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淡雪花
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繊細な花だから気を付けて運んだ。ギルドへ行く途中、珍しい花を運んでいるためか小さな子どもたちに囲まれて少し大変だった。綺麗で不思議な花だから触りたくなるのはわかるんだけど大切で繊細な花だからね。
なんとか無事にギルドまで辿り着く。
ミリーナさんがいる受付はやっぱり空いている。僕的には助かるんだけど常に混んでる受付の一つがこれでいいのかなぁ?
「わふ!」
「お帰りなさいシロちゃん。これは確かに淡雪花ですね。‥‥よかった。アイシャを失わなくて済む。本当に良かった。」
「わふ?(大丈夫?)」
いつもキリッとしてテキパキと仕事をこなすミリーナさんが少し泣いている。ぺろぺろと頬を舐めて慰める。泣かないで?
「ごめんなさい。仕事に私情を持ち込んではいけないのに。でも‥‥シロちゃん。本当にありがとう。きちんと依頼主に届けるわ。あなたのおかげであの子の母親は助かるわ。」
「わふ!(よかった!)」
「これが報酬の銀貨2枚よ。ーー依頼主のあの子どもは2日後に確認に来るって言っていたのだけれどすぐに渡してあげたいわ。シロちゃん、知らせに行ってくれないかしら?」
「わっふ!(いいよ!)」
「ありがとう。」
「2番通りの花屋の隣に住んでいるの。あの子はアロンと言って母親はアイシャよ。ちょっと待ってねーーこの手紙を渡してきて欲しいの。」
「わふ!(任せて!)」
「ありがとう。」
「わっふわ!(行ってきます!)」
「気を付けてーー本当にありがとう。」
アロンくんにアイシャさん。アイシャさんはきっとミリーナさんの大切なお友達なんだね。やっぱり助けられてよかった。
2番通りの花屋さん。こっちかな。近づいてくるとほんのりと甘い花の香りがする。
ここかな?
ノック‥‥ノック?よし、ドアの前で前足を上げてどうにかノックする。ノックというより前足で扉をかいて音をたてた感じになっちゃったけど。
「わふ!」
キィーーッ
すこーし。ほんのすこーしだけ扉が開けられた。隙間からこちらを伺っているのはギルドに来た子どもだ。
「まもの?ーーわんちゃん?」
「わふ」
警戒を解いてくれたのか扉を開けてくれた。首にくくりつけてもらった手紙を見えやすいように差し出す。
「かわいい!触ってもいい?」
「わふ!」
「はわぁ!ふらふら!ーーん?これはおてがみ?」
「わふ!」
「?!ーーっ」
言葉も発さずに涙をポロポロと流し始めたアロン君。どうしよう。オロオロと周りを動く。
「君が?君が依頼をうけてくれたの?」
「わふ!」
「ゔぅ~ありがどう。ゔぅ~ヒックあぁぁー!!」
ずっと1人で頑張ってきて母親が助かると確信して糸が切れたんだろう。あの時ギルドで見た痛みを堪えるような泣きかたよりもこっちの感情をあらわにした泣き方のほうがずっといい。
偉かったね。頑張ったね。その意味を込めてすりすりと体を寄せて落ち着くまでそばにいる。
「ぅ‥‥ありがとう。おかあさんに知らせなきゃ!君もきて!」
奥の部屋へと誘導される。
奥の日当たりのいい部屋に入ると病人特有の匂いがする。ベッドに横になっている人は元は艶やかであっただろう赤髪がくすんでパサパサになってしまっていた。かなり痩せていて苦しそうな呼吸をしている。そばには看病のための道具が置かれていた。
「おかあさん。」
「ヒューハッアロン?」
「うん、あのね。淡雪花が見つかったって!たすかるよ!たすかるんだよ!」
「ほんとうに?あぁ、ごめんね。苦労ばかりかけて。ありがとう。ありが‥‥ゴホッ」
「むりしないで!きっとすぐに良くなるから。その時いろいろきくから。今はゆっくり休んで!」
アイシャさんからは体内に溢れるほどの魔力を感じた。それなのに放出されず、体内で暴れ回っている。これが魔素凝固症。魔力の放出がうまくいかず本来生きるために必要な魔力が過剰に体内に蓄積し体を蝕んでしまう。最終的には多すぎる魔力によって体が石のように固くなり死んでしまう。
本当に間に合ってよかった。
「この子が依頼をうけてくれたの。」
「ありがとう。」
囁くような小さな声。それでも確かに声に乗せられた感謝が伝わった。
ペロッと舐めて早く良くなりますようにとの思いを込める。
気を使わせては悪いからさっさと退出する。
アロン君は目を赤くさせながらそれでも確かに明るくなった。あかぎれだらけの手。ところどころ怪我をした体。母親の稼ぎがないアロン君はできることはなんでもしていたんだろう。部屋の隅に置かれたポーションの空き瓶からも想像できる。
子ども1人の稼ぎじゃどれだけ頑張っても生活は苦しかっただろう。それでも母親を見捨てずずっと1人で頑張ってきたこの子は本当にすごい。
何度も感謝の言葉を伝えるアロン君に見送られてギルドへの帰り道につく。
親子っていいな。僕の両親はどこにいるんだろう?
ふと今まで気にもしなかった疑問が浮かんでくる。
なんとか無事にギルドまで辿り着く。
ミリーナさんがいる受付はやっぱり空いている。僕的には助かるんだけど常に混んでる受付の一つがこれでいいのかなぁ?
「わふ!」
「お帰りなさいシロちゃん。これは確かに淡雪花ですね。‥‥よかった。アイシャを失わなくて済む。本当に良かった。」
「わふ?(大丈夫?)」
いつもキリッとしてテキパキと仕事をこなすミリーナさんが少し泣いている。ぺろぺろと頬を舐めて慰める。泣かないで?
「ごめんなさい。仕事に私情を持ち込んではいけないのに。でも‥‥シロちゃん。本当にありがとう。きちんと依頼主に届けるわ。あなたのおかげであの子の母親は助かるわ。」
「わふ!(よかった!)」
「これが報酬の銀貨2枚よ。ーー依頼主のあの子どもは2日後に確認に来るって言っていたのだけれどすぐに渡してあげたいわ。シロちゃん、知らせに行ってくれないかしら?」
「わっふ!(いいよ!)」
「ありがとう。」
「2番通りの花屋の隣に住んでいるの。あの子はアロンと言って母親はアイシャよ。ちょっと待ってねーーこの手紙を渡してきて欲しいの。」
「わふ!(任せて!)」
「ありがとう。」
「わっふわ!(行ってきます!)」
「気を付けてーー本当にありがとう。」
アロンくんにアイシャさん。アイシャさんはきっとミリーナさんの大切なお友達なんだね。やっぱり助けられてよかった。
2番通りの花屋さん。こっちかな。近づいてくるとほんのりと甘い花の香りがする。
ここかな?
ノック‥‥ノック?よし、ドアの前で前足を上げてどうにかノックする。ノックというより前足で扉をかいて音をたてた感じになっちゃったけど。
「わふ!」
キィーーッ
すこーし。ほんのすこーしだけ扉が開けられた。隙間からこちらを伺っているのはギルドに来た子どもだ。
「まもの?ーーわんちゃん?」
「わふ」
警戒を解いてくれたのか扉を開けてくれた。首にくくりつけてもらった手紙を見えやすいように差し出す。
「かわいい!触ってもいい?」
「わふ!」
「はわぁ!ふらふら!ーーん?これはおてがみ?」
「わふ!」
「?!ーーっ」
言葉も発さずに涙をポロポロと流し始めたアロン君。どうしよう。オロオロと周りを動く。
「君が?君が依頼をうけてくれたの?」
「わふ!」
「ゔぅ~ありがどう。ゔぅ~ヒックあぁぁー!!」
ずっと1人で頑張ってきて母親が助かると確信して糸が切れたんだろう。あの時ギルドで見た痛みを堪えるような泣きかたよりもこっちの感情をあらわにした泣き方のほうがずっといい。
偉かったね。頑張ったね。その意味を込めてすりすりと体を寄せて落ち着くまでそばにいる。
「ぅ‥‥ありがとう。おかあさんに知らせなきゃ!君もきて!」
奥の部屋へと誘導される。
奥の日当たりのいい部屋に入ると病人特有の匂いがする。ベッドに横になっている人は元は艶やかであっただろう赤髪がくすんでパサパサになってしまっていた。かなり痩せていて苦しそうな呼吸をしている。そばには看病のための道具が置かれていた。
「おかあさん。」
「ヒューハッアロン?」
「うん、あのね。淡雪花が見つかったって!たすかるよ!たすかるんだよ!」
「ほんとうに?あぁ、ごめんね。苦労ばかりかけて。ありがとう。ありが‥‥ゴホッ」
「むりしないで!きっとすぐに良くなるから。その時いろいろきくから。今はゆっくり休んで!」
アイシャさんからは体内に溢れるほどの魔力を感じた。それなのに放出されず、体内で暴れ回っている。これが魔素凝固症。魔力の放出がうまくいかず本来生きるために必要な魔力が過剰に体内に蓄積し体を蝕んでしまう。最終的には多すぎる魔力によって体が石のように固くなり死んでしまう。
本当に間に合ってよかった。
「この子が依頼をうけてくれたの。」
「ありがとう。」
囁くような小さな声。それでも確かに声に乗せられた感謝が伝わった。
ペロッと舐めて早く良くなりますようにとの思いを込める。
気を使わせては悪いからさっさと退出する。
アロン君は目を赤くさせながらそれでも確かに明るくなった。あかぎれだらけの手。ところどころ怪我をした体。母親の稼ぎがないアロン君はできることはなんでもしていたんだろう。部屋の隅に置かれたポーションの空き瓶からも想像できる。
子ども1人の稼ぎじゃどれだけ頑張っても生活は苦しかっただろう。それでも母親を見捨てずずっと1人で頑張ってきたこの子は本当にすごい。
何度も感謝の言葉を伝えるアロン君に見送られてギルドへの帰り道につく。
親子っていいな。僕の両親はどこにいるんだろう?
ふと今まで気にもしなかった疑問が浮かんでくる。
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もふもふ系転生?最高です!可愛すぎます!素敵なお話ありがとうございます!続きが楽しみです!
屋台に未練たらたらなところかわいいですねぇ(๑˃̵ᴗ˂̵)
元Aランクのダグラスの名前が途中からBランクのブライトに変わってるのが気になります。
足を怪我したという共通点がありますが、ランクが違うようですし、同一人物ではないんですよね…?
読んでいただいてありがとうございます!
ご指摘で気付きました。Bランクのブライトは別人物です!名前が被ってた‥‥。すぐに訂正します!
誤字や間違いの指摘は大変ありがたいので教えていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします!