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走る、走る、走る。

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走る、走る、走る。
ダンサンと愛しのエリーは、逃げる為に走る。追いかける護衛騎士の二人が、二人を捕まえようと走る。

その後を陛下も、走る。

ゴールは、開いた舞踏会会場の扉か。


「結構、早いですね。」
「くっ、会場内に入られたら厄介だ。手前で捕まえないと。」
護衛騎士が足を早めると、追われる二人も足が速まる。追われるものは、藁を持つかむ速くもなるものだろうか。

「なんか、笑ってませんか? 」
「もっと足を早めろ!! 」
どんどんと、ダンサンとエリーが舞踏会会場の扉に近づく。焦る、護衛騎士の二人。

「扉を閉めろ!! 」
扉のから出て来た、先程別れた護衛騎士三人に団長は叫んだ。三人は咄嗟の事で、体が動かなかった。その隙にダンサン王子と愛しのエリーが護衛騎士の間を駆け抜ける。

「しまっ、た!? 」
と思って、呆然とする団長。

「あれ、れ? 」
副官も、目を見開いた。

会場内にと思ったら、三人の護衛騎士を擦り抜けて扉の前を横切り廊下をそのまま走っていった。護衛騎士三人もびっくり。



「僕の愛しのエリー、頑張るんだ!! 」
「私たち、なぜ追われてるの~? 」
ダンサンはエリーの手を取り、二人は護衛騎士から逃げる為に走っていた。

「なぜ、だろう? 」
ダンサンもなぜ追われているのか、分からず頭を捻った。

「でも、物語の愛の逃避行のようです~ 」
「そうだな、愛の逃避行だな!! 」
二人は『ふふふっ、あはは』と楽しそうに笑い合い、走る。目の前に開けた扉、護衛騎士三人。それすら目に入らず、素通りして走る、走る。

「あはは、愛の逃避行だ!! 」
「うふふっ、愛の逃避行です~ 」
『愛の逃避行』=手に手を取って、外に逃げる。二人の頭の中は、外に逃げることに傾いていた。

外=庭。
二人は笑いながら、外へと愛の逃避行へ向かった。

「なぜ、会場内に入らなかったのだ? 」
「目立ちたがり屋なのに、」
「笑ってますね…… 」
「か、考えが分かりません。」
団長の言葉に、追うのに加わった三人が応える。

「阿呆だから、でしょうか~ 」
「「「「ああ…… 」」」」
副官の答えに、団長と三人の部下は納得と頷いた。

(((((阿呆の考える事は、分からん!! )))))
その場の五人の共通認識であった。 

「うふふっ…… 」
「あははは…… 」
その間も、阿呆殿下達は手を繋いで笑いながら廊下を走っている。

「笑ってますね。」
「何が楽しんでしょう? 」
「か、考えが分かりません!! 」
三人の護衛騎士。

「兎に角、外に向かってくれたことは有り難いことだ。」
「そうですね、早く捕まえましょう。」
団長と副官。

「ふぅ、ふぅ、ひい、」
後を追う、陛下。


だが、愛の逃避行の終わりはやってきた。噴水を後ろに、護衛騎士五人に囲まれてしまった。

「ダンサンさま~!! 」 
「ああ、僕の愛しのエリー!! 」
二人は体を寄せ合い手を取り合った。

「どうして、僕達を追うのだ!! 」
「私たち、引き離されてしまうのです~ 」
「そんなことはさせないぞ!! 僕達は真実の愛で結ばれているのだからな!! 」
「ダンサンさま~ 」
二人は舞台の役者のように盛り上がった。見つめ合う瞳と瞳、温もりも信じ合い抱き合う二人。

噴水が水を吸い上げ、キラキラと灯した明かりに照らされる。二人にとっては絶好の舞台となっていた。


「「たちは、離れない!! 」」
「その事は、陛下が決めますので。」
団長は、冷静に対処する。逃さぬように、周りを護衛騎士が二人を囲っている。

「陛下!! 早く早く、捕まえましたよ!! 」
副官が、闇夜にこっちこっちと手招きをしている。その闇に、

「はぁ…… わ、わかって、おる。ぜぇぜぇ…… 」
息を切らしながら走って来る、陛下。
足はふらふらで、汗だくである。

「あ、パパ上!! 」
「パパ上、言うな!! 父上と呼べ!! 」

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