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しおりを挟む「……ゼリーヌ様!アンゼリーヌ様!」
「はっ!はぁはぁはぁ…」
「どうかされましたか?」
「えっ?ケ、ケイト?」
「はい、ケイトですよ」
「……」
「どこか体調でも?ひどくうなされていたようですが…」
「…少し怖い夢を見ただけだから大丈夫よ」
(そうあれは長い長い夢……ではなかったわ。あれは現実で私は二度目の死を迎えたはずなのに…)
「…ねぇケイト」
「はい、アンゼリーヌ様」
「…今日ってもしかして私の十歳の誕生日かしら?」
「ええそうですよ。本当にアンゼリーヌ様も大きくなりましたね。アンゼリーヌ様の立派なお姿を見ることができてケイトは嬉しゅうございます」
(…また十歳の誕生日に戻ってきたの?これは夢?それとも現実?)
私はそっと自分の頬をつねった。
「…いたい」
身をもって痛みを感じたことでこれが夢ではなく現実だということを理解した。
(前回はあり得ないと思って切り捨てていた可能性…)
「逆行…」
(私は本当に時間を遡ったの?それも二度も…。一体何のために…?)
疑問は尽きないが私は何の答えも持っていない。ただ今分かることは三度目の人生が始まったということだけ。それに毎回十歳の誕生日に逆行するということはこの日が分岐点となるのだろう。どの道を選ぶのが私にとって正解なのだろうか。
「さぁ出来ましたよ。それでは皇帝陛下の元に参りましょう」
「…ええ、分かったわ」
そして部屋を出ると扉の前にクリスが立って待っていた。
「おはよう、クリス」
「おはようございます、アンゼリーヌ様」
私はクリスのことを見つめた。
(二度も聞こえた私の名前を呼ぶ声…。気のせいのはずなのになぜだが気になって仕方がないわ)
あの声は幻聴なのかそれとも本当にクリスが私を呼んでいたのか。それを知る術はない。
「あの、アンゼリーヌ様?」
「っ!ご、ごめんなさい。少しぼーっとしてしまっただけだから気にしないで」
「それならいいのですが…。えっと、アンゼリーヌ様。お誕生日おめでとうございます」
「どうもありがとう。それじゃあ行きましょうか」
そして再び謁見の間で父と母と対面する。
「アンゼリーヌよく来たな」
「アンゼリーヌ、十歳の誕生日おめでとう」
「皇帝陛下と皇后陛下にご挨拶申し上げます」
一度目、二度目と同じ会話を終えまたあの選択の時がやってきた。
「では選択肢を伝える。よく考えて答えを出すように」
「はい」
「一つ目は帝国内の有力貴族との婚姻、二つ目は他国への嫁入り、そして三つ目は私の後を継ぐことだ」
今回私が選ぶ道は果たして正解なのだろうか。それともまた死を迎えてしまうのか。
(前回知ったお姉様の私に対する悪感情…。お姉様の動向に警戒すればきっと大丈夫よね?)
「皇帝陛下」
「決まったか?」
「はい」
「よく考えて決めたのだな?」
「そうです」
「ではアンゼリーヌ。お前はどの道を選ぶのだ?」
「私は―――」
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