異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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7章 復活と使者そして仲間

7.1 検問を通過する話

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 ゴモラは周壁都市しゅうへきとしというだけあり、入るには街道に隣接されている門を通る必要がある。
 オリービアはルルに支持を出し、門を通過する際に行われている検問の列の最後尾に付けた。

 魔獣うさぎと、神獣とまでは分からなくとも圧倒的な雰囲気を持つガルムに、列に並ぶ全ての人間と、街道を行き来する者が、振り返ったり立ち止まったりと、それぞれの反応をしている。

 馬も家畜も、人間には分からない感覚を駆使し、ガルムから逃れようと暴れている。

「我が居ると、騒ぎになりそうであるな。奥方よ、どうされるか?」

「検問は一緒に通過する必要があります。すいませんが、ガルムさんも周りの方も我慢してもらうしかないですね・・・」

「・・・致し方ないか」

「思ったより早く進んでるよ! これならすぐだよ!」

 表面上平和なこの国では、検問もやや形骸化しているようだ。
 検問を担当する国家憲兵は、大雑把に持ち物を検査しては適当に中へ通している。

 オリービアは前を覗き込み、憲兵の検問が適当に行われている事にやや安堵した。

「どうしたです? おねえちゃん」

 蛇腹の扉を少し開けて、サラーが顔だけを出してくる。

「ゴラムまでルシファー様の事が伝わっているとは思いませんが、余計な事を聞かれたくない以上、あの適当さは好都合だと思いまして」

「なるほどです。でも止められても、ガルムさんが居るから安心です! きっと通れるです!」

「そうすると、私達の行動が広く知れ渡ってしまうかもしれません。出来れば穏便に通りたいのだけど」

「そうだったです・・・ごめんなさいです」

「謝る必要なんかないですよ」

 オリービアはサラーの頭を優しくなでる。まるで母親にされた時のように、サラーは恥ずかしがりながらも、その時間を堪能した。

「でも、誘拐疑惑がかけられている以上、サラーちゃんは中に隠れてて下さい」

「分かったです!」

 名残惜しそうに中に戻るサラー。列はゆっくりとだが、確実に進んでいった。



 列は順調に進み、やがて一行の番になる。

「ここで止まれ!」

 城壁内で一行は止まるが、問題があると前後の格子を下されてしまい、捕獲される事を察したガルムがやや警戒を強める。

「通行証は?」

 検問を担当する憲兵達は、ガルムとルルに警戒しながらも、オリービアをリーダーと判断し、近寄って声をかけた。

「ありませんが、私達は狩猟者のパーティーでヴァリオスハンターズです。これがリーダーの狩猟者証です」

「プラチナだと!?」

 プラチナを見せられた憲兵は、それが偽造かどうかを確認するために覗きこんでいる。

「リーダーの狩猟者証という事は、貴様のではないのだな?」

「ええ・・・私のはこちらです」

 13と書かれた、ゴールドの狩猟者証を提示する。

「・・・お前も高ランクのようだが。とてもそうは見えないな。これに狩猟者証と手を置いてみろ」

 オリービアは付きだされた、魔法陣が描かれた石板のくぼみに狩猟者証をはめ、隣に手を置く。

 魔法陣が輝いてエンブレムが空中に描かれた後、ゆっくりと消えていった。

「偽造ではないか・・・」

 憲兵はあまり納得がいかないようすだが、とりあえず引き下がる事にしたようだ。

「プラチナの狩猟者はどこだ?」

「後ろで寝ています。・・・病気なんです」

 オリービアは咄嗟に嘘をつく。毒に侵されているなどと言っては、余計な詮索を受けると思ったからだ。

「何の病気だ?」

「それも調べる為に街に来たんです」

 その言葉を聞き、憲兵は何かを思いついたような笑みを浮かべる。

「それは通す訳にいかないな。何の病気か分からないとなると、危なくてゴモラには入れられん」

「そんな・・・人に移るようなものではなく」

「ん? 本当は何の病気か分かっているのではないか?」

「それは・・・」

 自分の発言が裏目に出てしまった事を後悔するオリービア。
 ガルムは一旦は、ようす見として大人しくしているが、一刻を争う状況で話が進まない事に、苛立ちを覚え始めている。
 ルルですら、憲兵を睨みつけている始末だ。

 そんな状況に気づくようすもない憲兵は、いよいよ自分の欲を見せてくる。

「だがまあ・・・プラチナとゴールドの13が居るパーティーだから、信用はしよう。だが、このまま通して問題が起きたら、俺の責任問題になっちまう。そうなると俺にも保険が欲しいんだがね?」

「問題なんて起こしません。通して下さい!」

「そうはいかないな~? ここまで言ってもまだ分からないのか?」

「あなたのような人の考えなど分かりませんね」

「・・・通行料を多めに寄こせって言ってんだよ」

「私達のリーダーはプラチナです! 通行量は免除の筈です!」

 オリービアはたまりかねて、感情が表に出始めてしまう。

「それも本物のプラチナとは限らないだろ?」

「本物です! こうなったら・・・その石板で鑑定を」

「本人は病気なんだろ? そんなのに近づきたくないな!」

 ガルムがついに限界を迎えたのか、低いうなり声を上げながら憲兵に近づく。

「ガルムさん! 待って下さい!」

 オリービアの声に反応し、睨みつけたままその場で止まるガルム。
 ガルムの圧倒的威圧感に、震えが隠せない憲兵。

「脅しても無駄だ! そ・・そんな事をしたら全員逮捕だ!」

「そんな事はしませんよ。私達はここを通りたいだけです」

「・・・もしかして金がないのか? だったらあんたのご奉仕でもいいんだがな?」

 オリービアが最も嫌う目で、体を見てくる憲兵。

「・・・これでいいですか?」

 それを見たオリービアは、検問の壁際に金貨を2枚投げつける。冷たい軽蔑の目で、憲兵を見ながら。

「貴様・・・」

「あれが欲しいのでしょう? 拾えばいいじゃないですか」

「バカにしているのか? お前が拾いに・・・」

「これ以上の愚行は見逃さぬぞ?」

 ガルムが間に入り憲兵を制す。

「喋った・・・やっぱり魔獣!?」

「魔獣か・・・我はそれで構わんが。貴様に与えられた選択肢は2つ。金を手にし我らを通すか、ここでお互いが納得するまで戦ってみるかだ」

「く・・・。道を開けろ! こいつ等を通せ!」

 道を塞いでいた憲兵がどき、ルルはゆっくりとゴモラに入って行った。

 少し離れた時にガルムが振り返ると、そこには金貨の土を拭いながら、自分達を睨みつける憲兵が見えた。

「奥方、すまない」

「いえ、助かりました」

「泣いているのか?」

「私が嫌いな目を見てしまい、つい金貨を投げてしまいました。あれはルシファー様から頂いた、大切な物だったのに」

「いた仕方ないと思うが」

 サラーは憲兵が居なくなったのを確認し、オリービアの隣に座って甘えるように抱きつく。

「おねえちゃん・・・」

「大丈夫ですよ」

 サラーは笑顔を向け、それにオリービアも笑顔で答える。

「さあ、ゴモラの狩猟組合で神緑の森の情報収集です!」

 ルルはその言葉を聞き、迷惑がかからない程度に荷馬車の速度を上げた。
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