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6章 脅威と勧誘そして次の街へ
6.10 急いでゴモラに向かった話
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「何で添い寝しちゃダメなんですか!?」
「今はおにいちゃんを安静にしておくです!」
半裸で添い寝をしようとするオリービアに、必死にしがみつき止めるサラー。
そのままオリービアと布団に入り、また暴走しないようにオリービアを抱きまくら代わりにする。
ルシファーと床を一緒にする事を諦めて。優しくサラーを抱きかかえて、眠りにつくオリービア。
箱座りで涎を垂らして寝るルル。そんなルルを呆れながら見るガルム。
未だ意識のないルシファー。
ガルムが星を見上げる中、静かに時間は過ぎていく。
夜が開け、ガルムが吠える声で一同は目を覚ます。
「ガルムさん! 何があったのですか!?」
「奥方、動かれるな! ネパルの大群が現れたのだ! ・・・何て恰好をしているのだ!?」
ガルムの前には、今にも突進してきそうな、数え切れないほどのネパルと、半裸のままオリービアがいる。
メガネパル程ではないが、馬と同じサイズのイノシシが構えているのは、なかなか恐ろしい光景である。
「ガルムさん!」
「心配されるな、奥方。この程度問題では無い。むしろ朝食が群れをなして、自分からやってきたのだ。殊勝な心構えに、感謝するところよ。後・・・服を着られた方が良いと思うが」
「僕も戦うよ! あと奥さんは、服を着た方がいいよ!」
オリービアはネパルの対処をガルムとルルに任せ、急いで服を着た後、サラーを起こして荷馬車に避難する。
「オートボウガンで援護するです」
「サラーちゃん。ごめんなさい・・・私は役立たずで」
「おねえちゃんは、自分にしか出来ない事を、してくれているです。後服を着て下さいです・・・」
その言葉を聞き、オリービアは少し気持ちが軽くなったようだ。
サラーは荷馬車から援護の準備をし、オリービアはルシファーに寄り添い身を呈しても守る覚悟を決める。
外ではガルムは唸り声をあげ、ルルは突進の構えをとった。
ネパルの群れの先頭が、痺れを切らし突進を始めると、群れはそれに続いてガルムとルルに迫る。
「言葉も使えず、実力差も分からぬ愚か者どもめ!」
「いくよ!」
「こぼれたのは任せるです!」
「みんな! 気を付けて!」
警戒はしたものの、その後行われたのは、戦いではなく虐殺であった。
ガルムは衝撃波でネパルの体を砕き、近づいたネパルは牙で噛み千切り、爪で切り裂いていく。
ルルは猫パンチならぬ、うさぎパンチを連続で繰り出し、ネパルの頭蓋を砕き、自らも突進して弾き飛ばしていく。
サラーはオートボウガンをスナイプモードにし、ガルムとルルから離れたネパルを射って仕留めていく。
オリービアはルシファーの手を握って赤くなり、こっそり服の匂いを嗅いで悶えたり、顔に頬ずりしたりと行動がエスカレートしていく。
正直サラーは気づいているが、止める余裕がないので無視をしているだけだ。
先程の、役に立てなくてごめんと謝罪されたのが、本当に悪いと思っているのか疑問に思ってしまう。
最後のネパルが倒れた後、ガルムが勝利の雄叫びを上げる。結局誰も怪我をすることなく終わった。
「やるではないか、うさぎ」
「僕だってやる時はやるよ! ご主人とガルム殿が強すぎて、出番がないだけだよ」
ガルムはネパルをお腹がいっぱいになるまで食べ、ルルは死体を集めながら文字通り道草を食べている。
サラーはバレルマガジンに矢を装填し、オリービアは満足げな顔で野営の道具を片付けていた。
「出発するよ!」
ガルムが先導し、ルルが荷馬車を牽き始め追従する。ここからは寝ずに走り続ける旅になる。
荷馬車の中では火を使えないので、サラダとパンと燻製肉での朝食を、オリービアが準備し、ルシファーには昨日のスープをオリービアは飲ませている。
「冷蔵庫に入っていましたから、冷たいかも知れませんが我慢して下さい」
献身的に世話をしている時と、迫っている時の行動が違いすぎ、困惑するサラーではあるが、天才なりに考えるのをやめる事にした。
ルルは速度を落とすことなく走り続け、途中の馬車すら追い越していくが、一行の食事の時だけは止まり、オリービアはルシファーのスープを毎回作って与え続けた。
それ以外は、ガルムとルルは走り続け、荷馬車の中でオリービアとサラーは目覚める。
「ガルムさんもルルさんも、大丈夫ですか?」
「奥方よ、我はこれしき問題ない」
「僕も大丈夫だよ! 魔獣はこれくらいじゃへこたれないよ!」
そうは言うものの心配したオリービアの判断で、朝食の為にも休憩を取る。
ルシファーは意識を失い続けており、高熱も続き呼吸も荒いままだが、衰弱が進んでいる気配は無い。
予断を許さないが、未だ耐えているルシファーを見て、一同は少しだけ安堵する。
後はひたすらこの繰り返しをし、走り続けて2日目の夜が訪れる。
ルシファーのタオルを交換し、オリービアはサラーと同じ布団で、不安を押し殺すように眠りについた。
翌朝。ガルムとルルの目に、日に照らされた建物が見え始める。
「見えたよ! 街が見えたよ!」
「奥方よ! まもなく到着ですぞ!」
ルルとガルムの呼びかけで、オリービアとサラーは目を覚まし、まだ日の光に目が慣れていない中、遠くに見える人工物を見ようとする。
視界がはっきりすると遠方には、周壁都市ゴモラがあった。
「今はおにいちゃんを安静にしておくです!」
半裸で添い寝をしようとするオリービアに、必死にしがみつき止めるサラー。
そのままオリービアと布団に入り、また暴走しないようにオリービアを抱きまくら代わりにする。
ルシファーと床を一緒にする事を諦めて。優しくサラーを抱きかかえて、眠りにつくオリービア。
箱座りで涎を垂らして寝るルル。そんなルルを呆れながら見るガルム。
未だ意識のないルシファー。
ガルムが星を見上げる中、静かに時間は過ぎていく。
夜が開け、ガルムが吠える声で一同は目を覚ます。
「ガルムさん! 何があったのですか!?」
「奥方、動かれるな! ネパルの大群が現れたのだ! ・・・何て恰好をしているのだ!?」
ガルムの前には、今にも突進してきそうな、数え切れないほどのネパルと、半裸のままオリービアがいる。
メガネパル程ではないが、馬と同じサイズのイノシシが構えているのは、なかなか恐ろしい光景である。
「ガルムさん!」
「心配されるな、奥方。この程度問題では無い。むしろ朝食が群れをなして、自分からやってきたのだ。殊勝な心構えに、感謝するところよ。後・・・服を着られた方が良いと思うが」
「僕も戦うよ! あと奥さんは、服を着た方がいいよ!」
オリービアはネパルの対処をガルムとルルに任せ、急いで服を着た後、サラーを起こして荷馬車に避難する。
「オートボウガンで援護するです」
「サラーちゃん。ごめんなさい・・・私は役立たずで」
「おねえちゃんは、自分にしか出来ない事を、してくれているです。後服を着て下さいです・・・」
その言葉を聞き、オリービアは少し気持ちが軽くなったようだ。
サラーは荷馬車から援護の準備をし、オリービアはルシファーに寄り添い身を呈しても守る覚悟を決める。
外ではガルムは唸り声をあげ、ルルは突進の構えをとった。
ネパルの群れの先頭が、痺れを切らし突進を始めると、群れはそれに続いてガルムとルルに迫る。
「言葉も使えず、実力差も分からぬ愚か者どもめ!」
「いくよ!」
「こぼれたのは任せるです!」
「みんな! 気を付けて!」
警戒はしたものの、その後行われたのは、戦いではなく虐殺であった。
ガルムは衝撃波でネパルの体を砕き、近づいたネパルは牙で噛み千切り、爪で切り裂いていく。
ルルは猫パンチならぬ、うさぎパンチを連続で繰り出し、ネパルの頭蓋を砕き、自らも突進して弾き飛ばしていく。
サラーはオートボウガンをスナイプモードにし、ガルムとルルから離れたネパルを射って仕留めていく。
オリービアはルシファーの手を握って赤くなり、こっそり服の匂いを嗅いで悶えたり、顔に頬ずりしたりと行動がエスカレートしていく。
正直サラーは気づいているが、止める余裕がないので無視をしているだけだ。
先程の、役に立てなくてごめんと謝罪されたのが、本当に悪いと思っているのか疑問に思ってしまう。
最後のネパルが倒れた後、ガルムが勝利の雄叫びを上げる。結局誰も怪我をすることなく終わった。
「やるではないか、うさぎ」
「僕だってやる時はやるよ! ご主人とガルム殿が強すぎて、出番がないだけだよ」
ガルムはネパルをお腹がいっぱいになるまで食べ、ルルは死体を集めながら文字通り道草を食べている。
サラーはバレルマガジンに矢を装填し、オリービアは満足げな顔で野営の道具を片付けていた。
「出発するよ!」
ガルムが先導し、ルルが荷馬車を牽き始め追従する。ここからは寝ずに走り続ける旅になる。
荷馬車の中では火を使えないので、サラダとパンと燻製肉での朝食を、オリービアが準備し、ルシファーには昨日のスープをオリービアは飲ませている。
「冷蔵庫に入っていましたから、冷たいかも知れませんが我慢して下さい」
献身的に世話をしている時と、迫っている時の行動が違いすぎ、困惑するサラーではあるが、天才なりに考えるのをやめる事にした。
ルルは速度を落とすことなく走り続け、途中の馬車すら追い越していくが、一行の食事の時だけは止まり、オリービアはルシファーのスープを毎回作って与え続けた。
それ以外は、ガルムとルルは走り続け、荷馬車の中でオリービアとサラーは目覚める。
「ガルムさんもルルさんも、大丈夫ですか?」
「奥方よ、我はこれしき問題ない」
「僕も大丈夫だよ! 魔獣はこれくらいじゃへこたれないよ!」
そうは言うものの心配したオリービアの判断で、朝食の為にも休憩を取る。
ルシファーは意識を失い続けており、高熱も続き呼吸も荒いままだが、衰弱が進んでいる気配は無い。
予断を許さないが、未だ耐えているルシファーを見て、一同は少しだけ安堵する。
後はひたすらこの繰り返しをし、走り続けて2日目の夜が訪れる。
ルシファーのタオルを交換し、オリービアはサラーと同じ布団で、不安を押し殺すように眠りについた。
翌朝。ガルムとルルの目に、日に照らされた建物が見え始める。
「見えたよ! 街が見えたよ!」
「奥方よ! まもなく到着ですぞ!」
ルルとガルムの呼びかけで、オリービアとサラーは目を覚まし、まだ日の光に目が慣れていない中、遠くに見える人工物を見ようとする。
視界がはっきりすると遠方には、周壁都市ゴモラがあった。
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