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第三章 和二一族( 太康十年・西暦二八九年)
ワニ一族の帰還
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五年後の夏、ワニ一族五千人余りを引き連れてタカトモが淡海国に帰ってきた。今回は人数が多いため、船で長い距離を移動するのは危険なため、辰韓を通り浦項から船で長門国に渡り、そこから陸路で淡海国に入った。
久々に会うタカトモもハンも勇壮な兵士に変化していた。二人は旅の途中で妻を娶り父親となっていた。
クマノクスビはタカトモに、ビキと夫婦となったこと、アキトモからワニ一族の丸薬の作り方を伝授されたことを話した。
「実は、私は出発前父からそのことについて聞いておりました。叔父のカネトモにも伝えております。族長アキトモの命令として、ワニ一族はクマノクスビ様を正式に族長として従うことをお約束いたします」
アキトモはそこまで考えて、ワニ一族をこの地に定住させようと決めていたのか。クマノクスビは彼の決心が強固だったことを改めて思った。
五千人もの大移動だ。途中の国々が黙って通すわけがない。ワニ一族はそれぞれの国に入るごとに戦いを仕掛けられた。タカトモはその都度、丸薬を使って圧倒的な戦力で蹴散らかしてきた。国王を捕まえて通行許可書を書かせると、後は何も要求しないことが分ると、それが伝わったのか倭に近づくにつれ、国境で許可書を持った重臣が出迎えるようになり、無益な戦いはしなくて済むようになった。
朝鮮半島に着く前に、伝令を出しクノクスビに連絡を取った。そのため、朝鮮半島以降はクマノクスビの手配で、速やかに移動できるようになった。
旅の途中で、ワニ一族に合流した匈奴や鮮卑の民もいて、ヒダカ一族に溶け込むのも早かった。元々、戦いを好まない一族のため、クマノクスビは倭の統一に彼らは大きな働きをすると期待した。
高島から淡海の西の土地をワニ一族の住処とした。
落ち着いたところで、クマノクスビはスサノオにこれまでの経過を報告しに出雲国に出かけた。スサノオも六十歳の高齢となり、新日高三国の掟をどうするか決めなくてはならない。
族長は五十歳までという掟は、新日高三国ができた段階で崩れてしまった。スサノオはクマノクスビを族長にしたいと以前から願っていたが、不老不死の秘密を抱えているため、いずれ政治の表舞台から消えなくてはならない。ワニ一族の族長も、早く返上しなければならないのである。
タカトモはアキトモの命令だと族長となることを固辞している。そうなると、息子のタケトモに継がせるしかない。十年たてばトッカラムも十六となり、スサノオの後を継ぐこともできる。
「お前は日高三国をどうしたい」
突然、スサノオが聞いた。
「朝鮮半島も中国も、今小国が乱立している状況です。倭も日高三国と耶馬壱連合が対立しています。ワニ一族は国を持っていませんが、日高三国や耶馬壱連合を滅ぼすほどの戦力を持っています。朝鮮半島や中国よりも早くこの三大勢力が統一できれば、倭は他国に侵略されない強国となることができます」
「統一国家か!」
久々に会うタカトモもハンも勇壮な兵士に変化していた。二人は旅の途中で妻を娶り父親となっていた。
クマノクスビはタカトモに、ビキと夫婦となったこと、アキトモからワニ一族の丸薬の作り方を伝授されたことを話した。
「実は、私は出発前父からそのことについて聞いておりました。叔父のカネトモにも伝えております。族長アキトモの命令として、ワニ一族はクマノクスビ様を正式に族長として従うことをお約束いたします」
アキトモはそこまで考えて、ワニ一族をこの地に定住させようと決めていたのか。クマノクスビは彼の決心が強固だったことを改めて思った。
五千人もの大移動だ。途中の国々が黙って通すわけがない。ワニ一族はそれぞれの国に入るごとに戦いを仕掛けられた。タカトモはその都度、丸薬を使って圧倒的な戦力で蹴散らかしてきた。国王を捕まえて通行許可書を書かせると、後は何も要求しないことが分ると、それが伝わったのか倭に近づくにつれ、国境で許可書を持った重臣が出迎えるようになり、無益な戦いはしなくて済むようになった。
朝鮮半島に着く前に、伝令を出しクノクスビに連絡を取った。そのため、朝鮮半島以降はクマノクスビの手配で、速やかに移動できるようになった。
旅の途中で、ワニ一族に合流した匈奴や鮮卑の民もいて、ヒダカ一族に溶け込むのも早かった。元々、戦いを好まない一族のため、クマノクスビは倭の統一に彼らは大きな働きをすると期待した。
高島から淡海の西の土地をワニ一族の住処とした。
落ち着いたところで、クマノクスビはスサノオにこれまでの経過を報告しに出雲国に出かけた。スサノオも六十歳の高齢となり、新日高三国の掟をどうするか決めなくてはならない。
族長は五十歳までという掟は、新日高三国ができた段階で崩れてしまった。スサノオはクマノクスビを族長にしたいと以前から願っていたが、不老不死の秘密を抱えているため、いずれ政治の表舞台から消えなくてはならない。ワニ一族の族長も、早く返上しなければならないのである。
タカトモはアキトモの命令だと族長となることを固辞している。そうなると、息子のタケトモに継がせるしかない。十年たてばトッカラムも十六となり、スサノオの後を継ぐこともできる。
「お前は日高三国をどうしたい」
突然、スサノオが聞いた。
「朝鮮半島も中国も、今小国が乱立している状況です。倭も日高三国と耶馬壱連合が対立しています。ワニ一族は国を持っていませんが、日高三国や耶馬壱連合を滅ぼすほどの戦力を持っています。朝鮮半島や中国よりも早くこの三大勢力が統一できれば、倭は他国に侵略されない強国となることができます」
「統一国家か!」
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