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私
8話
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会社での仕事もいつも通り。それはいいことでもあるけれど、莉子にとっては打破したい現状でもあった。何気なく過ぎていく日常を変えられるのは今しかない。そんな思いを抱えていた。
「相変わらず何かを考えてるわね」
「えぇ、まぁ。どうやったら今の状況を抜け出せるのかなって考えてます」
「今の状況?この仕事してる環境のこと?」
「まぁそれもあるんですけど、私自信が変わっていかなきゃなって思ってます」
「そうかしら。今でも十分魅力的だと思うけど」
疑いことなく魅力的だと言ってくれる先輩には感謝したいのだけれど、いまいち何が魅力なのか分かっていないので反応に困る。そこそこ広いオフィスの中で、特に仕事に関係のない話をしながら過ごす。それも、莉子にとっていいことなのか悩ましいことだった。
仕事の手を止めないことを意識はしつつ、先輩への悩み相談も止まらない。
「25年間生きてきたのに何もできてないんですよ」
「みんなそんなもんよ。莉子ちゃんが偉人になりたいのなら別だけど」
「別にそういうわけじゃないんですけどね」
先輩がゆっくりと、しかし的確な返答をくれる。確かに莉子は偉人になりたいわけではない。そういう意味で何かを成し遂げたいわけではない。しかし、常に前に進みながら生きていきたいと思っていた。
なんだか周りの空気が緩んできた。そんな周りも気にせず回覧物に印鑑を捺し始めたところで、チャイムが鳴った。
「莉子ちゃん、お昼よ」
「え、もうそんな時間ですか」
捺し始めた印鑑を置いて、食堂へ向かう。最近はずっと先輩と食べている。事務所を出て廊下を抜けて、5分ほど歩けば食堂がある。仕事中の騒がしさとかまた違うそれは、今となってはほとんどBGMと同じようなものだった。いつも通り定食を注文してから席に座る。先輩も莉子と同じようなものを注文していた。
「何かを成し遂げるって難しいわよ」
「そうですけど、常に同じ自分でいることが嫌なんです」
「なんか難しいこと考えてるわね」
苦笑する先輩と向かい合いながら、いつもの定食を食べる。味は抜群に美味しいわけじゃないけれど、安定した味で満足感がある。先輩に教えてもらったメニューだった。ゆっくり食べていると、先輩が提案を投げかけてきた。
「莉子ちゃんはいつもそのメニューを食べてるでしょ?」
「え?えぇ、まぁそうですね。先輩が教えてくれて助かってます」
「それを例えば、明日から別のメニューに変えてみる」
「え、なんでですか?」
怪訝そうな顔をする莉子に、真面目なトーンで話を続ける先輩。その意図が全く分からなかった。
「大きなことはすぐには成し遂げられないのよ」
「えぇまぁ、そうですね」
「私もできることならすぐ結婚したいけど、それが出来ないからとりあえず交際してみる。それで慎重に段階を踏みながら考えるのよ」
「なるほど」
「別に恋愛じゃなくても同じことなのよ。食堂で食べてるものを変えてみるとか。いつもと違う道で帰ってみるとか。いつもとちょっと違うことをやってみれば新しいことが分かる。そして、それが自分に向いているかも分かる」
莉子より遥かにいろんなことを経験したことが分かるその説明には、説得力のようなものを感じた。そうしている間にも昼休みの時間は過ぎていき、少しずつ人も捌けていく。スマートフォンで時計を確認すると、あと15分で昼休憩が終わる時間だった。
「あら、もうこんな時間。話し過ぎちゃったわね。戻りましょうか」
「分かりました」
食堂の席を立って、食器をレジへと持っていく。システムはよく分からないがセンサーが反応して会計額が表示され、社員証をかざせば給料から天引きされる。
事務所に帰ってくると、ほとんどの人が席に着いていた。しかし、まだ昼の仕事は始まっていないこともあって、席で寝ている人もいれば雑談している人もいる。席に着いて、その少し離れたところに先輩も座る。午後に向けて仕事をする前に一休み。午後からはどうしようかと考えて、チャイムがなるまで過ごすことにした。
「相変わらず何かを考えてるわね」
「えぇ、まぁ。どうやったら今の状況を抜け出せるのかなって考えてます」
「今の状況?この仕事してる環境のこと?」
「まぁそれもあるんですけど、私自信が変わっていかなきゃなって思ってます」
「そうかしら。今でも十分魅力的だと思うけど」
疑いことなく魅力的だと言ってくれる先輩には感謝したいのだけれど、いまいち何が魅力なのか分かっていないので反応に困る。そこそこ広いオフィスの中で、特に仕事に関係のない話をしながら過ごす。それも、莉子にとっていいことなのか悩ましいことだった。
仕事の手を止めないことを意識はしつつ、先輩への悩み相談も止まらない。
「25年間生きてきたのに何もできてないんですよ」
「みんなそんなもんよ。莉子ちゃんが偉人になりたいのなら別だけど」
「別にそういうわけじゃないんですけどね」
先輩がゆっくりと、しかし的確な返答をくれる。確かに莉子は偉人になりたいわけではない。そういう意味で何かを成し遂げたいわけではない。しかし、常に前に進みながら生きていきたいと思っていた。
なんだか周りの空気が緩んできた。そんな周りも気にせず回覧物に印鑑を捺し始めたところで、チャイムが鳴った。
「莉子ちゃん、お昼よ」
「え、もうそんな時間ですか」
捺し始めた印鑑を置いて、食堂へ向かう。最近はずっと先輩と食べている。事務所を出て廊下を抜けて、5分ほど歩けば食堂がある。仕事中の騒がしさとかまた違うそれは、今となってはほとんどBGMと同じようなものだった。いつも通り定食を注文してから席に座る。先輩も莉子と同じようなものを注文していた。
「何かを成し遂げるって難しいわよ」
「そうですけど、常に同じ自分でいることが嫌なんです」
「なんか難しいこと考えてるわね」
苦笑する先輩と向かい合いながら、いつもの定食を食べる。味は抜群に美味しいわけじゃないけれど、安定した味で満足感がある。先輩に教えてもらったメニューだった。ゆっくり食べていると、先輩が提案を投げかけてきた。
「莉子ちゃんはいつもそのメニューを食べてるでしょ?」
「え?えぇ、まぁそうですね。先輩が教えてくれて助かってます」
「それを例えば、明日から別のメニューに変えてみる」
「え、なんでですか?」
怪訝そうな顔をする莉子に、真面目なトーンで話を続ける先輩。その意図が全く分からなかった。
「大きなことはすぐには成し遂げられないのよ」
「えぇまぁ、そうですね」
「私もできることならすぐ結婚したいけど、それが出来ないからとりあえず交際してみる。それで慎重に段階を踏みながら考えるのよ」
「なるほど」
「別に恋愛じゃなくても同じことなのよ。食堂で食べてるものを変えてみるとか。いつもと違う道で帰ってみるとか。いつもとちょっと違うことをやってみれば新しいことが分かる。そして、それが自分に向いているかも分かる」
莉子より遥かにいろんなことを経験したことが分かるその説明には、説得力のようなものを感じた。そうしている間にも昼休みの時間は過ぎていき、少しずつ人も捌けていく。スマートフォンで時計を確認すると、あと15分で昼休憩が終わる時間だった。
「あら、もうこんな時間。話し過ぎちゃったわね。戻りましょうか」
「分かりました」
食堂の席を立って、食器をレジへと持っていく。システムはよく分からないがセンサーが反応して会計額が表示され、社員証をかざせば給料から天引きされる。
事務所に帰ってくると、ほとんどの人が席に着いていた。しかし、まだ昼の仕事は始まっていないこともあって、席で寝ている人もいれば雑談している人もいる。席に着いて、その少し離れたところに先輩も座る。午後に向けて仕事をする前に一休み。午後からはどうしようかと考えて、チャイムがなるまで過ごすことにした。
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