異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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4章 新たな依頼そして黒き獣

4.8 また仲間が増えた話

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「さてと急いでバビロアに帰るか」

「それならばあるじよ、我の背に乗られよ」

あるじ? 俺のことか?」

「もちろんです。我が仕えると決めた方。あるじと呼ばせて頂きたく」

「そういう事なら構わないが。ところで乗れって言ったがいいのか?」

「バビロアは人間の街の事であると思いますが、急ぎの帰還との事なので」

「飛んでけばいいと思っていたのだが・・・そうか、ガルムの事を考えていなかったな」

「主は飛べるのか!?」

「まあな」

 ガルムを運ぶ事を全く考えていなかった。
 ガルムを浮かせてオリービアを担いで飛ぶのは、流石に今後の旅では効率が悪い。
 街を出るのならなおさらだ。これに旅の荷物も加わる事を考えると、ちゃんとした移動手段を考える必要があるな。

「今回は乗せてもらう事にしよう。こいつもいいか?」

「もちろん、奥方も一緒で構いませぬ」

「旦那様、乗せて頂きましょう」

 もはやいちいち反応するのも面倒になってきた。何を言おうと事実が変わるわけではないし、このまま放置しておく事にしよう。

 オリービアを恒例となりつつあるお姫様抱っこし、ガルムの背中に飛び乗る。
 そのままオリービアを自分の目の前に、横向きに座らせて、まるで馬に姫を乗せるかのようにした。

 幸せそうな顔をしているオリービアに、何と声をかけていいか分からない。

「僕を忘れないでほしいよ!」

「まだ居たのか・・・うさぎ」

 後ろ足で立ち上がり、存在感をアピールしているうさぎがいる。

「ひどいよ! 僕は約束を守ってもらってないよ!」

「薬草は使ってしまったからな。お前が食べない事で、誰かの命を助ける事に繋がったんだ。それで良かったじゃないか」

「全然良くないよ! 僕にお腹一杯ご飯くれる約束だよ!」

 約束の内容が変わっているじゃないか。

「それにここに残していってほしくないよ! ついて行くのはガルム殿だけなんだよ、だからあっちのお母さんの方は残るって事だよ。だから僕はいつか食べられるかもしれないよ! さっきもご飯扱いだったよ!」

 そこまで考えられるのなら、単純バカという訳ではなさそうだな。

「だから僕も連れてって欲しいよ! ご主人についていけば安心できるよ!」

「正直役に立ちそうにないが・・・」

「僕も戦えるよ! 絶対何かの役に立つよ!」

 愛玩動物以外の役割が思いつかないな。

「ルシファー様、あのですね・・・臆病でもうさぎは魔獣の一派。猛獣程度であれば倒せますし、他にも何か役に立つことがあるかもしれません」

「こいつ弱かっただろ・・・ガルムからは速攻で逃げてるし」

「ルシファー様が強過ぎなだけです。それにガルムさんは神獣ですよ、獣の頂点の種族ですし・・・」

 正直全く想像出来ないが、よく考えれば、最初は俺と戦おうとしていたよな。
 本来人間相手には、臆したりしないという事なのだろう。

「僕はこの森から出たことないよ。縄張りから出るのは不安だったけど、ずっと世界を見てみたいと思っていたよ。ご主人についていけば安心だし、僕を連れて行くのを約束の変りにして欲しいよ」

 変りにしては、随分要求水準が上がっている気がするが、約束を違えたのはこっちだからな。

「いいだろう。その変り、出来る事は何でもやってもらうからな」

「もちろんだよ。ご主人は優しいよ。奥さんもよろしくだよ」

「よろしくね、うさぎさん!」

 またオリービアが調子に乗るだろうが・・・。こいつら俺の反応を無視して、オリービアは俺の嫁という認識を通すつもりか。

「ご主人、名前を付けてほしいよ」

「無いのか?」

「僕は名前を持たないよ。でも僕も名前が欲しいよ!」

「じゃあ・・・ルルかな・・・」

 小学校で飼われていたうさぎの名前を、思わず口走ってしまったが。

「気に入ったよ! これから僕の名前はルルだよ!」

「かわいい名前ですね、流石ルシファー様! 素敵です!」

「”並外れた”という意味を持つ、古の言葉から取られたのか。やや名前負けしそうではあるが、良い名を主は付けられたかと」

 意外な高評価。

 なんかガルムに関しては、壮大な話をしているし。
 まあ評価上がっているから、このままにしておこう。

「流石ガルム。神狼族なだけはあるな」

「お褒めの言葉、ありがたき幸せ」

「・・・さあ、話していてもしょうがない。行くとするか」

「我の首周りの毛を、手綱代わりに使われよ」

 オリービアを挟むように毛を掴み、乗馬の状態を見よう見まねでやってみる。

「お前も掴まれ」

「はい!」

 俺にじゃないが・・・、寄りかかって腰に手をまわして、満足そうな顔をするなよ。

「ルル、お前はついて来れるのか?」

「お任せあれだよ。ご主人」

 その言葉が発せられた後、ガルムは走りだす。

 急激な加速は、それが容易に普通の動物には出来ない事を想像させ、ガルムはその速度を維持したまま森林を縫うように駆ける。

 これはとんだ拾いものかもしれない。
 この速度なら、わざわざ飛んでいく必要がないからな。
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