異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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5章 発明士との出会いそして旅へ

5.6 商人へ制裁をした話

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「このオートボウガンの希少性を保つためだ・・・。当然だが、これは私の商会でしか提供されないから高く売れるのだ」

「俺とサラーがいなくなれば、それが他の人間に渡らなくなるといったところか」

「そうだ・・・どっちにしろサラーには製造は出来ないからな。お前が断れば、その娘にもはや価値は無いのだ」

「サラーの事はどこで聞いた? レオハルドは隠していたと思うが」

「スランプからの復帰があまりにも急だったからな。発明品を納品に来た時、ワインを3杯程飲ませたら、嬉しそうに喋りだしたよ。いい拾い物をしたとな!」

「拾い物・・・です?」

 サラーはショックを受けているな。少しは子供に気を使えばいいものを。

「だからレオハルドはもういらんと思ったのだ。直接サラーにやらせればいいからな」

「いらないだと?」

「ああそうだ! しかし誤算だったよ。レオハルドが、サラーに製造の技術は教えていなかったとは。使いの者に、サラーへ直接依頼をさせに行った際、部品の製造が出来ないと言われたと、報告を受けた時は焦ったよ」

「そういう事か」

 後ろに隠れるサラーの頭を撫でる。震えが止まり、少しだけ顔を覗かせる。

 次の俺の質問の答えを、この子に聞かせるべきか・・・だが知らないわけにはいかないだろうな。

「レオハルドを殺したのか?」

「え・・・?」

 消え入りそうなサラーの声。

「流石に気がつくか」

「まあな。事故ではなく殺人だったとはな」

「このオートボウガンを依頼した時にな、弟子には武器を創らせないと言いよったのだ。挙句には、自分で創るとな。あんな天才崩れに出来るわけないだろ。しばらくしたら案の定、手付金を返し依頼を取り消そうとしてきたのだ」

「それで事故に見せかけ殺したという事か」

「そうだ! その娘だけがいれば事足りると思ったからな。製造が出来ない問題が、後に浮き彫りになるが・・・」

「そこで俺の噂を聞いた訳か」

「そうだ。見たこともない力で、無から有を生み出す黒衣の男。これは天啓を得たも同然だったさ」

 オリービアは俺の隣に並び、顔を出したサラーを守る為に、自分の身を重ねている。

「だが貴様が協力しない以上、他に道はあるまい。複製できるか分からないが、少なくともこれが手に入る手段は消しておかないとな」

「どこまでも腐っているな。金が手に入ればいいのか」

「ただの金ではない。巨万の富だ。今のこの国では、金があれば貴族位だって買える」

 その言葉に、自然と拳に力が込められる。

「どうされましたか! コジモ様!」

「おお、来てくれたか!」

 殴りかかろうと思った時、扉が勢いよく開かれた。警備兵が集結しており、これでは出られそうにない。

「こいつらに襲われた! 殺せ!」

 刺さった矢を指差し、コジモは今までで一番の大声を出す。

「覚悟しろ!」

 警備兵が入ってこようとした瞬間、扉に向かって手をかざす。

 扉のある壁いっぱいに見えない壁を展開する。見えない壁に阻まれた警備兵は動揺し、空間を叩く動作を繰り返している。

 洞窟で刀を空中に固定したように、それが空間に残り続けるようイメージして、オリービアを見る。

「オリービア、ありえないとは思うが、万が一通り抜けた時はサラーを守れ」

「はい、ルシファー様」

「念の為に言っておくが、倒せとは言っていない。自分とサラーの身を守れと言っている」

「はい! あなたの子を産む身ですから」

「何の事だ?」

 この状況下でも、そういうのを放りこんでくる余裕がある事には素直に凄いと思う。いろいろ通り越して尊敬してきた。

「さて、コジモ。お前にはどういう制裁をしようか」

「お・・・お前、私に不用意に手を出してみろ! 憲兵に突き出して王都で裁判に!」

「それがどうした?」

「お! お前! ・・・ぐが!?」

 助走をつけて、コジモの顔面に蹴りをくらわせる。

 コジモを吹き飛ばし着地すると、足元にオートボウガンがあり、刀を抜いてパイロキネシス<発火力>で白熱化させ、切断力を上げた状態で粉々に切り裂く。

 さらに粉々になったオートボウガンを、足で踏みつけて復元を不可能にする。

 納刀し、四つん這いで鼻血を出すコジモの後頭部を踏みつける。

「貴様・・・裁判が怖くないのか・・・」

「その裁判とやらが、お前で無く俺だけを裁くのであれば、この国の司法は本当に死んでいる。そんなものに従うつもりもないし、憲兵に大人しく逮捕されるつもりもないからな。最悪の場合、全員殺す・・・」

「ひぃ・・・」

「さあ、立てよ。お前は俺達を殺そうとしたのだから、俺がお前を殺そうとしても問題なだろ? それとも自分は特別なのか?」

 襟を掴み強引に立たせ、握られた拳が振りかぶるのを、ゆっくりと見せつける。

「や・・・やめ! ぐえ!?」

 強烈なボディーブロー。

「か・・・金なら・・・ぐあ!?」

 顔面の正中線を殴りつけると、鼻の形が変形し、歯が数本飛んでいった。

「どうした? お前の好きな金の力で、俺を止めてみろ」

「ぎゃ・・ぎゃめて・・・」

「聞こえないな」

 後は思うがまま殴りつけるだけだ。肋骨も数本折れているだろうし、歯もほとんどなくなりっていく。

 サラーは祈るような顔で俺を見ている。オリービアは振り返りもせず、警備兵に向けてレイピアを構えている。

 いくつかめの殴打で、コジモは俺の期待する言葉を発した。

「もう・・・しわけ・・ありません・・・でした」

「何がだ?」

「レオハルドを・・・殺して・・・」

「違うな」

 床にたたきつけて、更に倒れているコジモの腹に蹴りを入れる。

「ぐ・・・が・・・君等を殺そうとして・・・利用・・・しようとして・・・もうしわけ・・・ありま・・せんでした」

「ではこれで終わりだな」

 コジモの目を刀で横一直線に斬り、光の世界を奪う。

「な・・んで・・・あやま・・ただろうが」

「許すなんて言ってないが」

「ぐううう・・・」

「これでお前は富を見る事も、金貨の光ではない本当の世界の光を見る事も出来なくなった。それがお前の罰だ」

「こんなことをして・・・ただですむと・・・けんぺいに・・・」

「関係ないね」

 気が済み興味がなくなったので、背を向けてオリービアの横まで行く。

「おにいちゃん・・・」

「これが俺だ。もう近付かない方がいい」

「そんなこと・・・」

 見えない壁の前で暴れている警備兵。

「ルシファー様、どうします?」

「任せろ」

 力を解除したのと同時に、手をかざして全ての警備兵達を吹き飛ばす。

 廊下の壁に全身を叩きつけられた警備兵達は、白目を向いて全員気絶した。

「ルシファー様には、多勢に無勢という言葉が意味をなさないですね。好きです」

 剣をしまいながら、顔を赤らめて褒めた振りをして告白してくるオリービア。お前はピンチをチャンスにの言葉がちょうどいいかもな。

 ここは”素敵です”を、間違えて好きですと言ったと思っておこう。

「お前は・・・許さん・・・サラーも渡さない・・・憲兵に訴えてやる!」

 部屋を出ようとしたところ、その体でよくそんな大声が出せたものだと思うほどの声で、コジモが脅しをかけてくる。

「まだそんな事が言えるとはな」

「へへへは! もう目も見えないのだ。・・・もう怖いものなどない。止めたければ・・・私を殺せ!」

「そうだな」

 抜刀をしようとすると、サラーが柄を掴んでそれを止める。

「あたしのせいで、人を殺さないで下さいです」

 今度は柄を離して、抜刀しようとした手を両手で優しく包んでくる。

 そこにオリービアも手を添え、諭した目でこちらを見てくる。

 俺は刀から手を離し、コジモに背を向けて歩き出した。
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