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4章 新たな依頼そして黒き獣
4.1 少女と今後の事を話し合った話
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「お前はどうしたい?」
意外な問いに目を丸くするオリービア。
重要な質問だと思ったのか、これにどう答えるかで人生が変わるという感じで悩んでいる。
「別に試している訳じゃない。率直に言ってくれ」
「・・・ルシファー様と、共に居たいです」
「金が欲しいだけなら、新天地で生活を始めるに充分な額を渡すが?」
「お金が欲しいのではありません。ルシファー様と一緒に居たいのです」
まっすぐな好意か。悪くない気もするが、言っておかないといけないだろう。
こいつは初めて優しくしてくれた、同年代の男に絆されているだけだ。
「はっきり言おう。お前のその気持ちは、勘違いだ」
「え?」
「お前は初めて他人の、それも男に優しくされて、好意を抱いたと錯覚したに過ぎない」
「それは違いますルシファー様」
急にオリービアの雰囲気が変わる。
「確かに最初はそうだったかもしれません。でも、ルシファー様のもとに来たのは、私と近しい雰囲気を感じて、この人なら分かってくれると思ったからです。それに私の為でなくとも、私の過去を明らかにし、私の憎む相手に制裁を加えて頂きました。ルシファー様がどう思おうと、私にとっては大恩ある方なのです。生涯奉公しても、足りない程に」
だから自分の思いは勘違いではない、そう言いたいのか。
「そうだな・・・。自分の状態を認識したうえで、それでも肯定するのなら、それは勘違いではないのかもな」
「それに例え勘違いでも良いではないですか。窮地に陥った時に救われて、その方に好意を抱く事の何が悪いのですか?」
「悪いわけではないが」
「では何も問題ありませんね」
こんなに口が上手いとは思っていなかったが、まさかこいつに説得されてしまうとはな。
それに・・・何故か俺の心は安らいでいる気がする。
もしかして、俺は金を貰ってこいつが居なくならなかった事に、安堵しているのだろうか。
そんな事はないと思うが・・・俺は誰も信用しない。
1人でいいと思っているはずだ。
だが・・・。
「ところでお前は、本を読んでいろいろな知識を持っていると言っていたな?」
「はい。経験はありませんが知識はあります」
料理も出来るし、この世界の知識もある。今の俺に無い物を持ってる。
こいつを連れて行くのは、現状この世界のあらゆる情報を手にするのに、最良の方法だという事は分かるし、これから人と新たに関わるのも、本を買い漁るのも、物価価値を調べたりするのも、とても効率が悪い。
いつフラテス候の差し金で、憲兵が来るか分からな状況で、そんな悠長な事もしていられないだろう。
だとすれば答えは1つだ。
「・・・パーティーを組むか」
「はい! ありがとうございます!」
・・・なるほど。オリービアの満面の笑みは、凶器と変わらないな。
「その変り役には立ってもらうからな」
「はい。おいしい御飯を作りますね」
「今日はここの飯を注文するがな」
「あ・・・はい・・・そうですよね・・・」
メニューから食べたい物を選び、夕食が運ばれてくる。
誰かと一緒に食べる飯。
特に会話があったわけではないが、野営していた時とはまた違った何かを感じた。
目が合う度に笑顔を向けてくるオリービアを見ていると、俺の知らない何か温かい物が心に湧きあがってくる。
本当に調子が狂う。こいつを連れていく事にしたのは失敗だったかな。
「先に風呂に入るといい」
「お背中を流そうかと思ったのですが」
「必要ない」
露骨にガッカリされてしまう。
しばらくすると、まだ髪が濡れたままの、備え付けの寝巻を着たオリービアが出てきたが、それが妙に色っぽく見えて逃げるように風呂に入った。
疲れを取り風呂から出ると、オリービアがドヤ顔で俺が座っていたベッドに正座し、期待をした顔をしていたので、デコピンをくらわせて空いてるベッドに横になる。
何かぶつくさオリービアが言っているが、パーティー仲間以上に親しくなるつもりが毛頭ないので、当然の結果だろう。
連れて行ってもいいと思ったが、それはあくまで利害関係が一致したからだと思っている。
俺はこのまま1人で・・・好きに生きていければいいんだ。
ああは言ったものの、オリービアも外の世界を知れば、他に良い男を見つけて離れて行くだろう。
静かになったオリービアが大人しく寝床に着いたのを確認し、手をかざしてランプの火を消した。
日差しが眩しい。それに体が動かし辛い。
目を開け違和感の正体を見ると、オリービアが俺のベッドに入って寝ている事が分かった。
「・・・ん。おはようございます。ルシファー様」
「何故俺のベッドで、一緒に寝ているか聞きたいのだが」
「朝起きたら・・・、ルシファー様が居なくなっていたらどうしようと思ってしまい、不安で・・・」
表情を見る限り、嘘は付いていないようだ。
こいつもこいつで、いろいろ抱えたままだからな。
・・・今回だけは許すか。
「すいません」
「今回だけは許す」
さっさと朝食を部屋で済ませ、お互い装備を整える。
準備を済ませ宿屋を後にするが、オリービアが嬉しそうに着いてきているのが昨日と違う事だ。
金貨100枚の目標を立てたものの、オリービアを連れて行く事にしたし、とりあえず現状の資金で街を出る事にするか。
「今日でバビロアを出ようと思う」
「はい。旅が始まるのですね!」
「随分嬉しそうだな」
「本で旅をするお話を見て、ずっと憧れていましたから」
「なるほどな・・・。野営道具はあるから他に必要な物の購入と、後はそれを見てもらうか」
オリービアの鎧ドレスを指差し、まずは鑑定してもらう為、先に防具屋へ寄る事にした。
意外な問いに目を丸くするオリービア。
重要な質問だと思ったのか、これにどう答えるかで人生が変わるという感じで悩んでいる。
「別に試している訳じゃない。率直に言ってくれ」
「・・・ルシファー様と、共に居たいです」
「金が欲しいだけなら、新天地で生活を始めるに充分な額を渡すが?」
「お金が欲しいのではありません。ルシファー様と一緒に居たいのです」
まっすぐな好意か。悪くない気もするが、言っておかないといけないだろう。
こいつは初めて優しくしてくれた、同年代の男に絆されているだけだ。
「はっきり言おう。お前のその気持ちは、勘違いだ」
「え?」
「お前は初めて他人の、それも男に優しくされて、好意を抱いたと錯覚したに過ぎない」
「それは違いますルシファー様」
急にオリービアの雰囲気が変わる。
「確かに最初はそうだったかもしれません。でも、ルシファー様のもとに来たのは、私と近しい雰囲気を感じて、この人なら分かってくれると思ったからです。それに私の為でなくとも、私の過去を明らかにし、私の憎む相手に制裁を加えて頂きました。ルシファー様がどう思おうと、私にとっては大恩ある方なのです。生涯奉公しても、足りない程に」
だから自分の思いは勘違いではない、そう言いたいのか。
「そうだな・・・。自分の状態を認識したうえで、それでも肯定するのなら、それは勘違いではないのかもな」
「それに例え勘違いでも良いではないですか。窮地に陥った時に救われて、その方に好意を抱く事の何が悪いのですか?」
「悪いわけではないが」
「では何も問題ありませんね」
こんなに口が上手いとは思っていなかったが、まさかこいつに説得されてしまうとはな。
それに・・・何故か俺の心は安らいでいる気がする。
もしかして、俺は金を貰ってこいつが居なくならなかった事に、安堵しているのだろうか。
そんな事はないと思うが・・・俺は誰も信用しない。
1人でいいと思っているはずだ。
だが・・・。
「ところでお前は、本を読んでいろいろな知識を持っていると言っていたな?」
「はい。経験はありませんが知識はあります」
料理も出来るし、この世界の知識もある。今の俺に無い物を持ってる。
こいつを連れて行くのは、現状この世界のあらゆる情報を手にするのに、最良の方法だという事は分かるし、これから人と新たに関わるのも、本を買い漁るのも、物価価値を調べたりするのも、とても効率が悪い。
いつフラテス候の差し金で、憲兵が来るか分からな状況で、そんな悠長な事もしていられないだろう。
だとすれば答えは1つだ。
「・・・パーティーを組むか」
「はい! ありがとうございます!」
・・・なるほど。オリービアの満面の笑みは、凶器と変わらないな。
「その変り役には立ってもらうからな」
「はい。おいしい御飯を作りますね」
「今日はここの飯を注文するがな」
「あ・・・はい・・・そうですよね・・・」
メニューから食べたい物を選び、夕食が運ばれてくる。
誰かと一緒に食べる飯。
特に会話があったわけではないが、野営していた時とはまた違った何かを感じた。
目が合う度に笑顔を向けてくるオリービアを見ていると、俺の知らない何か温かい物が心に湧きあがってくる。
本当に調子が狂う。こいつを連れていく事にしたのは失敗だったかな。
「先に風呂に入るといい」
「お背中を流そうかと思ったのですが」
「必要ない」
露骨にガッカリされてしまう。
しばらくすると、まだ髪が濡れたままの、備え付けの寝巻を着たオリービアが出てきたが、それが妙に色っぽく見えて逃げるように風呂に入った。
疲れを取り風呂から出ると、オリービアがドヤ顔で俺が座っていたベッドに正座し、期待をした顔をしていたので、デコピンをくらわせて空いてるベッドに横になる。
何かぶつくさオリービアが言っているが、パーティー仲間以上に親しくなるつもりが毛頭ないので、当然の結果だろう。
連れて行ってもいいと思ったが、それはあくまで利害関係が一致したからだと思っている。
俺はこのまま1人で・・・好きに生きていければいいんだ。
ああは言ったものの、オリービアも外の世界を知れば、他に良い男を見つけて離れて行くだろう。
静かになったオリービアが大人しく寝床に着いたのを確認し、手をかざしてランプの火を消した。
日差しが眩しい。それに体が動かし辛い。
目を開け違和感の正体を見ると、オリービアが俺のベッドに入って寝ている事が分かった。
「・・・ん。おはようございます。ルシファー様」
「何故俺のベッドで、一緒に寝ているか聞きたいのだが」
「朝起きたら・・・、ルシファー様が居なくなっていたらどうしようと思ってしまい、不安で・・・」
表情を見る限り、嘘は付いていないようだ。
こいつもこいつで、いろいろ抱えたままだからな。
・・・今回だけは許すか。
「すいません」
「今回だけは許す」
さっさと朝食を部屋で済ませ、お互い装備を整える。
準備を済ませ宿屋を後にするが、オリービアが嬉しそうに着いてきているのが昨日と違う事だ。
金貨100枚の目標を立てたものの、オリービアを連れて行く事にしたし、とりあえず現状の資金で街を出る事にするか。
「今日でバビロアを出ようと思う」
「はい。旅が始まるのですね!」
「随分嬉しそうだな」
「本で旅をするお話を見て、ずっと憧れていましたから」
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