短編集

ぽよ

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「雪山ねえ」
「綺麗に死んでくれたよ」

 ここは山小屋。見事に凍死した遺体を見ながら男は呟く。そしてその被害者を殺した殺人犯が自分の友人であることが信じられなかった。

「まず意識を落とすじゃん」
「前提がおかしいがまぁ聞いてやろう」
「そこの7合目までは車で来れるから来るじゃん」
「あぁ、うん」
「そこからは背負って8合目まで登って雪の上に放置」
「今日吹雪なのは狙ったのか」
「全く。そのせいで今日帰れそうにねえ」
「俺は呼んだのはなんでだ」
「なんとなく。お前がきてからの吹雪は予想してなかったら巻き込んで悪かったな」
「あぁ、おう」

 飄々と語る目の前の友人は、本当に外の吹雪を予想していなかったのか。腹の中までは知る由もない。外の吹雪とは全く異なる様相を呈する山小屋の中は、暖房器具が効いていた。断熱もしっかりと施されており、まるで異世界に飛ばされるような気分になる。しかし、そんな気分を味わっていられるほど呑気なことは言ってられない。ここからどうやって逃げるのか。それをきちんと考えているのか。

「逃げ方?別にこの吹雪が止んでから車で逃げればいいだろう」
「いつ止むんだ?」
「知らねえ」
「おい!水と食料はあるのか?」
「ここには2日分しかねえ」
「大丈夫かよ」
「分からん。でも遺体はこの吹雪の中に放り込めば確実に見つからなくなる。俺は逮捕されなくなる」
「まじかよ」

 適当な返答しかしてこない友人に呆れながら、これから先のことを少しだけ考える。俺も含めてこいつが逃げ切れるかどうかは外の吹雪にかかっている。今はただ助かることを祈るしかない。しかし、こんな吹雪の中でそんな心配が意味をなさない事もなんとなく分かっている。

「はぁ、どうすっかなぁ」
「なるようにしかならねえよ」
「お前が言うんじゃねえよ」
「ま、大丈夫だよ、多分」
「はぁ」

 こんな状況でも能天気な友人と共に真っ白な吹雪を避けるために山小屋に籠る。無事生きて帰れることを祈って。
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