異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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4章 新たな依頼そして黒き獣

4.9 街に帰ったらランクアップした話

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 あっという間にティグリスの大森林を抜け、バビロアに続く街道へと出る。

 街道から少し離れ、往来するまばらな人や荷馬車を驚かせないようにするが、それでもガルムが駆けていれば、嫌でも人目も引くというものだ。

 それにしてもガルムは凄いな。全く揺れを感じない。
 まるで電車に乗るのと同じような感覚で、上下の動きが無いから体に負担がかからないし、速度の緩急も毛を掴んでいればなんとかなるようにしてくれている。

 問題は風だが、それはサイコキネシス<念動力>で周囲に見えない壁を張り、防ぐ事が出来た。

 それにしても、例えた電車よりも圧倒的に速く感じるが・・・あ!

「ルル!」

「そうしたんだよ? ご主人?」

 え~・・・お前ついて来れてるのかよ。
 うさぎ特有の走り方で、信じられない速度でお尻が振られているけど、何てことないって顔をしている。

「主よ、ルルがついて来れると思われる速度で走っている。ご心配される必要はないかと」

「ご主人、僕の心配をしてくれたよ!」

「まあ・・・それはそうなんだが・・・」

 こうやって見ると、ルルに乗るのは無理そうだな。
 うさぎの体の構造上、シーソーのように上半身と下半身が上下に激しく動くからな。

 そういえば妙に静かだと思ったら、オリービアは幸せそうな顔をしながら、いつの間にか寝息を立てている。
 意外に神経が図太いのか、それとも電車の中で寝るのと同じ感覚なのだろうか。

 どちらにしろ、落ちないようにしなくては。
 拾いに行くのも、怪我をされるのも面倒だからな。

 こいつと出会って俺は変わったのだろうか。
 変わったのか、1人でいる事の難しさを知っただけなのかは分からないが、この世界を旅する間、神の言う通り、俺は人を信じられるようになるのだろうか。



 考えを巡らせていると、俺が飛ぶよりも早くバビロアが見えてくる。

「主よ、到着だ」

 日は傾いているが、まだ赤くはなっていない。こんなに早くバビロアに着くとはな。

「起きろ、着いたぞ」

「ふえ!? すいません。寝てしまいました」

「お前なりに頑張った1日だったからな。気にするな」

「えへへ」

 思わず頭をなでてしまったが、そのせいでオリービアの変な声を聞いてしまった。

 街の入り口でガルムから2人して飛び降り、街の中に向かって全員で歩きだす。

 ガルムとルルに、何があっても街の人に危害を加えないと約束させ、また嫌な凱旋状態が始まる。

 美少女オリービア、神獣ガルム、魔獣ルル、黒衣とマスクの男。
 こんな奴等が、街を堂々と歩いていたらどうなると思う? そう・・・嫌でも人が集まってくるというものだ。

「魔獣うさぎよ! あんなに可愛いのに強いんでしょ? そのモフモフ触らせて~」

「あの黒い獣はなんだ!? 凄い威圧感だ。魔獣じゃないんじゃないか?」

「またてめぇか! マスク野郎! その子を寄こせって言ってるだろ!」

 また1人、聞き覚えのある声が混じっているな。別にオリービア本人が良いと言えば、連れてって貰って構わないのだが。

 凱旋の中狩猟組合の建物に向かい、受付嬢に狩猟完了報告をする。

「神狼族・・・、神獣を負かして仲間にしたから、依頼内容達成ですか? そんな話を信用しろと?」

「本当の話なんだが」

「破竹の勢いで名声を得ているルシファー様でも、そんな話信じられるわけが・・・」

 狩猟組合の受付嬢は、もはや怒っているような感じすらする。
 事実をありのままに話して、この対応をされるとはな。

「主よ。まだ時間はかかりそうか?」

「まだだ・・・ガルム。こいつが信じてくれなくてな」

 ガルムが扉から顔だけ入れて、意図せず牙を見せつけて話しかけてくる。
 それを見た人は受付嬢も含めて、建物内にいた者全員が立ち上がり、後ずさりしたり、腰が抜けて倒れたりしている。

「神狼族のガルム様ですね! すぐに手続きをさせて頂きますので、お待ち頂きたいでございましゅ!」

 もはや噛んでいる事すら気にしていない、この受付嬢の慌てぶりは、正直面白い。

「あまり主の時間を使うな。我も待っている間、人から見られていて不快なのだ」

「ひゃい!」

 今のは”はい”でいいのだろうか。
 それを聞いたガルムは、扉から首を引っ込めたから多分あってるのだろう。

 ガルムのおかげで話が進んだな。建物に入れないからと外で待たせずに、初めから見せれば良かったのか。

 慌てて奥に引っ込んだ受付嬢が、急いで革袋を持って帰ってきた。・・・こんなに早く手続き出来たのかよ。

「こちらが今回の報酬、金貨260枚になります。お確かめ下さい!」

「それは・・・まあ面倒だからいいさ。早く去らないと、あんたが過呼吸になりそうだ」

「ありがとうございます! では狩猟者証に今回の依頼達成を記録します!」

 もはや別人かと思うほどになっている受付嬢に狩猟者証を渡し、魔法陣に入れると光りだして今回の依頼達成が記録される。

 だが今回は今までと違い、記録されるだけでなく狩猟者証の色が白金プラチナに変わる。

 これは・・・最上級のプラチナランクになったという事か。
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