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しおりを挟む夕食の席に座るのは公爵夫妻に嫡男夫妻、それにリオと私の六人だ。嫡男夫妻の子どもたちはまだ幼いので食事はすでに済んでいるそうだ。
「ヴァイオレット久しぶりだな」
「見ないうちに大きくなったなぁ」
そう言って私に話しかけてきたのはグレイル公爵家当主のベルトラン様と嫡男のアルフォンス様だ。おば様、ラフィーネ様とベルトラン様、アルフォンス様と会うのは本当に久しぶりだ。
「お久しぶりでございます。両親が亡くなってからご連絡がほとんどできず申し訳ございませんでした」
「いや、その頃はヴァイオレットはまだ十歳だったんだ。だから気にする必要はないよ」
「そうだよ。まぁかわいい妹と会えないのは寂しかったけどな」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「そうだ。私の妻とは会うのが初めてだったね。紹介するよ。私の妻のクリスティーナだ」
「初めまして、クリスティーナと申します。ヴァイオレットさんの話はみなさんからよく聞いていたから、なんだか初めて会う感じがしないわ」
クリスティーナ様は私の五つ年上でアルフォンス様と同い年だそうだ。三歳と一歳の子どもがいるのだが、とても二人も子どもがいるようには見えないくらい可愛らしいお方だ。それに突然やってきた私に嫌な顔一つせずに笑顔で話してくれる。アルフォンス様はクリスティーナ様のような素敵な女性と結婚できて羨ましい限りだ。
「グレイル小公爵様は素敵な女性と巡り会えたのですね」
「そうさ、私は幸せ者なんだ。というかヴァイオレット。なんだいその他人行儀な呼び方は。昔みたいにアル兄様って呼んでくれ」
「でも私は平民ですから…」
「そうよ。リオだけ愛称で呼ばれるなんてずるいわ!私だって…」
「え、いや…」
「まぁ俺とヴィーの仲だからな」
「何が『俺とヴィーの仲だから』だよ。そういうことはこくは「ちょ、兄さん!」…ゴホン。ということでヴァイオレット。俺のことはアル兄さんって呼んでくれよな」
「では私のことは名前で呼んでもいいぞ」
「それじゃあ私も名前で呼んでもらおうかしら。…本当はお義母様って呼ばれたいけど」
「私のことはクリス姉様って呼んでちょうだいな」
リオを除く全員の圧が強い。これはもう私が折れるしかないのだろう。
「…分かりました。ベルトラン様、ラフィーネ様、アル兄様、クリス姉様」
「ったく。みんなヴィーを困らせるなよな。そのためにここに連れてきたんじゃないんだから」
「分かってるよ。じゃあ食事でもしながらそこら辺の話でもしようか」
ベルトラン様の一言でようやく夕食が始まった。緊張していたので食べられるか心配だったが、あまりの美味しさに気づけば次々と完食してしまった。さすがグレイル公爵家である。
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