異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

文字の大きさ
21 / 107
3章 制裁そして帰還

3.8 街へ戻って狩猟達成した話

しおりを挟む
 その後誰も追ってくることなく、村を抜けて街道まで来れた。

 まああんな力見せられたら、追ってこようと思う奴などいないか。

 もう日が傾き始めている。結構長い事、押し問答をして戻ってきたようだ。

 何とか今日中に持って帰り、宿屋でゆっくり休みたい。

 荷車自体を浮かせて、自分は飛んで帰れるか試してみるか。

「ルシファー様、何かお手伝い出来る事は?」

「ない」

 落ち込むオリービアをよそに、メガディパーグを荷車ごと浮かせる。
 そういえば忘れていたが、問題はオリービアだが・・・やはりああするしかないか。

「準備は出来た。もうここに用は無いな?」

「はい、今度こそもう村に戻る事はないかと」

 その言葉を聞き、再び俺はオリービアをお姫様抱っこする。

「ルシファー様!」

 すっごい嬉しそうにしてるのが、何とも言えない・・・。

 自分が飛びあがった後、荷車が追従するイメージをすると、ゆっくりと同じ高度まで上がってきた。

「落とさないで下さいね! 落とさないで下さいね! ルシファー様!」

「そう言われると、集中できなくなるから止めてくれ」

 オリービアは口を閉じたが、何故か息も止めていたようで窒息しそうになり息切れをしていた。

 夕日になる前にバビロアに着くよう、速度を上げ始める。

「そういえば、1つだけ疑問が解消しなかったな」

「なんですか?」

「その鎧ドレスと剣だ。フラテス候も、その鎧ドレスを見ても無反応だったし、一体お前の母はどこから持ってきたのだろうな?」

「そういえば分かりませんでしたね。物事態は結構良い物に見えますし、母が買えたとは思えません」

「バビロアの防具屋で、鑑定でもしてもらうか」

 ここまで関わると、気になった事が解消されないとなんかスッキリしないからな。



 小一時間ほど飛び続け、バビロアの外れに降り立つ。

 もうあまり人目を気にしないと言っても、飛んでるというインパクトは凄いからな。

 と思ったからの行動だったが、メガディパーグが乗った荷車を引いていれば、嫌でも目を引く。

 恒例のような、3度目の凱旋状態になっている。

 オリービアが一番恥ずかしそうにしているが、お前の場合は黄色い声援のせいだろ。
 まあここではオリービアを知る者がいないから、容姿に惹かれて男も普通に声をかけるわけだが。

「そこの美少女! うちのパーティーにおいで!」

「うちの息子の嫁に来てくれ!」

「またてめぇか! マスク野郎! その子を寄こせ!」

 また1人違う奴が紛れているな。



 獣市にメガディパーグを持って行き、競の登録を依頼する。

「もう・・・驚きませんよ」

 受付の兄ちゃんが、もはや真顔でリアクションを取らなくなってしまった。

 今日の分の競りに間に合ったようで、最後の商品として出品してくれるようだ。
 荷車から旅の荷物を下ろし、荷車は獣市で処分の依頼をした。

「組合に報告するか」

「はい」

 狩猟組合を訪れると、中でいくつかのパーティーが俺を待っている状態だった。

「あなたがルシファーさんだね。ちょっといいかな?」

 細身の剣士風の男が、代表して話しかけてくる。

「なんの用だ?」

「あんたに礼を言いたくてな」

「礼?」

「騎馬騎士隊の事さ」

 あいつらの事で礼?

「今回の件、組合に報告されたから聞いている。ルシファーさんが、人の命を見捨てたとか喚いてたらしいが、どう考えてもあれは自業自得だ」

「それで何故、俺に礼を言う事になるんだ?」

「今ここであなたを待っていたパーティーの面々は、あいつらの被害者なんだよ」

「被害者?」

「そうなんだ。仕留めた獲物を横取りされたり、連盟で依頼を受けて売値の分配を渋ったり、組合に嘘の報告をして信頼度を下げたり、やりたい放題だったんだよ」

「なるほど。結果的に俺は厄介払いをしたってことか」

「そうだ。あんたにそんな意図があったとは思わないが、結果的に被害者の心を晴らした」

 それでも人が死んでいるのには変わりないのだが。
 騎馬騎士隊って、どんだけ嫌われていたのだろうか。

 つまり、俺に絡んできたのも元から既定路線だったって訳だ。

「礼はいらない。俺の好きにさせてもらっただけだからな」

「なら我々は好きに礼を言わせてもらう」

「そうか・・・」

 強引に受付に歩き出すと、集まったパーティーは慌てて道を開ける。

「君は、彼のパーティーメンバーかい?」

「そうなれると嬉しいんですけど。メンバーになれなくても、妻とかであれば・・・」

 丸聞こえだぞ、オリービアよ。
 ”仲間にして欲しい”から、要求水準が大分上がっているじゃないか。

 そんなオリービアを放って、受付嬢に狩猟者証を渡す。

「今回は3日で狩猟完了ですか?」

「狩猟自体ははすぐ完了していたのだが、寄り道したら遅くなってしまった」

「寄り道してたとしても・・・3日で狩猟完了っていうのは、本当に・・・どうやって・・・」

「帰りは超急いだので」

「帰りは超急いだのですか」

 魔法陣で狩猟完了と履歴が更新され、獣市にようすを見に行く為に組合を後にした。

 獣市に戻ると、昨日よりも早く競が終わっていたので、金を受け取る事が出来た。
 今度は金貨39枚になったが、未だ物価が分からないので、これがどれ程の稼ぎか分からない。

 こういう時に、この世界の知識がない事を思い知らされる。

 とりあえず街を出る為の、金貨100枚までもう少しだ。
 明日に実入りの狩猟依頼があれば、フラテス候の執事の忠告通りにも、街を出れるだろう。

 もう日も暮れてきたし、宿屋に戻る事にするか。

「ルシファー様・・・」

 宿屋の前でオリービアが不安げに立ち止まり、声をかけてくる。
 しまった・・・、こいつの事を忘れていた。

「・・・安心しろ、俺が宿代を出してやる」

「それは仲間にして頂けるという事ですか?」

「その件も・・・、とりあえず部屋で話そう」

「はい!」

 ホテルマン風の男に促され、カウンターで部屋の変更を申し出る。

「上位の2人部屋に変えてくれないか?」

「お帰りなさいませ。お戻りにならないので心配しておりました。お部屋は空いておりますが、追加で金貨1枚が必要になります」

「問題ない」

 金貨1枚を支払、案内係が部屋まで案内してくれる。

 オリービアと部屋に入り、並んでいるベッドにそれぞれ腰かけた。

 なぜかオリービアは顔を赤らめている。

「ルシファー様・・・、いきなり同じ部屋なんて・・・ですが準備は出来ています。私はもう子を産めますし」

「だからなんだ」

「・・・すいません」

 今度は酷い落ち込みようだ。

 正直好意を寄せられているのは自覚しているが、俺はあの母親を見て育っているせいか、とてもその気になれない。

「まずは今後の事を話そうか」

 オリービアは顔を上げ、不安と期待が入り混じった目で、俺を見てきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...