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4章 新たな依頼そして黒き獣
4.3 街を出れずに依頼を受ける話
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稼ごうと息巻いて狩猟組合に着いたのはいいが、嫌な奴がいたもんだな。
騎馬騎士隊の隊長が不気味に笑いながら、入口とカウンターの前に仁王立ちしている。
迷惑極まりないので、交わしてカウンターに行こうとしたが、どこまでも進路を塞いでくる始末だ。
ついに目の前で、睨み合う形になってしまう。
隊長が何か言おうとした瞬間、俺の方が先に言葉を発した。
「慎重に言葉を選ぶ事だな。今の俺には、お前に使う時間はもう無い。だから不快な事を言うようだったら、直ぐに黙らせる」
「お前は謝罪金と、死んだ騎馬騎士隊員への見舞金して、俺にメガディパーグの売値をそのまま渡・・・」
隊長が話している途中だが、言いたい事は概ね分かったので、方手の掌を上にして持ちあげる動作を行う。
隊長は大の字になって背中から天井に張り付き、口も開けないようにしたので、そのまま声も出せず悶えている。
こうならない為にも、俺は忠告したのだがな。
その光景を目の当たりにした狩猟者のパーティー達は、イスから立ち上がったり、腰が抜けて座り込んだりと、それぞれに驚いている。
やはり力を使う度に、強さと精度、使い方がうまくなっているようだ。
もしこの力に限界があるのであれば、目安が無い分調べるのに一苦労だろう。
だからこそ、焦らずにじっくりと伸ばしていく必要がありそうだ。
隊長が天井へ磔にしたままになるイメージをして、力を固定した後に、受付横の掲示板に向かう。
オリービアには、依頼の中から最も高く売れる獣を、選別するように頼んだ。
同時に受付から出てきた受付嬢が、天井に張り付いている隊長に恐る恐る近づきながら、どうやって張り付いているのか確認しに来ている。
どうやっているのか分かる筈も無く、今度は俺に近づいて声をかけてきた。
「えっと・・・天井に・・・」
「気にするな」
「でも・・・」
「気にするな」
「承知しました・・・」
感情を失ったかのような受付嬢を残し、未だ悩んでいるオリービアの元へ行く。
「ルシファー様」
「何を悩んでいる?」
「これが1番、高額の報酬が手に入るのですが・・・」
渡された依頼書を見ると、報酬額が記載されている。
「珍しく報酬型なのですが・・・」
「対象を狩猟するか、該当地域から追い出せれば、金貨260枚!? 何故こんな高額なんだ?」
「それくらいでないと、受ける人がいないからです」
「詳しく説明してくれ」
「この依頼は対象の獣の正体が分かっていないようなのですが、特徴として人語を使う、黒き大きな四足獣とあります。これは魔獣の類でして、本来であれば通り名があるほどの狩猟者でなければ、達成できない難易度です。最低でもゴールドの6以上とありますし」
「だがこの報酬は魅力的だな・・・、とりあえずこれにするか」
「大丈夫でしょうか?」
「これで負ける程度では、この先やっていけないからな」
オリービアと依頼書を受付に持って行き、依頼を受注する。
「パーティー登録はいいのですか? そちらの女性はパーティーメンバーでは?」
「なんだそれは?」
「狩猟者証にパーティー登録出来ます。その登録が済めば、パーティーにしか受けられない狩猟依頼も、今後は受けられるようになりますよ」
「こいつは狩猟では役に立たない。一応形としてはパーティーとはしているが、現状登録までは必要ないと思っている」
「そうですか・・・承知いたしました」
「正直私は内縁の妻みたいなものですから、登録の必要はないですね」
「あら~、そういう関係でしたか。これは失礼しました」
否定するのも面倒だったので、会話を無視して狩猟者証を受け取り、組合の建物を後にする。
玄関から出て数歩、ある事を忘れているのに気がつく。
磔にしていた力を解除すると、建物の中から何かが落下する音がしたが、気にせず出発する事にする。
バビロアの街外れ、何時も空を飛ぶ場所に到着する。
依頼のあった場所はティグリスの大森林よりも更に奥地、山間部になっている場所だそうだ。
依頼の経緯としては、黒い四足獣に薬草を採取していた一団が襲われ、死人も怪我人もが出なかったが、死ぬ思いで帰って来たとのこと。
遭遇した際に暗くて見えなかったそうなので、正体が曖昧のようだが、それでも魔獣の類だと分かっているのは、逃げる際に”まて!”と人語で話かけられたからだそうだ。
昨日と同じように、オリービアをお姫様抱っこしてから、空に浮かび上がる。
「そういえば、鎧ドレスの出所は分からないままだな」
「そうですね。国宝級の物を、母がどこで手に入れたのか・・・」
「今はそれがどんなものかが、分かっただけでも良しとするか」
そんな雑談をしながら小一時間程飛び続け、オリービアに場所を確認してもらい、目的地付近まで飛翔する。
山間部手前の森の中にゆっくり降り立つと、魔獣の住処だからか、今までの森と違って木々が作りだす影が、森を不気味に演出している。
「ここからは森のようすを確認しながら、徒歩で慎重に向かうぞ」
「はい」
さて・・・魔獣とやらに会いに行こうじゃないか。
騎馬騎士隊の隊長が不気味に笑いながら、入口とカウンターの前に仁王立ちしている。
迷惑極まりないので、交わしてカウンターに行こうとしたが、どこまでも進路を塞いでくる始末だ。
ついに目の前で、睨み合う形になってしまう。
隊長が何か言おうとした瞬間、俺の方が先に言葉を発した。
「慎重に言葉を選ぶ事だな。今の俺には、お前に使う時間はもう無い。だから不快な事を言うようだったら、直ぐに黙らせる」
「お前は謝罪金と、死んだ騎馬騎士隊員への見舞金して、俺にメガディパーグの売値をそのまま渡・・・」
隊長が話している途中だが、言いたい事は概ね分かったので、方手の掌を上にして持ちあげる動作を行う。
隊長は大の字になって背中から天井に張り付き、口も開けないようにしたので、そのまま声も出せず悶えている。
こうならない為にも、俺は忠告したのだがな。
その光景を目の当たりにした狩猟者のパーティー達は、イスから立ち上がったり、腰が抜けて座り込んだりと、それぞれに驚いている。
やはり力を使う度に、強さと精度、使い方がうまくなっているようだ。
もしこの力に限界があるのであれば、目安が無い分調べるのに一苦労だろう。
だからこそ、焦らずにじっくりと伸ばしていく必要がありそうだ。
隊長が天井へ磔にしたままになるイメージをして、力を固定した後に、受付横の掲示板に向かう。
オリービアには、依頼の中から最も高く売れる獣を、選別するように頼んだ。
同時に受付から出てきた受付嬢が、天井に張り付いている隊長に恐る恐る近づきながら、どうやって張り付いているのか確認しに来ている。
どうやっているのか分かる筈も無く、今度は俺に近づいて声をかけてきた。
「えっと・・・天井に・・・」
「気にするな」
「でも・・・」
「気にするな」
「承知しました・・・」
感情を失ったかのような受付嬢を残し、未だ悩んでいるオリービアの元へ行く。
「ルシファー様」
「何を悩んでいる?」
「これが1番、高額の報酬が手に入るのですが・・・」
渡された依頼書を見ると、報酬額が記載されている。
「珍しく報酬型なのですが・・・」
「対象を狩猟するか、該当地域から追い出せれば、金貨260枚!? 何故こんな高額なんだ?」
「それくらいでないと、受ける人がいないからです」
「詳しく説明してくれ」
「この依頼は対象の獣の正体が分かっていないようなのですが、特徴として人語を使う、黒き大きな四足獣とあります。これは魔獣の類でして、本来であれば通り名があるほどの狩猟者でなければ、達成できない難易度です。最低でもゴールドの6以上とありますし」
「だがこの報酬は魅力的だな・・・、とりあえずこれにするか」
「大丈夫でしょうか?」
「これで負ける程度では、この先やっていけないからな」
オリービアと依頼書を受付に持って行き、依頼を受注する。
「パーティー登録はいいのですか? そちらの女性はパーティーメンバーでは?」
「なんだそれは?」
「狩猟者証にパーティー登録出来ます。その登録が済めば、パーティーにしか受けられない狩猟依頼も、今後は受けられるようになりますよ」
「こいつは狩猟では役に立たない。一応形としてはパーティーとはしているが、現状登録までは必要ないと思っている」
「そうですか・・・承知いたしました」
「正直私は内縁の妻みたいなものですから、登録の必要はないですね」
「あら~、そういう関係でしたか。これは失礼しました」
否定するのも面倒だったので、会話を無視して狩猟者証を受け取り、組合の建物を後にする。
玄関から出て数歩、ある事を忘れているのに気がつく。
磔にしていた力を解除すると、建物の中から何かが落下する音がしたが、気にせず出発する事にする。
バビロアの街外れ、何時も空を飛ぶ場所に到着する。
依頼のあった場所はティグリスの大森林よりも更に奥地、山間部になっている場所だそうだ。
依頼の経緯としては、黒い四足獣に薬草を採取していた一団が襲われ、死人も怪我人もが出なかったが、死ぬ思いで帰って来たとのこと。
遭遇した際に暗くて見えなかったそうなので、正体が曖昧のようだが、それでも魔獣の類だと分かっているのは、逃げる際に”まて!”と人語で話かけられたからだそうだ。
昨日と同じように、オリービアをお姫様抱っこしてから、空に浮かび上がる。
「そういえば、鎧ドレスの出所は分からないままだな」
「そうですね。国宝級の物を、母がどこで手に入れたのか・・・」
「今はそれがどんなものかが、分かっただけでも良しとするか」
そんな雑談をしながら小一時間程飛び続け、オリービアに場所を確認してもらい、目的地付近まで飛翔する。
山間部手前の森の中にゆっくり降り立つと、魔獣の住処だからか、今までの森と違って木々が作りだす影が、森を不気味に演出している。
「ここからは森のようすを確認しながら、徒歩で慎重に向かうぞ」
「はい」
さて・・・魔獣とやらに会いに行こうじゃないか。
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