対米戦、準備せよ!

湖灯

文字の大きさ
38 / 56
★ノモンハン事件★

【結城薫 vs 女スパイ②】

しおりを挟む
 縛られた男について考える間もなく、ミンメイが執拗に仕掛けてくる。

 とりあえず、かんざしを何とかしなければ。

 かんざしに気を取られていて、左のハイキックを食らってしまう。

 一応ヒットする直前で気がつき、肩を上げたことがガードになり直撃は避けられたが、それでもベッドで縛られているパンツ姿のアミーゴのところまで飛ばされてしまった。

 気付くのがほんの一瞬遅ければ、アミーゴの隣で失神して寝ているところ。

 ちょっとパンツの横では、寝たくないかも。

 ベッドに横になる暇もなく、すぐ覆いかぶさるように上から尖ったかんざしが振り下ろされる。

 横になった身を回転させて避けるが、かんざしは私を追いかけて何度も振り下ろされ、ベッドに突き刺さりシーツを引き裂く。

 最後は彼女自身の体勢が悪くなったのか、狙いがずれてイタリア人のパンツを引き裂き大事な部分が露わになった。

 “ワオッ!”

 一瞬そこに目が行き、次にその持ち主の顔へと移るが、彼は私ほど余裕が無く大きく見開かれた目が私に助けを求めていた。

 “自業自得よ!”

 彼女が体勢を崩した隙に、私はベッドから逃げ出すことに成功した。



 ミンメイもすぐに体勢を整え、私たちは一瞬正対して目が合った。

 彼女は怖い顔をして私を睨んだが、私の脚はその隙にかんざしを握っている彼女の左手を捉えた。

 かんざしが彼女の手を離れ、天井に突き刺さった。

 さて、これで五分五分。

 今度は私が攻撃する番よ!







 薫さんの事が気になって話どころではないというのに、戦いに勝ってご機嫌な植田大将はなかなか私を離してはくれない。

 話を聞いている間にも、薫さんの事が気になって仕方がない。

 薫さんはいま敵のスパイと対峙しているかもしれないのだから、いくら相手が関東軍司令官で外務省満州国大使館全権大使の植田大将だといっても、薫さんの命には代えられない。



「うっ!」

「どうした?」

「す、すみません。あまり呑み慣れていないもので」

「じゃあ、ここで吐けばいい。すぐに給仕が来て片付けてくれる」

「いえ、閣下の前を汚すことは出来ませんので、少し失礼させていただきます」

「弱いやつじゃのう……」



 植田大将の許しを得てすぐに席を立ち外へ向かい、調査団のために建てられた来賓用宿舎の方に走って向かった。

 宿舎の入り口には歩哨が2人立っていた。



「大本営の柏原少佐だ、イタリアのロッシ1等書記官に用がある、通せ!」

 私の言葉に2人は困った顔をして言ってきた。

「あのぅ……いま、お取込み中のようなのですが」

「す、直ぐ戻ってくると言われていましたので、もう少し待ってあげてもらえませんか?」



 “取り込み中? 直ぐヌイテ来る??”

 普段なら、その意味するところに直ぐに気がついたのかもしれないが、このときは薫さんの身の危険ばかり案じていて分からなくて「かまわん。通る‼」と言ってスタスタと宿舎の中に入っていった。







 ミンメイはさすがにスパイだけあって、こういった格闘戦の訓練も受けているらしく手強くて幾つかのパンチやキックを受けてしまったが、この時代にあって私の身長は彼女より圧倒的に高くパンチやキックの射程距離も長かった。

 さっき戦った部屋の奥に入る狭い通路とは違い、広いこの部屋ではフットワークを活かして十分に間をとることも出来て有利に働いた。

 特に私の特異な回し蹴り系の蹴り技はもちろん、サイドキックだって広い空間があってこそ相手を惑わして繰り出すことが出来る。



 ミンメイの前蹴りによる2段攻撃により間合いを詰められた私は、相手の次なる攻撃を防ぐため正面から半身の体勢になりジャブを繰り出して牽制した。

 彼女は次に私が繰り出すワン・ツーを警戒して少し間合いを開け、パンチに備えてガードも上げた。

 だがコレは私の思うつぼ。

 ワン・ツーを出すと見せかけて、私はサイドキックを繰り出した。

 間合いはドンピシャで、彼女が上げたガードの下を潜り抜けた私の踵が見事に彼女の胸にヒットした。

 胸自体は急所ではないが、胸を蹴られた事で彼女の軽い体は部屋の隅にある机にぶつかった後その奥の壁に打ち付けられた。

 体のダメージはさほどないはずだが、こうも簡単に飛ばされれば精神的なダメージは相当大きかったはず。



 彼女は私の蹴りで飛ばされたとき、何かに掴まろうとして机の引き出しを落とした。

 私の誤算は、その引き出しの中に入っていたものに気付かなかった事。

 いち早くミンメイがその中身に気付き、それを奪い取る。



 引き出しの中にあったものは拳銃だった。

 “しまった‼”

 彼ら調査団の一行の身分は外交官。

 拳銃だって自由に所持でき、規制は出来ない。

 あのパンツのデカち〇イタリア人が、持っていても不思議ではない。

 いやむしろ、こんな係争地帯にくるのだから持っていて当然なのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~

川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる …はずだった。 まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか? 敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。 文治系藩主は頼りなし? 暴れん坊藩主がまさかの活躍? 参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。 更新は週5~6予定です。 ※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

徳川慶勝、黒船を討つ

克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。 もしかしたら、消去するかもしれません。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

処理中です...