するなら、許してやる」
儒礼尼師今は認めざるを得なかった。
これまで、日高三国は斯蘆に対して貢ぎ物や税を要求するような属国扱いをしていなかった。タカシレウクが、余計なことをしてその関係を壊してしまっただけで、非は日高三国の方にあった。だから、今回はクマノクスビは大きく譲歩した。しかし、今後は斯蘆に甘い顔はできないだろうと感じていた。それは、大陸の動きである。いずれ朝鮮半島は大陸の影響を受け、日高三国に戦いを仕掛けてくることも考えられる。しばらくは、ワニ一族の丸薬の力で防ぐことはできるだろう。しかし、アキトモが言っていたように、いつまでも丸薬に頼っていたのでは、それが手に入らなくなった時、滅亡するのは目に見えている。それまでに、強い国に仕上げなければならない。
出雲国と石見国の船はそれぞれの国に向かって戻っていった。
クマノクスビは長門国の船で豊浦に送ってもらった。竜王山に立ち寄るためだ。日高三国の初代族長、モテリカムが奈国連合の侵略に備えて考え出した「旗振り山」の出発点だ。モテリカムは優れた族長だった。「戦わずして勝つ」ことを、上策と考え日高三国の礎を作り上げた。クマノクスビが熊叡として仕えた奈国連合六代目の大王、徐学もそうだった。最新の武器を手に入れることで、相手を威嚇し戦意を削いだ。
名声を上げようとする独裁者は、住民の命を犠牲にすることに何の頓着もない。しかし、そんな独裁者の下にいる兵士や住民はたまったものではない。
今、クマノクスビの手にはワニ一族の丸薬がある。しかし、これは威嚇にはならない。この丸薬の力を見せつけないと効果はない。しかし、それでは「戦わずして勝つ」ことはできない。
竜王山に立ったクマノクスビの目の前には、かつての故郷九州が見える。
「まずは倭の統一か」
勝負は一刻ほどで決着した。城内ではコウタリとアシカルが走り回り、国王の儒礼尼師今を捕まえてきた。
「久しぶりだな、儒礼尼師今。こちらの要求は斯蘆を征服することではない。日高三国の交易の邪魔はしないと約束するなら、許してやる」
儒礼尼師今は認めざるを得なかった。
これまで、日高三国は斯蘆に対して貢ぎ物や税を要求するような属国扱いをしていなかった。タカシレウクが、余計なことをしてその関係を壊してしまっただけで、非は日高三国の方にあった。だから、今回はクマノクスビは大きく譲歩した。しかし、今後は斯蘆に甘い顔はできないだろうと感じていた。それは、大陸の動きである。いずれ朝鮮半島は大陸の影響を受け、日高三国に戦いを仕掛けてくることも考えられる。しばらくは、ワニ一族の丸薬の力で防ぐことはできるだろう。しかし、アキトモが言っていたように、いつまでも丸薬に頼っていたのでは、それが手に入らなくなった時、滅亡するのは目に見えている。それまでに、強い国に仕上げなければならない。
出雲国と石見国の船はそれぞれの国に向かって戻っていった。
クマノクスビは長門国の船で豊浦に送ってもらった。竜王山に立ち寄るためだ。日高三国の初代族長、モテリカムが奈国連合の侵略に備えて考え出した「旗振り山」の出発点だ。モテリカムは優れた族長だった。「戦わずして勝つ」ことを、上策と考え日高三国の礎を作り上げた。クマノクスビが熊叡として仕えた奈国連合六代目の大王、徐学もそうだった。最新の武器を手に入れることで、相手を威嚇し戦意を削いだ。
名声を上げようとする独裁者は、住民の命を犠牲にすることに何の頓着もない。しかし、そんな独裁者の下にいる兵士や住民はたまったものではない。
今、クマノクスビの手にはワニ一族の丸薬がある。しかし、これは威嚇にはならない。この丸薬の力を見せつけないと効果はない。しかし、それでは「戦わずして勝つ」ことはできない。
竜王山に立ったクマノクスビの目の前には、かつての故郷九州が見える。
「まずは倭の統一か」
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