異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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5章 発明士との出会いそして旅へ

5.3 一緒に発明品を納品しに行く事になった話

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 サラーにルルの走り方を見せ、荷馬車屋で言われた問題点を伝える。

 何やらぶつぶつと呟き始めるサラーは、その後工房に戻り、またあの体制で設計図を描き始めた。
 それは驚異的な集中力で、これを見ると、レオハルドとやらが弟子にしたのも、素人ながら頷けるというものだ。

「出来ましたです!」

「随分早いな」

「オートボウガンと比べれば、仕組みは非常に簡単なのです」

 渡された設計図を見ると、ルルと荷車を繋ぐ部分が上下にスライドするようになっていて、上下の動きを吸収するようになっている。
 さらに、うさぎ独特の緩急の付いた走りを一定の力に調整するため、ルルと荷馬車を繋げている棒の中にスプリングが入っている。
 これで強く引くとスプリングが伸び、弱くなると縮んむことによって、スピードの緩急がダイレクトに伝わらないようになっている。

 これならば、問題なさそうだな。

「どうです?」

「これでお願いするよ。いくら払えばいいのかな?」

「先ほどのオートボウガンのお礼です。お代は頂かないのです」

「そうか」

 流石に子供の言う事だから、これは素直なお礼なのだろうな。
 俺の人間不信も、子供相手となるとあまり発揮されないようだ。まあこの世界に来てから、連続で強烈なやつに会っていたのもあるかもしれないが。

 部品を一覧として書き出してもらい、今回は外でしか組み上げられない大きさなので、外に出てから寸法も確認して創造を開始する。

「おにいちゃんは本当に凄いです!」

「これ程の力を持つ方を主に持ち、我は誇りに思う」

「ご主人って、本当に凄いよ」

 絶賛の嵐である。

「妻として誇りに思います!」

 勘違いの嵐である。

「この力は何なのです? これが使えれば、あたしも発明士として一人前になれるです」

 サラーがパーツを確認しながら聞いてくる。

「この力を手に入れるには、君には耐えられない事を経験するしかないな」

「大変そうです。あたしは体を動かす修行とかは、向いてないと思うです」

 何やら勘違いしているが、納得してくれたのならそれでいいか。

「重い・・・です」

 流石にサラーには、組み上げるには大き過ぎる部品が多い。もともと金も払っていないことだし、ここは手伝う事にするか。

 サラーには支持を出してもらいながら、サイコキネシス<念動力>を発動して、部品を組み上げていく。

「おにいちゃん・・・なんでもありです」

「人智を超えた領域の方! 偉大な御方!」

「ご主人は凄すぎるよ! もう褒め言葉が思いつかないよ!」

「夜を共にするベッドも付けましょう!」

 呆れと絶賛の後に続く、個人的願望。

 しかしこれはいい練習になるな。同時に複数浮かせて、それを空中で組み合わせてを、同時に行う必要がある。

 この世界に転生した頃は、強くイメージしてメガネパルを止めるのがやっとだったが、ここまで複雑な事が出来るまでになっている。

 やはり俺に与えられた力は、積極的に使っていかないと成長しないという事か。

 完成した荷馬車を、とりあえずルルに取り付けて走らせたが、オリービアにも好評な乗り心地になっていた。

 サラーのお陰で、良い物を手に入れたもんだ。

 数日かかる事を覚悟でここに来たが、まさか今日中に出来るとは思わなかった。そうは言ってももう午後半ばだが。
 これから出発しても、食料を購入してから街を出たのでは、直ぐに野営をしないといけなくなるな。宿屋は引き払ってしまったし。

「お願いがあるのです」

「どうした?」

「オートボーガンを依頼人である、バビロアの大商人に渡したいのです。だけど私は移動手段がないです」

「今回の荷馬車で、自分を送ってほしいってことか」

「はいです。その変り、今夜の宿としてここを利用してほしいです。食べ物もあるです」

 歳の割には取引が上手いな。なかなか商売っ気の才能もあるのだろうか。

「慣らし運転もしたいしな。その依頼受けよう」

「良かったです!」

 サラーは工房から荷物を取ってきて、荷馬車に乗り込み荷物を下す。

 ルルといううさぎが牽いているのに、荷馬車とはいったい・・・と思ったが、他に表現も思いつかないのでそのまま荷馬車でいいかとも思った。

 ルルは会話が出来るので手綱ではなく言葉で指示を出すが、操馬席は用意されているので、特等席として陣取ってみる。

 それを見たオリービアが俺の横に座ろうとしたが、後ろから乗り出してきたサラーに席を取られてしまい、何か言いたそうな顔をしながら渋々後ろに座った。

 2人が乗り込んだ事を確認し、ルルに支持を出して歩く程度の速度で出発してもらう。

「おにいちゃんは旅に出てしまうです?」

「そうだが」

「あたしは考えたのです。あたしとおにいちゃんが一緒にいれば、これからも発明士が続けられるって」

「なんですって!?」

 オリービアが顔を出して、般若の如く顔をしている。

「あたしは思ったのです。あたしとおにいちゃんの力が合わされば、もっといろんな物が作れるのです」

「一緒にいるというのは結婚ですか? そんな理由でするものじゃないすよ! 愛し合った者同士がすることです!」

「お姉ちゃんは何を言ってるです? 結婚のことじゃないです。一緒に工房に住んで、発明をしようと言ってるです」

「それはもう、ほとんど結婚じゃないですか!」

「だから違うです。おにいちゃんに一緒に居て欲しいと言ってるだけです!」

 なんだこの女の戦い。サラーがオリービアを勘違いさせているのか、オリービアがサラーの言葉を勘違いしにいってるのか、分からなくなってくるな。

「だいたいあなたいくつですか? 子供は結婚できないですよ!」

「あたしは11歳です。だから結婚の話はしてないです!」

 そういえばこの世界って、15歳で結婚出来るんだったか。
 現時点で俺とオリービアって結婚出来るから、嫁の地位を露骨に狙ってたわけだし。

「そもそもご両親が、年の近い男性との同居は許さないのでは?」

「あたしは孤児です。自分の親を知らないまま、バビロアの孤児院の前に捨てられてい子供です」

 図らずとも地雷を踏んでしまったオリービアは、言葉をなくしてしまっている。

「ごめんなさい・・・」

「気にしないで下さいです」

「それが何で、レオハルドの工房で一番弟子になるんだ?」

「ルシファー様・・・」

 空気を読めと言わんばかりに、呆れた目を向けてくるオリービア。俺にそんな事を求めても、人との関わりの経験がない俺には、無駄なのだがな。

「別に大丈夫です。寧ろお話を聞いて欲しいです」
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