明太子

ぽよ

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あなた

7話

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 仕事終わりのことを考えながら仕事をすること半日。午後の仕事も半分が過ぎて時計は15時を回っていた。そわそわしながら仕事をすること自体は問題ないのだが、事務処理に間違いがないか確認が増えて非効率だった。いっそのこと先輩に話そうかと思ったが、それもなんとなく憚られた。
 就業まで何とかギリギリだが、集中力が持ち堪えた。深いため息をついてから、体を伸ばして帰る準備をする。先輩も足早に帰る準備をしていた。

「お疲れ様。いきましょうか」
「お疲れ様です。いきましょう」

 行く場所は喫茶店でも遊園地でもなく先輩の家なのだが、不思議な緊張感が漂っていた。しばらく歩くと見知らぬ人影が見えた。こっちに向かって手を振っているが、全く身に覚えがない。その男に接近しきったところで先輩が話しかけていた。

「お疲れ様。仕事にはもう慣れた?」
「先輩、それこの前も聞きましたよ」
「まぁいいじゃないの。あ、この子が莉子ちゃんよ」
「あ、初めまして」
「初めまして。なんとなく話は聞いてます。小倉っていいます」

 小倉と名乗ったその男は、身長が少し高めで柔和な印象を受ける。どこにでもいる普通のサラリーマンという感じだった。
 そこから3人で歩くこと15分。先輩の家に到着した。3階建アパートの角部屋だった。

「ただいまー」
「おじゃまします」
「おじゃましまーす」

 先輩に続いて莉子と小倉も入る。廊下は狭いわけでもなく、広いわけでもないが、キッチンは広く、おそらく風呂とトイレとも別だという長さをしていた。廊下を抜けて部屋に入ると、いかにも一人暮らしという部屋がそこには広がっていた。

「あんまり物があるわけじゃないけど、座れると思うから適当に座って」
「ありがとうございます」

 莉子が座るのと同時に小倉も座った。この部屋に来るのも座るのも随分と手慣れているように見えた。
 先輩がご飯を作っている間、ただひたすら待つのも気が引けたが、特に何かができるわけでもない。そわそわしながら待つ。

「できたわよ。麻婆豆腐」
「美味しそう!」
「いいですね!」

 先輩が麻婆豆腐を持ってきてからご飯も装って持ってくる。その後にはお酒を持ってきていた。

「私はビール。莉子ちゃんはハイボール。小倉君は烏龍茶」
「ありがとうございますー」
「お酒じゃないんですね」
「小倉君には終電で帰ってもらうから」
「なるほど」

 よくわからない線引きだが、男は絶対に泊めないという鋼の意志なのかもしれない。
 食事は恙無く進み、莉子もそこそこお酒を飲み進めたタイミングで、気になったことを聞いてみた。

「そういえば先輩と小倉さんってどんな関係なんですか?」
「大学のサークル仲間よ」
「恭子さんにはお世話になりました」
「彼氏だったこともあるけど、私がダメだと思って別れてもらったわ」
「そんな過去もあるんですね」

 地雷を踏んだかと思ったがそれはギリギリ回避したらしい。無害そうな男に見えるが、先輩が酒を飲ませないというところにそれとなく警戒を感じる気がしなくもない。
 3人で話しながら食べる夕食もいよいよ食べ終わり、特に話すこともなくなってきた。莉子はそんなことを思っていても、先輩はそうでもないらしい。

「はいはいご飯食べたらさっさと帰る。ここから先は男子禁制よ」
「えー、まぁ、帰りますけど」

 若干不服そうな小倉を立ち上がらせて、無理やり玄関へと追い込む先輩。なんとなく恋人だった頃の面影らしき物が見えた気がする。
 先輩が部屋に戻ってくる時、もう一本缶の酒を持ってきた。

「はい、じゃあここからは女子会。はいハイボール」
「ありがとうございます。先輩はビールなんですね」
「大人の女って感じでしょ?」
「まぁ、分からなくはないですけど」

 だいぶ酔っているんじゃないかと思う莉子だったが、夕食をご馳走してもらった身分なので、それっぽく流すことにした。

「小倉君はたまーに来るのよ」
「なんかそんな感じでしたね。慣れてる感じがしました」
「大学の頃に2ヶ月くらい付き合ってたけどなんか恋人には向いてないって感じだったのよね。友達だったら楽なんだけど」
「私と小倉さんは何か関係あったんですか?」
「まぁ会わせてみたかっただけよ。相性が悪くないなら良かったわ」
「はぁ」

 先輩の意図がわからず生返事を返すだけになったが、先輩はなぜか満足そうな顔をしていた。
 不思議な空間のまま時間が過ぎ、気が付けば22時になっていた。

「あら、もうこんな時間なのね。お風呂入って歯を磨かなきゃ」
「私もです。今日は帰らないと」
「泊まっていきなさいよ。明日に何もなければだけど」
「特に予定はないですね」
「じゃあ決定ね」

  急に笑顔になった先輩を見ながら、たまにはそんな時もあると自分を納得させる。
 そのまま女子会は進行し、先輩からいろんな話を聞く。そんな時にふと思った。いつでもなんでもできる先輩は、いろんな人生があるからなんだと、その時気付いた。
 
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