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あなた
4話
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合コンの次の日も、その次の日も、望月から連絡が来ることはなかった。ありがたいと言えばありがたいのだが、飲み会の時に結構な勢いで迫られていたような気がした莉子は、不思議な感覚に襲われていた。週明けの月曜日。今日は後輩と出勤することになっていた。
「おはようございます」
「おはよう」
「出勤しましょうか」
「めんどくさいけどね」
家の鍵を閉めて廊下を歩く。望月のことは気になっていたが、話題に出せないまま駅まで歩く。後輩はそんなことを気にすることもなさそうに歩く。
毎日毎日本当に飽きずに働くもんだと思いながら電車に乗ると、後輩が話しかけてくる。
「そういえば、望月さんから連絡とかありましたか?」
「いいえ、全くよ。気になってるんだけど、こっちから連絡するほどじゃないし」
「この土日、望月さんとラインしましたけど、先輩の話少しだけ出てきましたよ」
「え、どういうことよ」
「なんか、バリアというか自分を守ってる感じがすごいって言ってました」
「あー、なるほど」
「そんな感じだったんですか?」
「まぁ、あの人に対してはそうだったかもしれないわ」
後輩から言われたことに正直自覚はあった。最初の時点で踏み込まれたくないと思ってから、当たり障りのない返答だけをした飲み会だった。莉子のイメージする合コンとは程遠い。
電車に揺られている間も降りて歩いている間も考えていたが、結局自分が何をしたいのかが分からなくなった。会社の門を潜り、後輩と別れる。
「じゃあ、また連絡します!」
「えぇ、待ってるわ」
部署が違えば建物も違う。最近まで後輩と会わなかったのはそれもあるだろう。エレベーターで2階に上がって挨拶をする。
「おはようございます」
「おはよう。今週も頑張りましょうか」
「ええ、頑張りましょう」
先輩の横の席についてパソコンを立ち上げる。いつもと変わらない月曜日。金曜日に特殊な仕事は片付けたけれど、いつもと同じ仕事があることには変わりない。恋人がいれば変化があったりするのだろうか。脈絡もなければ論理的ですらない思考を振り払いながら、キーボードを叩く。
「そういえば、合コンどうだったの?」
「うーん、なんか微妙でした」
「あらそうなの。盛り上がらなかったの?」
「そういうわけじゃないんですけど、幹事に話しかけられて色々話した時に、なんか苦手だなって思っちゃって。楽しかったんですけど、壁一枚張っちゃった感じですね」
「なるほど。大変だったのね」
「えぇ、まぁ」
経験豊富な先輩は、そういうことも経験しているのだろう。結局先輩が彼氏とどうしたのか聞いていなかった。しかしズケズケと踏み込むことは躊躇われる。悶々としながらも仕事はいつも通りこなす。
午前中も気がつけば半分を過ぎ、10時を過ぎていた。いつも通りのはずなのに幹事だった男が頭をちらちらと動き回る。
「莉子ちゃんいつもより落ち着きないわね。そんなに気になってるの?」
「えぇ、まぁ」
「気になるなら連絡しちゃえばいいのに」
「いや、うーん、それはちょっと」
流石にこちらから連絡するのは気が引ける。しかし、このまま引き摺るのは精神衛生上良くない気もする。いつも通り仕事をしているつもりでもどこかで集中できていないことは分かっていた。
書類の回覧も一通り終わり、パソコンとの睨み合いの仕事になる。ため息をつきながらキーボードを叩くと先輩が声をかけてくれた。
「随分と悩んでるわね」
「まぁそうですね」
「今度私の後輩でも紹介してあげようか」
「え、あぁ、はい」
「別に強制はしないけどね。それにデートしてってわけじゃないわ。私の部屋に莉子ちゃんと後輩を呼ぶわよ」
「なるほど」
「今週の金曜日なんかどうかしら」
「別に予定はないですけど」
「分かったわ」
手でサインを出しながら手帳に予定を書き加えていく先輩。莉子は手帳が使えないタイプだったので少し羨ましかった。
完全に集中が切れてから10分。体を伸ばしたりトイレに行ったりしながらなんとか誤魔化していると、チャイムが鳴った。
「お昼ね。食べに行きましょうか」
「行きましょう!」
待ち焦がれていたかのような声で反応し、一旦席に座る。社員証を取り出して立ち上がると、先輩はすでに立ち上がって手招きをしていた。その動きに吸い込まれるように動き、後ろをついていく。その時、なぜか先輩が輝いているように見えた気がした。
「おはようございます」
「おはよう」
「出勤しましょうか」
「めんどくさいけどね」
家の鍵を閉めて廊下を歩く。望月のことは気になっていたが、話題に出せないまま駅まで歩く。後輩はそんなことを気にすることもなさそうに歩く。
毎日毎日本当に飽きずに働くもんだと思いながら電車に乗ると、後輩が話しかけてくる。
「そういえば、望月さんから連絡とかありましたか?」
「いいえ、全くよ。気になってるんだけど、こっちから連絡するほどじゃないし」
「この土日、望月さんとラインしましたけど、先輩の話少しだけ出てきましたよ」
「え、どういうことよ」
「なんか、バリアというか自分を守ってる感じがすごいって言ってました」
「あー、なるほど」
「そんな感じだったんですか?」
「まぁ、あの人に対してはそうだったかもしれないわ」
後輩から言われたことに正直自覚はあった。最初の時点で踏み込まれたくないと思ってから、当たり障りのない返答だけをした飲み会だった。莉子のイメージする合コンとは程遠い。
電車に揺られている間も降りて歩いている間も考えていたが、結局自分が何をしたいのかが分からなくなった。会社の門を潜り、後輩と別れる。
「じゃあ、また連絡します!」
「えぇ、待ってるわ」
部署が違えば建物も違う。最近まで後輩と会わなかったのはそれもあるだろう。エレベーターで2階に上がって挨拶をする。
「おはようございます」
「おはよう。今週も頑張りましょうか」
「ええ、頑張りましょう」
先輩の横の席についてパソコンを立ち上げる。いつもと変わらない月曜日。金曜日に特殊な仕事は片付けたけれど、いつもと同じ仕事があることには変わりない。恋人がいれば変化があったりするのだろうか。脈絡もなければ論理的ですらない思考を振り払いながら、キーボードを叩く。
「そういえば、合コンどうだったの?」
「うーん、なんか微妙でした」
「あらそうなの。盛り上がらなかったの?」
「そういうわけじゃないんですけど、幹事に話しかけられて色々話した時に、なんか苦手だなって思っちゃって。楽しかったんですけど、壁一枚張っちゃった感じですね」
「なるほど。大変だったのね」
「えぇ、まぁ」
経験豊富な先輩は、そういうことも経験しているのだろう。結局先輩が彼氏とどうしたのか聞いていなかった。しかしズケズケと踏み込むことは躊躇われる。悶々としながらも仕事はいつも通りこなす。
午前中も気がつけば半分を過ぎ、10時を過ぎていた。いつも通りのはずなのに幹事だった男が頭をちらちらと動き回る。
「莉子ちゃんいつもより落ち着きないわね。そんなに気になってるの?」
「えぇ、まぁ」
「気になるなら連絡しちゃえばいいのに」
「いや、うーん、それはちょっと」
流石にこちらから連絡するのは気が引ける。しかし、このまま引き摺るのは精神衛生上良くない気もする。いつも通り仕事をしているつもりでもどこかで集中できていないことは分かっていた。
書類の回覧も一通り終わり、パソコンとの睨み合いの仕事になる。ため息をつきながらキーボードを叩くと先輩が声をかけてくれた。
「随分と悩んでるわね」
「まぁそうですね」
「今度私の後輩でも紹介してあげようか」
「え、あぁ、はい」
「別に強制はしないけどね。それにデートしてってわけじゃないわ。私の部屋に莉子ちゃんと後輩を呼ぶわよ」
「なるほど」
「今週の金曜日なんかどうかしら」
「別に予定はないですけど」
「分かったわ」
手でサインを出しながら手帳に予定を書き加えていく先輩。莉子は手帳が使えないタイプだったので少し羨ましかった。
完全に集中が切れてから10分。体を伸ばしたりトイレに行ったりしながらなんとか誤魔化していると、チャイムが鳴った。
「お昼ね。食べに行きましょうか」
「行きましょう!」
待ち焦がれていたかのような声で反応し、一旦席に座る。社員証を取り出して立ち上がると、先輩はすでに立ち上がって手招きをしていた。その動きに吸い込まれるように動き、後ろをついていく。その時、なぜか先輩が輝いているように見えた気がした。
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