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4章 新たな依頼そして黒き獣
4.2 鎧ドレスと刀の正体が分かった話
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「いらっしゃい! お! あんちゃんは最近噂の凄腕狩猟者だね」
店主が景気よく挨拶してくる。そんな噂になっているのか。
「うれしいね~、腕が確かな狩猟者がうちに来たとあっちゃあ、商売繁盛ってもんよ」
何だかこの軽快な喋りは悪くないな。
「こいつの鎧ドレスを、鑑定してほしいのだが」
「ほう・・・なかなかの上物だね。待てよ・・・この独特な青みがかった色・・」
防具屋はオリービアの鎧ドレスを、裾の先から織り目に至るまで丁寧に鑑定する。
替えの服が無いので着たままの鑑定だった為、オリービアはスカートを持ち上げられた時などは、必死に押さえて隠していた。
「こいつは・・・とんでもないな」
「と言うと?」
「一見ただの布に見えるが、金属を糸状にして編み込んでいる。しかもその金属はただの金属じゃねえ、これは神鉄だ」
「神鉄? 初めて聞いたが」
「失われた金属だ。今はその製法を知る者は誰もいねえ。今では精製済みのものが残るだけだが、大半は金持ちか国の宝物庫に眠っている」
「その神鉄の特徴は?」
「破壊する事が不可能と言われていて、加工する事ができねえ物だ。後は青みがかった独特な色をしていて、とんでもなく軽い。物としては普通の金属製品、例えば剣にも出来るし、この嬢ちゃんの鎧ドレスのように硬度を保ったまま繊維状にして、布状にすることもできる。因みに小手と肩当て、胸当ても全て神鉄で出来ているぜ」
そこでふと思い当る事がある。
「なあ、これも神鉄か?」
刀を抜き見せてみると、防具屋は驚き刀身を覗き込む。
「ああ・・・間違いねえ。これも神鉄の剣だ・・・」
やはりそうか。
神鉄という名称からすると、神に与えられた力と親和性が高いのは、その為なのかもしれない。
「あんたら・・・、もう歩く国宝だぜ。気をつけな・・・それが神鉄の神器だと知れたら、どんな事をしてでも手に入れようって輩が出てくるぜ」
「忠告感謝するよ」
鑑定料に銀貨1枚と、銅貨12枚を渡す。
「まさか売りに来たんじゃないよな? そんなの買い取る資金はこの店には無いぞ」
「鑑定に来ただけだ」
「そうか。まあそんな防具持ってたんじゃ、うちで買っていく物なんてねえわな。ところで嬢ちゃんの剣もまさか?」
タダでいいとの事だったので、オリービアの剣も見てもらう事にした。
「こいつは・・・ただの鉄の剣だな。鈍って程じゃねえが、秀でてもいねえ」
まあそれは素人の俺でも分かる事だが。万が一って事があるからな。
「ここに武器は置いてないのか?」
「まあ防具屋だからな。でも嬢ちゃんの武器を新調するなら、隣の武器屋がオススメだ! 実は俺の兄貴の店でな。武器を見繕う目は確かだ」
「分かった」
防具屋を出て、隣の武器屋へ向かう。
「いらっしゃい! お! あんちゃんは最近噂の凄腕狩猟者だね」
は!? さっきの防具屋が、同じ事を言ってカウンターの中に立っているぞ。
「どうしたんだい? あんちゃん?」
まさか双子か。おっさんの双子とか、嬉しくも何ともないサプライズだな。
「隣の防具屋でこの店を勧められたんだが、こいつの新しい武器を見繕ってくれ。予算に関係なく、なるべくいいものを頼む」
「太っ腹なあんちゃんだね。自分の女に使う金は惜しまないってか?」
オリービアは両手で頬を押さえて、”自分の女”という言葉に浸っている。
やっぱり連れて行くの止めようかな。
武器屋はオリービアの腕を触ったり、片足で立たせて体幹を見たりと、なかなか本格的な事をしている。
「こいつがオススメだな」
武器屋が出してきたのはレイピアだったが、僅かに灰色がかった光沢のものだった。
「変わった見た目だな?」
「こいつはリトグリフって金属で出来ていてな。神鉄を除けば一番希少で硬く、軽い金属なんだ」
また神鉄か・・・。
そういえば、俺の剣とオリービアの鎧ドレスが、神鉄製という事には気づいてないようだが。
おいそれと、見かけると思っていないのだろうか。
「嬢ちゃんは体幹と瞬発力はあるみたいだが、単純に筋力不足で普通の剣は満足に振れねえ。だから基本が突く動作の、レイピアがオススメなのさ。それにうちにある武器で、これ以上の品はねえ!」
ふざけてるようで、真面目に考えているのだな。
「それを貰おう」
「毎度! 金貨30枚だ!」
は!?
「いくらだ?」
「ん? 金貨30枚だ!」
気まずい沈黙が流れる。
「おい・・・これは妥当な値段なのか?」
「私も本で見た事がありますが、リトグリフは希少金属なのは本当ですし、正確な相場は分かりませんが・・・むしろ安い方かと」
「その通りだ!」
昨日のメガディパーグの売値が、ごっそり持っていかれるぞ。
だいたいオリービアにこれを買う価値はあるのか?
「あの・・・ルシファー様。私は戦闘では役に立っていません。こんな高価な物を買う必要は・・・」
「少しでも戦力になる可能性があるなら、買うべきだろう」
若干、かなり、とても後悔しながら、金貨30枚をカウンターに置いた。
予算は気にするなって言ってしまったからな。今更買わないとは言えない雰囲気だ。
まあ革袋も重くなってたしな。
ちょうど小銭を減らす、良い機会になったと思えばいい・・・。
・・・俺にも見栄というのがあったとはな。
「嬢ちゃん、良い男を捕まえたね~」
「はい」
”はい”じゃないだろ・・・。
「まいどあり~」
上機嫌で手を振る、武器屋に殺意が芽生える。
「あの・・・ルシファー様、本当にありがとうございます」
「気にするな。いつまでも足手まといでは困るからな」
「はい! 必ず強くなります」
「せめて自分の身は、自分で守れる位になることだ」
「はい!」
「狩猟組合に行くぞ」
「街を出るのでは?」
「稼ぐぞ・・・」
「はい・・・」
失ったものは取り戻す。
店主が景気よく挨拶してくる。そんな噂になっているのか。
「うれしいね~、腕が確かな狩猟者がうちに来たとあっちゃあ、商売繁盛ってもんよ」
何だかこの軽快な喋りは悪くないな。
「こいつの鎧ドレスを、鑑定してほしいのだが」
「ほう・・・なかなかの上物だね。待てよ・・・この独特な青みがかった色・・」
防具屋はオリービアの鎧ドレスを、裾の先から織り目に至るまで丁寧に鑑定する。
替えの服が無いので着たままの鑑定だった為、オリービアはスカートを持ち上げられた時などは、必死に押さえて隠していた。
「こいつは・・・とんでもないな」
「と言うと?」
「一見ただの布に見えるが、金属を糸状にして編み込んでいる。しかもその金属はただの金属じゃねえ、これは神鉄だ」
「神鉄? 初めて聞いたが」
「失われた金属だ。今はその製法を知る者は誰もいねえ。今では精製済みのものが残るだけだが、大半は金持ちか国の宝物庫に眠っている」
「その神鉄の特徴は?」
「破壊する事が不可能と言われていて、加工する事ができねえ物だ。後は青みがかった独特な色をしていて、とんでもなく軽い。物としては普通の金属製品、例えば剣にも出来るし、この嬢ちゃんの鎧ドレスのように硬度を保ったまま繊維状にして、布状にすることもできる。因みに小手と肩当て、胸当ても全て神鉄で出来ているぜ」
そこでふと思い当る事がある。
「なあ、これも神鉄か?」
刀を抜き見せてみると、防具屋は驚き刀身を覗き込む。
「ああ・・・間違いねえ。これも神鉄の剣だ・・・」
やはりそうか。
神鉄という名称からすると、神に与えられた力と親和性が高いのは、その為なのかもしれない。
「あんたら・・・、もう歩く国宝だぜ。気をつけな・・・それが神鉄の神器だと知れたら、どんな事をしてでも手に入れようって輩が出てくるぜ」
「忠告感謝するよ」
鑑定料に銀貨1枚と、銅貨12枚を渡す。
「まさか売りに来たんじゃないよな? そんなの買い取る資金はこの店には無いぞ」
「鑑定に来ただけだ」
「そうか。まあそんな防具持ってたんじゃ、うちで買っていく物なんてねえわな。ところで嬢ちゃんの剣もまさか?」
タダでいいとの事だったので、オリービアの剣も見てもらう事にした。
「こいつは・・・ただの鉄の剣だな。鈍って程じゃねえが、秀でてもいねえ」
まあそれは素人の俺でも分かる事だが。万が一って事があるからな。
「ここに武器は置いてないのか?」
「まあ防具屋だからな。でも嬢ちゃんの武器を新調するなら、隣の武器屋がオススメだ! 実は俺の兄貴の店でな。武器を見繕う目は確かだ」
「分かった」
防具屋を出て、隣の武器屋へ向かう。
「いらっしゃい! お! あんちゃんは最近噂の凄腕狩猟者だね」
は!? さっきの防具屋が、同じ事を言ってカウンターの中に立っているぞ。
「どうしたんだい? あんちゃん?」
まさか双子か。おっさんの双子とか、嬉しくも何ともないサプライズだな。
「隣の防具屋でこの店を勧められたんだが、こいつの新しい武器を見繕ってくれ。予算に関係なく、なるべくいいものを頼む」
「太っ腹なあんちゃんだね。自分の女に使う金は惜しまないってか?」
オリービアは両手で頬を押さえて、”自分の女”という言葉に浸っている。
やっぱり連れて行くの止めようかな。
武器屋はオリービアの腕を触ったり、片足で立たせて体幹を見たりと、なかなか本格的な事をしている。
「こいつがオススメだな」
武器屋が出してきたのはレイピアだったが、僅かに灰色がかった光沢のものだった。
「変わった見た目だな?」
「こいつはリトグリフって金属で出来ていてな。神鉄を除けば一番希少で硬く、軽い金属なんだ」
また神鉄か・・・。
そういえば、俺の剣とオリービアの鎧ドレスが、神鉄製という事には気づいてないようだが。
おいそれと、見かけると思っていないのだろうか。
「嬢ちゃんは体幹と瞬発力はあるみたいだが、単純に筋力不足で普通の剣は満足に振れねえ。だから基本が突く動作の、レイピアがオススメなのさ。それにうちにある武器で、これ以上の品はねえ!」
ふざけてるようで、真面目に考えているのだな。
「それを貰おう」
「毎度! 金貨30枚だ!」
は!?
「いくらだ?」
「ん? 金貨30枚だ!」
気まずい沈黙が流れる。
「おい・・・これは妥当な値段なのか?」
「私も本で見た事がありますが、リトグリフは希少金属なのは本当ですし、正確な相場は分かりませんが・・・むしろ安い方かと」
「その通りだ!」
昨日のメガディパーグの売値が、ごっそり持っていかれるぞ。
だいたいオリービアにこれを買う価値はあるのか?
「あの・・・ルシファー様。私は戦闘では役に立っていません。こんな高価な物を買う必要は・・・」
「少しでも戦力になる可能性があるなら、買うべきだろう」
若干、かなり、とても後悔しながら、金貨30枚をカウンターに置いた。
予算は気にするなって言ってしまったからな。今更買わないとは言えない雰囲気だ。
まあ革袋も重くなってたしな。
ちょうど小銭を減らす、良い機会になったと思えばいい・・・。
・・・俺にも見栄というのがあったとはな。
「嬢ちゃん、良い男を捕まえたね~」
「はい」
”はい”じゃないだろ・・・。
「まいどあり~」
上機嫌で手を振る、武器屋に殺意が芽生える。
「あの・・・ルシファー様、本当にありがとうございます」
「気にするな。いつまでも足手まといでは困るからな」
「はい! 必ず強くなります」
「せめて自分の身は、自分で守れる位になることだ」
「はい!」
「狩猟組合に行くぞ」
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「稼ぐぞ・・・」
「はい・・・」
失ったものは取り戻す。
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