異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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6章 脅威と勧誘そして次の街へ

6.7 使いと闘った話

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「お待ちください。私はあなたを、お連れする為に参ったのです。戦うつもりはないのですが」

「お前の創造主が気になるのは確かだが、今分かった事がある」

「何でしょうか?」

「どんな理由があっても、1つの種を滅ぼす命とやらを出した創造主も、それをただ命じられたまま遂行する天使も、まともじゃないって事だ」

 神は慈悲深く、そして偉大な存在と書かれていた気がする。神獣は神に近い存在の筈なのに、それを滅ぼそうとするのはおかしいと思った。
 こいつに着いて行って、創造主と呼ばれる存在に会うのは、正体が分かるまで止めだ。
 俺の力が通じない天使を創造出来るのであれば、創造主にも力が通じないのは想像に難くない。

 こいつを倒して、無理やり喋らせる方が良いだろうな。

「それは私の創造主を侮辱したと、解釈しても?」

「その通りだ」

「創造主への侮辱・・・手荒な真似はしたくなかったのですが」
 
 良い感じに挑発に乗ってきたな。

「やってみろ」

 手をかざしてパイロキネシス<発火力>を発動し、ガブリエルの周りの空気を直接燃焼させる。その炎はガブリエルを包み込んで覆い隠す。

「どうしても、戦わなければなりませんか?」

 炎が消えた後に、何事もなかったようにガブリエルが現れる。馬鹿な・・・。今の俺に出せる最大の火力だぞ。

「何故本気にならないのです?」

「どういう意味だ」

 安い挑発かとも思ったが、とぼけた顔を見る限り本気で言っていそうだ。

「私の矢を弾いたその剣、神鉄でできているのでは?」

「そうだが」

「神鉄を作れるのなら、私など相手にならぬ程の力のはずなのですが」

「これは貰い物でね」

「どうやら貴方のお力は、発展途上のようですね」

 ガブリエルは再び羽ばたいて飛び、空から3本の矢を連射してくる。
 全てを刀で弾いた後、矢を浮かび上がらせてガブリエルに飛ばすが、簡単にかわされてしまう。
 自分も浮かび上がって、ガブリエルと同じ高度まで行き、マスク越しに睨みつける。

「空は飛べますか。それに物体に作用する力も使えると。本当に創造主と同じ力が使えるのですね」

「余裕かましてる場合か?」

 手をかざし、ガブリエルの動きを封じようと試みるが。

「残念ながら通用しませんよ。あなたの力は本当に発展途上。ここは大人しく、ご同行頂けませんか?」

「・・・論外だな」

 こいつで試してやる。サラーと創った、剣の力。

「今はまだ、2本ってところか・・・」

「2本? 何のことでしょうか?」

 サイコキネシス<念動力>を発動すると、背中の剣が2本鞘から抜けて、空中でガブリエルに刃を向ける。

「これは!」

「炎も、雷も、念力も通用しないのなら、直接首を飛ばすまでだ。行け!」

 剣をガブリエルに飛ばし、旋回してかわされた後に、自ら直接斬りかかる。その刃は弓自体で防がれてしまうが、死角から剣が飛んできてガブリエルの脇腹に直撃する。
 だが白い宗教服は、リトグラフの剣では貫けず、ほぼ打撃となってしまう。
 それでも少しはダメージがあるようで、当たった部分を手で押さえながら、ガブリエルは距離を取ろうとするが、もう一本の剣が頭の後ろから迫る。
 気配を感じ取り、すんでのところでかわすが、顔に切り傷を作った後、剣が飛び去っていく。

「創造主に創造されたこの身に傷を! いくら創造主と並ぶ方でも許しません!」

 矢を大量に飛ばしてくるが、俺も力が増している分、空中で自由に動き回れるようになっている。
 時にはかわし、時には弾き、それと同時に剣を操りガブリエルに攻撃を加え続け、一進一退の攻防が続く。

「ルシファー様!」

「奥方よ、動かれるな。あれは我らでは及ばない領域だ」

「怖いよ! あいつ強すぎるよ!」

「私達にも何かできるはずです! 何かが・・・です!」

 人の領域も、神獣の領域も超えた戦いが続く中、徐々に変化が訪れ始める。

 俺が飛ばしている剣の軌道が鋭くなり、徐々に速度を増している。力を使えば使うほど、その力強さは増していき、集中力は必要なくなり、精度が上がっていくのを感じる。
 ガブリエルは徐々に、その体に傷を増やし始めていた。

「こんな事が・・・そのような暴力的な力の使い方。創造主は行った事がない!」

「その創造主がどんな奴か知らないが、一緒にされては困るな」

「正直あなたからは、創造主のような至高の気配を感じません。本当に創造主が求めている存在なのですか?」

「知らんな。もうお前に付き合うのも終わりだ・・・」

 刀と飛ばしている剣で止めを刺そうとしたその時、ガブリエルを衝撃波が襲った。

 これは・・・ガルムの技だ。

 怯んだガブリエルに今度は矢が飛んでくる。それはガブリエルのこめかみに当たり、首を傾けさせた。

 ガルム達の方を見ると、サラーがボウガンを引き延ばして、スナイピングをしたようだ。
 涼しい顔をしていたガブリエルが、一転して怒りを露にした表情に変わる。

「前世代の遺物である獣が、創造主に教授出来ない人間風情が、私に・・・! 許さん!」

 ガブリエルは今までで最も速く、4本の矢を同時につがえ、ガルムとサラーに引き絞る。
 その動作を止める暇すら無かったので、矢が放たれる前にガルムとサラーの前に移動した。

 オリービアはガブリエルの意図を察したのか、サラーの前に立ちふさがり守ろうとしているのが見える。

「毒に侵され朽ち果てろ!」

 放たれた4本の矢のうちガルムに向かっている2本を、飛ばしている剣で迎撃する。
 自分自身はサラーとオリービアに飛ばされた2本の内、1本は剣で弾いたが1本は左の太ももに刺さってしまった。

「ぐ!」

「ルシファー様!」

 オリービアの絶叫が響く。

 激痛と慌てた影響で、集中を欠いて体は落下を始める。

「何て事を!」

 ガブリエルが手を差し伸べ、急降下してくる。それを見計らって剣を飛ばすが、直前で気付かれて弓で弾かれてしまう。

 それが見えた後、何とか力を発動し、空中で静止する事には成功した。
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