異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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2章 少女との出会いそして同行

2.6 依頼を受けに行ったら勝負を挑まれた話

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「ところでパーティーに入るのを断られた今、この後どうするつもりだ?」

「1度村に帰り、母の形見になる物を持って戻ってくるつもりです。幸い好意を持ってくれたパーティーがいくつかあるようで、そこに入れて貰えればと思います」

 あいつらが求めているのは女のお前で、パーティーメンバーとしてではない。

 いや違うな。俯いたその表情と目を見ると、そんな事は分かっているが、他の事に比べれば何ともないと考えているのが伝わってくる。

 俺が良く知っている・・・全てを明らめている目だ。

 後味の悪い事を言ってくれる。これが計算と演技であれば、大した役者だな。

「お前とパーティーを組む気はないが、今日の依頼にだけ同行してもらい、そのいくらかの報酬を分けよう。これが譲歩できる範囲だ。金があればもう少し選択肢も増えるだろ」

「あ・・・! はい! ありがとうございます」

 その笑顔なら・・・良い所の男と、結婚くらい簡単に出来ると思うが。

「金を得たら、好きな所に行け」

「・・・はい」

「そういえば、名前と年齢は?」

「オリービアです。15歳になりました。もう結婚を考える歳です」

 余計な情報を言ってモジモジしてるな・・・、何を考えているんだこいつは。

「あの・・・私もお名前と歳を伺っても?」

「ルシファーだ。16歳・・・だよな・・・」

「よろしくお願いします。ルシファー様」

 様と呼ばなくてもいいんだが。まあ悪い気はしないな。

「とりあえず組合に行って、手頃な依頼を受けるぞ。お前は獣の売値の相場とかは、分かるのか?」

「はい。ある程度の相場は分かります」

 これは街を出る資金を得るのに、ちょうどいい人材かもな。

 隊長にオリービア、徐々に人が俺に関わりだしている。

 とにかく金貨100枚の目標を、早く達成しないとな。

「1番儲かる奴を選んでくれ」

「はい! お任せを」

 俺もこいつと関わっていけば、こういう笑顔も出来るようになるのだろうか。

 いや・・・関わりを持つ苦痛を超えて、手に入れてももう遅いかもな。

 時間を消費してしまったので、急いで狩猟組合に向かう。

 オリービアを連れていると、組合に行くまでも人目を引いてしまう。

 オリービアは俺の後ろを、3歩下がって付いてくるという、どこのよき時代の女性だよという感じである。

 しつけはしっかりされていたのか、そのおしとやかな感じが、オリービアを狙っていた奴等からの恨みの視線を強くしているのは、想像に難くない。

 とりあえず組合に入り、貼りだされている依頼に目を通す。

 オリービアは丁寧に依頼書を見比べて、比較してより高い売値の獣を探している。

 献身的に一生懸命探しているその姿は、俺でも情に流されそうにはなるが。

「にいちゃん!」

 騎馬騎士隊の隊長か。

 鼻がまだ凹んだままだが、何事もなかったかのように話しかけてきたな。

「女連れになったのかよ! しかも相当美人じゃねぇか。まだ子供っぽさが残るがな」

「何の用だ?」

「また俺たちの成果を横取りするつもりなのかな? と思ってよ」

「何の話だ?」

「俺達がメガネパルを仕留めようとしたのを! 横から止めを刺して! 成果を奪った挙句、分け前も渋ったよな!」

 わざと大声で言ってやがる。

 殴られたことへの仕返しのつもりか?

「姉ちゃんも! こんな卑怯者に一緒にいたら損するぜ! 俺たちの所に来なよ!」

 さあどうする? オリービア。

 嘘か真かの話を聞かされて、お前はどう答える?

「そんな嘘には騙されません。私はルシファー様の強さを知っています。それはあなた達から獲物を横取りするなんて事を、する必要がない程です。それにあなたからは、人を陥れようという意図を感じます」

「ぐ!」

 意外だな・・・まあオリービアの生い立ちを考えれば、この程度で騙されるようなことはないか。

 隊長の糞みたいな人間性を、簡単に看破出来てもおかしくない。

「ぶん殴られたことへの仕返しのつもりだろうが、俺は周りにどう思われようが関係ないから無駄だぞ」

「俺達は納得できないんでね。メガネパルの利益を当てにしてたのによ!」

「無理を言って受注したあんたらが、自分達で狩猟出来たとは思えないが」

「この野郎・・・勝負しろ! 俺達が勝ったら、メガネパルを売った金を全部寄こしやがれ!」

「勝負しても、俺に何のメリットもないんだが」

「もし負けたら、一生お前の子分になってやるよ」

 意地の悪いにやけ面。気色悪い男だな。

「断る。何故好き好んで、おっさんを子分にしなければいけないんだ? 荷物より荷物になりそうだ」

「逃げるのか?」

「逃げる必要がない」

 隊長は顔を真っ赤にして、歯ぎしりしている。

 ここまで挑発に乗ってこないのも、まあ珍しいのだろうな。

 隊長の事を無視し、1つの依頼書に絞ったオリービアに声をかける。

「見つかったのか?」

「はい。この依頼書ですね。ティグリスの大森林に、メガディパーグが出たそうです」
「昨日の今日で・・・また出たのか?」

「恐らく昨日狩猟された個体の親で、子を探して出てきたのだと思います。ですが最低1人はランクゴールド、レベル2以上です。ルシファー様のランクとレベルはなんですか?」

「ゴールドの13だが」

「もう驚きはしません・・・」

 メガディパーグなら、かなりの売値が期待できるな。

 上手くいけば今回の狩猟で、街を出るために決めた目標、金貨100枚が達成できるかもしれない。

「おい! 無視して話をするな!」

「何だ・・・まだいたのか」

「お前らはその依頼を受けるんだな?」

「そうだが?」

「俺達もティグリスの大森林に向かう! どっちが早く狩猟出来るか勝負だ!」

「勝手にしろ・・・」

「うるせえ! 約束忘れんなよ!」

 隊長は飛び出して行ってしまった。

「底なしの馬鹿なのか」

「よろしいのですか? 先に討伐されてしまったら・・・」

「その心配はない。あいつらには到底無理だろう」

 受付で正式に受注し、組合を後にする。

 外に出ると、ちょうど騎馬騎士隊が馬で通りかかり、出てきた俺を睨みながら駆け抜けていった。
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