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11章 仲間と帰還そして帰還
11.15 天使の救出と帰還の話
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「ウリエル!」
カマエルが溶けた金属の溶岩から這い出て来る。
体に纏う、神力による見えない鎧で、溶けた金属も体に付着することなく、流れ落ちて行っている。
金属の溶岩から這い出て来たにもかかわらず、やけども付着もない綺麗な見た目は、ある種の異様さを形成していた。
「派手に負けたね~」
「負けてはいないのだが」
「いいや、負けだね~」
「何故そう思うのか、不思議なのだが」
「お前、結構本気だったからな~」
「ふざけるな!」
カマエルは自らを助けた筈のウリエルにすら、戦斧を振り下ろす。
ウリエルは飛び掛かってくるカマエルを、剣で軽くいなしてから受け流し、カマエルの背中に蹴りを入れて転ばした。
「ふざけているのはお前のほうだ。創造主に創られた者同士での争いなど、不敬ですらない。もはや・・・侮辱だ」
「す・・・すまない。ウリエル」
ウリエルからの威圧を感じ、自分の行いを反省するカマエル。
「分かればいいんだね~」
ウリエルの口調も戻り、砕けた態度に戻っていた。
「それで・・・僕の救出にウリエルが来たということは、これは創造主の命といことになるのだが」
「そうだね~」
「僕のことを、いい気味とでも思っているようだが」
「そんなことはないね~」
神竜族を誘導する命を受け活動していた時に聞いた、ガブリエルとウリエルの失態。
それをあざ笑うようにして啖呵を切った上で、今まで以上に失態を演じた自分を、さぞ喜んでみていると思っていたカマエルは、そのウリエルの言葉と真剣な表情に疑問を感じだす。
「何故なのだ?」
「考えてもみな~。創造主の最高傑作と誇りながらも、大天使の失態続き。創造主に失敗はありえない。でも命を果たせていない俺らは、失敗作ということになる。だから・・・俺らは存在していていいのかね~?」
「咎を受ける覚悟は、もう出来ているのだが」
「なら話は早いね~。創造主の命で、俺とガブリエル、カマエルに招集がかけられているんだよな~。お前を連れて帰るのも、今回俺に頂いた命でもあるんだがね~」
「ならば早く戻るほうがいいと思うのだが」
ウリエルとカマエルははるか上空に飛び立ち、同じ方向を目指して速度を上げ続けていく。
その際限の無い速度は、やがて人が知覚できないほどの速度に達し、空気が擦り切れる音だけを響かせ続けていた。
2体の大天使はその道中、眼下に荷馬車を運んでいる黒竜を見つけるが、最早興味などなく視線を一瞬送るだけに終わる。
それがルシファー達にとって、幸運だったことは知る由もなかった。
どれほど飛び続けたのだろうか。
世界に夜と呼ばれる状態が訪れたころ、ウリエルとカマエルは外側を太い石の柱で形成された、巨大な神殿に降り立っていた。
彼らが創造主と呼ぶ存在が居住する場であり、自らが帰る場所でもある。
「私はともかく、創造主を待たせるとは何事ですか?」
「うるせえな~、ガブリエル」
「今僕達が到着することなど、創造主であれば理解されていると思うのだが」
「それでも創造主のために全力を尽くすことが」
「そういうお前も、無駄話で創造主を待たせているではないか」
入口に立って、ウリエルとカマエルに物申していたガブリエルの背後から、一際大きい体格の天使が姿を表す。
2メートルはあるのでは無いかと思われる身長と、3対の翼が折り重なった6枚の翼を背中に生やし、細身ではあるものの、宗教服のローブ越しでも分かる高密度な筋肉質の体をしている。
顔はローブのフードを深くかぶっているので見えないが、声は以外にも青年のそれに近い質をしていた。
この存在が現れてからというもの、3体の天使は話すのを止め、出方を伺っていた。
「なにをしている? 創造主がお待ちだ。早くするのだな」
「ミカエル・・・お前がいるってことは、俺達はお前に処分されるってことかね~?」
ウリエルの言葉で場の空気が凍り、ガブリエルとカマエルも黙ってミカエルの返事を待っている。
「そのような命は受けてはいない」
一時に込められた莫大な緊張感が僅かに緩み、ガブリエルを筆頭に神殿に入っていく。
「そいつは良かったね~。でも、この後そうなるかもな~」
すれ違いざまに、ウリエルはあきらめの感情を込めたかのような、元気のない捨て台詞を吐く。
「そうはならないと思うが」
「それってどういう?」
「これ以上創造主を待たせるのか? ・・・もっとも、創造主ならこういった会話が成されることも、既に知っておられるだろうが」
ウリエルは話すのをやめ、ミカエルとそれ以上言葉を交わすのを止め、ガブリエルとカマエルの後を追った。
「急な招集にも関わらず、よく集まってくれましたね」
大広間へ向うと、置かれた玉座に座る青と赤で装飾されたローブを着た女性と思われる人物が、さっそく声をかける。
その姿は、かつてオリービアと邂逅した女性であった。
「もったいなきお言葉」
ガブリエルは言葉を発すると同時に跪き、首を垂れる。
ウリエルとカマエルも後に続き、創造主と呼ばれる存在からの次の言葉を待っている。
「カマエル、元気な姿が見れて良かったです」
「も! もったいなきお言葉にございます!」
名指しでカマエルに声を欠ける玉座の女性の口元は、とても優しい笑顔のそれに見える。
だが僅かにフードから覗くそんな表情の変化ですら、頭を下げて自らに下されるだろう罰を待っている3体の大天使達には、分かりようも無かった。
「創造主よ、発言の許可を」
「構いませんよ、ウリエル」
「俺た・・・私達を集めたのは、罰を与えるためでは? どのような罰でもお受けする所存に御座います」
「何故罰を受けるなどと? わたしは貴方達の働きに満足していることを伝えたくて、呼んだだけですよ? どうか顔を上げてください」
その言葉に対し、3体の天使は恐る恐る顔を上げて、自らの創造主の見上げる。
創造主と呼ばれる女性は、ローブからのぞかせる、優しく慈愛に満ちた笑顔の口元を崩さずにいる。
「お待ちください。私も含めウリエルもカマエルも、創造主の命を果たしてはいません。大天使の失態は・・・創造主への背徳行為に他なりません」
「あなた達は立派に命を果たしています。ですから、わたしは貴方達の働きに感謝をしています。ありがとうと伝えるために、ここへ呼んだのですから、罰などありようもないですよ」
ガブリエルの言葉にも、創造主と呼ばれる女性は動じることはなく、感謝の言葉すら発していた。
創造主からの感謝の言葉に、3体の大天使は涙が出そうになるほどの歓喜の感情が溢れ出し、喜びに打ち震えだす。
だがそのような至高の褒美ともとれるものに、相応しいとは思えない3体の大天使は、素直にその甘美なる喜びに浸ることは出来なかった。
ガブリエルは言葉を失っているウリエルとカマエルの代表し、創造主へ発言を試みる。
「それでも私達が、感謝のお言葉は頂戴するには・・・」
「もういいだろう、ガブリエル」
ミカエルが玉座のある大広間に入り、ガブリエルを制す。
「創造主、無礼をお許し頂きたく」
「問題ありませんよ、ミカエル。貴方が入ってくるのは分かっていましたから」
跪くガブリエル達の後ろで立ち止まり、お辞儀だけを返すミカエル。
「創造主のお言葉を頂戴し、みな喜んでいることでしょう。ですがこのままでは」
「連れてっても良いですよ」
ミカエルの言葉の途中で、創造主の女性は返事を返す。
それはまるで、ミカエルが続けようとした言葉を、あらかじめ全て知っているような、円滑さで行われていた。
「感謝申し上げます。ガブリエル、ウリエル、カマエル、創造主の命に従い、共に来てもらおう」
跪いていた3体の大天使は立ち上がり、尊敬の念を込めたお辞儀を行って、大広間を出て行くミカエルに続く。
「少々ガブリエルは、真面目に創ってしまったでしょうか?」
誰もいなくなった大広間には、女性の声しか響いていない。
「ですが・・・ここまでは預言の通りに、わたしの見た未来通りにことは運んでいます。であるならば、ガブリエルのあれも予定通りということ」
玉座から立ち上がり、高台の数段ある階段を数歩降りて立ち止まる。
「早くお会いしたいですね、ルシファー。焦ってはいませんが、はやる気持ちが抑えられません」
女性は自分の子宮に当たる位置を撫でながら、愛おしい表情をしていた。
大広間を出てから、大天使達は自分達に割り当てられた、団欒室とも言うべき部屋に集まっていた。
色鮮やかなステンドグラスによる装飾と、豪華な絨毯、アンティーク調のテーブルや椅子で彩られたその部屋は、備え付けの蠟燭と暖炉の火の演出もあり、非常に快適な空間になっている。
部屋にはミカエル、ガブリエル、ウリエル、カマエルの他に、残りの3体の大天使も来ていた。
「おやおや・・・ラファエルに、イオフィルとザドキエルもいるとはね~」
同じ宗教服のローブとフードに覆われた3体の大天使は、ウリエルに名前を呼ばれて軽く頷く程度で反応を終わらす。
「創造主に頂いたこの部屋に、大天使が全員揃うのは初めてなのだ」
「それで? 私達を集めた理由を伺っても?」
部屋の中央に置かれた円卓に備えられている、天使の翼を邪魔しないように創られた椅子に、全ての大天使が座る。
「ガブリエル達の疑問に、答えるためだ」
最後にそう言いながらミカエルが座る。
「私達に・・・罰が下されない理由ですか」
「お前は、真面目過ぎると思うのだ」
「気にしすぎなんだよね~。よくわからないけど、お褒めの言葉も頂いたしね~」
「貴方達が不真面目すぎな」
「いい加減にしてもらおうか」
ミカエルが場を鎮めるために凄むと、全ての大天使が口をつぐむ。
「我々大天使は、創造主によって個性を持った状態で創造していただいた。それは命を果たす上で、役に立つものだからだろう。であるならば、互いの違いを認めていくことが、我らに課せられた命題であると心得たい」
ミカエルのその言葉に、全ての大天使が頷きで返す。
「ではガブリエル、言葉としてお前の疑問を発してくれるか?」
カマエルが溶けた金属の溶岩から這い出て来る。
体に纏う、神力による見えない鎧で、溶けた金属も体に付着することなく、流れ落ちて行っている。
金属の溶岩から這い出て来たにもかかわらず、やけども付着もない綺麗な見た目は、ある種の異様さを形成していた。
「派手に負けたね~」
「負けてはいないのだが」
「いいや、負けだね~」
「何故そう思うのか、不思議なのだが」
「お前、結構本気だったからな~」
「ふざけるな!」
カマエルは自らを助けた筈のウリエルにすら、戦斧を振り下ろす。
ウリエルは飛び掛かってくるカマエルを、剣で軽くいなしてから受け流し、カマエルの背中に蹴りを入れて転ばした。
「ふざけているのはお前のほうだ。創造主に創られた者同士での争いなど、不敬ですらない。もはや・・・侮辱だ」
「す・・・すまない。ウリエル」
ウリエルからの威圧を感じ、自分の行いを反省するカマエル。
「分かればいいんだね~」
ウリエルの口調も戻り、砕けた態度に戻っていた。
「それで・・・僕の救出にウリエルが来たということは、これは創造主の命といことになるのだが」
「そうだね~」
「僕のことを、いい気味とでも思っているようだが」
「そんなことはないね~」
神竜族を誘導する命を受け活動していた時に聞いた、ガブリエルとウリエルの失態。
それをあざ笑うようにして啖呵を切った上で、今まで以上に失態を演じた自分を、さぞ喜んでみていると思っていたカマエルは、そのウリエルの言葉と真剣な表情に疑問を感じだす。
「何故なのだ?」
「考えてもみな~。創造主の最高傑作と誇りながらも、大天使の失態続き。創造主に失敗はありえない。でも命を果たせていない俺らは、失敗作ということになる。だから・・・俺らは存在していていいのかね~?」
「咎を受ける覚悟は、もう出来ているのだが」
「なら話は早いね~。創造主の命で、俺とガブリエル、カマエルに招集がかけられているんだよな~。お前を連れて帰るのも、今回俺に頂いた命でもあるんだがね~」
「ならば早く戻るほうがいいと思うのだが」
ウリエルとカマエルははるか上空に飛び立ち、同じ方向を目指して速度を上げ続けていく。
その際限の無い速度は、やがて人が知覚できないほどの速度に達し、空気が擦り切れる音だけを響かせ続けていた。
2体の大天使はその道中、眼下に荷馬車を運んでいる黒竜を見つけるが、最早興味などなく視線を一瞬送るだけに終わる。
それがルシファー達にとって、幸運だったことは知る由もなかった。
どれほど飛び続けたのだろうか。
世界に夜と呼ばれる状態が訪れたころ、ウリエルとカマエルは外側を太い石の柱で形成された、巨大な神殿に降り立っていた。
彼らが創造主と呼ぶ存在が居住する場であり、自らが帰る場所でもある。
「私はともかく、創造主を待たせるとは何事ですか?」
「うるせえな~、ガブリエル」
「今僕達が到着することなど、創造主であれば理解されていると思うのだが」
「それでも創造主のために全力を尽くすことが」
「そういうお前も、無駄話で創造主を待たせているではないか」
入口に立って、ウリエルとカマエルに物申していたガブリエルの背後から、一際大きい体格の天使が姿を表す。
2メートルはあるのでは無いかと思われる身長と、3対の翼が折り重なった6枚の翼を背中に生やし、細身ではあるものの、宗教服のローブ越しでも分かる高密度な筋肉質の体をしている。
顔はローブのフードを深くかぶっているので見えないが、声は以外にも青年のそれに近い質をしていた。
この存在が現れてからというもの、3体の天使は話すのを止め、出方を伺っていた。
「なにをしている? 創造主がお待ちだ。早くするのだな」
「ミカエル・・・お前がいるってことは、俺達はお前に処分されるってことかね~?」
ウリエルの言葉で場の空気が凍り、ガブリエルとカマエルも黙ってミカエルの返事を待っている。
「そのような命は受けてはいない」
一時に込められた莫大な緊張感が僅かに緩み、ガブリエルを筆頭に神殿に入っていく。
「そいつは良かったね~。でも、この後そうなるかもな~」
すれ違いざまに、ウリエルはあきらめの感情を込めたかのような、元気のない捨て台詞を吐く。
「そうはならないと思うが」
「それってどういう?」
「これ以上創造主を待たせるのか? ・・・もっとも、創造主ならこういった会話が成されることも、既に知っておられるだろうが」
ウリエルは話すのをやめ、ミカエルとそれ以上言葉を交わすのを止め、ガブリエルとカマエルの後を追った。
「急な招集にも関わらず、よく集まってくれましたね」
大広間へ向うと、置かれた玉座に座る青と赤で装飾されたローブを着た女性と思われる人物が、さっそく声をかける。
その姿は、かつてオリービアと邂逅した女性であった。
「もったいなきお言葉」
ガブリエルは言葉を発すると同時に跪き、首を垂れる。
ウリエルとカマエルも後に続き、創造主と呼ばれる存在からの次の言葉を待っている。
「カマエル、元気な姿が見れて良かったです」
「も! もったいなきお言葉にございます!」
名指しでカマエルに声を欠ける玉座の女性の口元は、とても優しい笑顔のそれに見える。
だが僅かにフードから覗くそんな表情の変化ですら、頭を下げて自らに下されるだろう罰を待っている3体の大天使達には、分かりようも無かった。
「創造主よ、発言の許可を」
「構いませんよ、ウリエル」
「俺た・・・私達を集めたのは、罰を与えるためでは? どのような罰でもお受けする所存に御座います」
「何故罰を受けるなどと? わたしは貴方達の働きに満足していることを伝えたくて、呼んだだけですよ? どうか顔を上げてください」
その言葉に対し、3体の天使は恐る恐る顔を上げて、自らの創造主の見上げる。
創造主と呼ばれる女性は、ローブからのぞかせる、優しく慈愛に満ちた笑顔の口元を崩さずにいる。
「お待ちください。私も含めウリエルもカマエルも、創造主の命を果たしてはいません。大天使の失態は・・・創造主への背徳行為に他なりません」
「あなた達は立派に命を果たしています。ですから、わたしは貴方達の働きに感謝をしています。ありがとうと伝えるために、ここへ呼んだのですから、罰などありようもないですよ」
ガブリエルの言葉にも、創造主と呼ばれる女性は動じることはなく、感謝の言葉すら発していた。
創造主からの感謝の言葉に、3体の大天使は涙が出そうになるほどの歓喜の感情が溢れ出し、喜びに打ち震えだす。
だがそのような至高の褒美ともとれるものに、相応しいとは思えない3体の大天使は、素直にその甘美なる喜びに浸ることは出来なかった。
ガブリエルは言葉を失っているウリエルとカマエルの代表し、創造主へ発言を試みる。
「それでも私達が、感謝のお言葉は頂戴するには・・・」
「もういいだろう、ガブリエル」
ミカエルが玉座のある大広間に入り、ガブリエルを制す。
「創造主、無礼をお許し頂きたく」
「問題ありませんよ、ミカエル。貴方が入ってくるのは分かっていましたから」
跪くガブリエル達の後ろで立ち止まり、お辞儀だけを返すミカエル。
「創造主のお言葉を頂戴し、みな喜んでいることでしょう。ですがこのままでは」
「連れてっても良いですよ」
ミカエルの言葉の途中で、創造主の女性は返事を返す。
それはまるで、ミカエルが続けようとした言葉を、あらかじめ全て知っているような、円滑さで行われていた。
「感謝申し上げます。ガブリエル、ウリエル、カマエル、創造主の命に従い、共に来てもらおう」
跪いていた3体の大天使は立ち上がり、尊敬の念を込めたお辞儀を行って、大広間を出て行くミカエルに続く。
「少々ガブリエルは、真面目に創ってしまったでしょうか?」
誰もいなくなった大広間には、女性の声しか響いていない。
「ですが・・・ここまでは預言の通りに、わたしの見た未来通りにことは運んでいます。であるならば、ガブリエルのあれも予定通りということ」
玉座から立ち上がり、高台の数段ある階段を数歩降りて立ち止まる。
「早くお会いしたいですね、ルシファー。焦ってはいませんが、はやる気持ちが抑えられません」
女性は自分の子宮に当たる位置を撫でながら、愛おしい表情をしていた。
大広間を出てから、大天使達は自分達に割り当てられた、団欒室とも言うべき部屋に集まっていた。
色鮮やかなステンドグラスによる装飾と、豪華な絨毯、アンティーク調のテーブルや椅子で彩られたその部屋は、備え付けの蠟燭と暖炉の火の演出もあり、非常に快適な空間になっている。
部屋にはミカエル、ガブリエル、ウリエル、カマエルの他に、残りの3体の大天使も来ていた。
「おやおや・・・ラファエルに、イオフィルとザドキエルもいるとはね~」
同じ宗教服のローブとフードに覆われた3体の大天使は、ウリエルに名前を呼ばれて軽く頷く程度で反応を終わらす。
「創造主に頂いたこの部屋に、大天使が全員揃うのは初めてなのだ」
「それで? 私達を集めた理由を伺っても?」
部屋の中央に置かれた円卓に備えられている、天使の翼を邪魔しないように創られた椅子に、全ての大天使が座る。
「ガブリエル達の疑問に、答えるためだ」
最後にそう言いながらミカエルが座る。
「私達に・・・罰が下されない理由ですか」
「お前は、真面目過ぎると思うのだ」
「気にしすぎなんだよね~。よくわからないけど、お褒めの言葉も頂いたしね~」
「貴方達が不真面目すぎな」
「いい加減にしてもらおうか」
ミカエルが場を鎮めるために凄むと、全ての大天使が口をつぐむ。
「我々大天使は、創造主によって個性を持った状態で創造していただいた。それは命を果たす上で、役に立つものだからだろう。であるならば、互いの違いを認めていくことが、我らに課せられた命題であると心得たい」
ミカエルのその言葉に、全ての大天使が頷きで返す。
「ではガブリエル、言葉としてお前の疑問を発してくれるか?」
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