明太子

ぽよ

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終着点

2話

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 後輩と作ったハンバーグを食べる。人と夕食を食べるのは随分久しぶりだった。

「美味しいですね!ハンバーグ」
「頑張って作った甲斐があるわ」

 相変わらず後輩は作ったご飯を美味しそうに食べてくれる。白米と一緒に吸い込まれていく夕食。大学の頃からよく食べるとは思っていたけど、それは衰えていないらしい。
 夕食を食べ終わり、食器をキッチンに流してから一息つく。時刻は21時だった。

「なんだか思ってたより遅くなっちゃったわね」
「お風呂入らなきゃですね」
「一緒に入る?」
「え?」
「一緒に入る?」
「え、いいですけど…」

 了承しながらも挙動不審になる後輩。考えなくても当たり前だった。莉子も先輩とお風呂に入ったことはない。
 脱衣所で服を脱いでいると、後輩もそれについてきて服を脱ぎ始める。自分から誘ったにも関わらず、なぜか動悸があった。

「先輩は恭子さんとお風呂入ったことあるんですか?」
「もちろんないわよ」
「もちろん無いんですか。というかなんで急に誘ったんですか?」
「なんとなくよ。私もドキドキしてる」

 誰かとお風呂に入るなんてことは、高校の修学旅行以来だった。なぜ誘ったのかも分からなければ、なぜそれが考えに浮かんできたのかさえも分からない。
 二人で入るには少し狭い風呂で40度の湯を浴びて頭を洗う。少しずつ涼しくなっているとは言え、汗はかく。しっかり洗っておかなければいけない。莉子も後輩も髪の毛は長くない。洗うのは髪の長い人ほど大変ではなかった。

「先輩、背中流してあげますよ」
「え、あぁ、うん」

 声がした方を振り向くと後輩が悪役のような顔をしていた。勢いに流されて了承すると、後輩が体を洗うタオルを持って泡立てていた。
 人生で初めての経験に動悸が止まらない。しかし、誘ったのは莉子なので、抵抗はできない。

「あ、待って!こしょばい!」
「先輩この辺弱いんですね」
「やめてってば!」

 後輩からの攻撃にワイワイしながら背中を洗ってもらう。それ以外の部分は自分で洗う。汗をかいた分色々と大変だが、匂いにして残すことだけはしたくない。

「じゃあ私も由佳の体洗おうかな」
「お願いします!」

 一度泡を流してからもう一度泡立てて、後輩の背中を洗う。こうしてみると綺麗な背中をしている。その背中にタオルを当ててなぞる。

「あ、ちょっと先輩!こしょばいです!
「あら、由佳もこの辺弱いのね」
「ちょっと!先輩!タイム!タイムです!」

  大笑いしながら止めようとする後輩。最後まで洗ってから手を止める。後輩が振り向くと膨れっ面になっていた。

「もう!こしょばかったじゃないですか!」
「由佳も止めなかったから大丈夫かなって」
「死ぬかと思いました」

 会話が終わっても身構える後輩にタオルを渡す。そのあと後輩が体を洗っている間はのんびり待っていた。
二人とも体が洗い終わり、洗顔もしたところで、風呂から出る。

「なんだか疲れちゃいましたね」
「笑うっていうのはエネルギーを使うからね」

 脱衣所で体を拭いて、服を着る。夕食も食べてあとは寝るだけだ。歯を磨いて部屋に戻ると、涼しい部屋が待っていた。

「先輩、これ冷房何度ですか?」
「私はずっと除湿なのよ」
「20度くらいの冷え方ですけど」
「あら、当たりよ」
「風邪ひきそうですね」
「寝る時だけ23度にするのよ」
「なるほど」

 莉子にとってはそれが標準だった。暑い日は除湿と冷房のローテーションだ。
 二人で布団に寝転がりながらスマートフォンを操作する。SNSを見たり、流行りの動画を見たりする。後輩がスマートフォンの操作をやめたと思ったら、顔を近づけてきた。

「なんでお風呂に誘ったんですか」
「え?」
「なんで、お風呂に誘ったんですか」
「恋人がいたらこんな感じかなって思ったのよ」
「私、嬉しかったです」
「うん」
「でも、寂しかったです」
「うん?」
「きっと、私は先輩には選ばれないんだろうなぁって」

 その時の後輩の顔は、今まで見た中で一番悲しい顔だった。でも、後輩の予想は当たっている。莉子には、後輩の気持ちを受け止められなかった。その言葉は、自分から言わなければいけない。

「ごめんね」
「はい」
「私には、由佳の気持ちを受け止めるだけの度胸がないのよ」
「私、本気で好きなのに」
「こうして同じ布団で寝ているのもすごいことなのよ」
「そりゃそうですよ!私ドキドキしてますよ!」
「由佳のお願い聞いてあげるから、それで許して」
「じゃあ頭撫でてください」
「いいわよ」

 後輩はそう言うと体を寄せてくる。その頭を撫でると、気持ちよさそうにしたあと、寝息を立てていた。
 本当に選択はこれでよかったのだろうか。今でもそれは変えられないだろうか。人を好きになる。人に好かれる。その狭間で莉子は、自分がどんな選択肢を取るべきなのか分からなかった。
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