【完結】婚約破棄されかけた令嬢は、走る。

❄️冬は つとめて

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副官は、走る。

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「サイオン、あなたは駄目駄目ね。」
フィーリアが会場に辿り着くと、サイオン殿下が王妃に扇で頭を叩かれていた。

「母上、おやめ下さい。」
「女性にはで伝えないと、伝えたいことも伝わらないのよ。」
ペシペシ、扇で頭を叩く。

「頭は良くっても、賢くはまりませんわサイオン。駄目駄目ね。」
「駄目駄目だな、フィーリア嬢を不安にさせてどうする。」
王妃と共に陛下もサイオンに苦言を言う。周りの者は、完璧王太子と言われるサイオンの珍しい光景を見るのであった。

「サイオン様… 」
「リア…… 」
サイオンは母の叱咤を逃れるようにフィーリアのもとに足を運んだ。

「リア、すまない。私の気持ちは伝わってると勝手に思っていた。」
「サイオン様。」 
サイオンはそっとフィーリアの頬に手を伸ばす。

「私は君が、フィーリアが好きだ。」
愛しそうにフィーリアを見て、優しく微笑んだ。フィーリアの瞳から涙が溢れた。

「わ、私も、サイオン様を、お慕いしております!! 」
フィーリアも大声で叫んだ。サイオンはフィーリア顔を抱き寄せ、額を合わせた。

「ははは…… 伝え合う事はとても嬉しいことだね。」
「は、はい!! 」
屈託のない子供のような明るい笑顔をサイオンはフィーリアに見せた。

「サイオンも、まだまだ子供だな。」
「フィーリア嬢、優雅にかつ華麗にですわよ。」 
陛下は王妃に手を差し出す。

「我々で時間を稼ごう。」
陛下と王妃は、フィーリアの身なりを整える時間を稼ぐために先に会場内に登場した。



(ダンサンの所為で)裏では嵐のような婚約披露パーティーは、表では滞りなく終わった。
その後は、夜会の舞踏会へと突入していた。

「疲れただろう、リア。」
「いえ、サイオン様こそ。」
手を取り見つめ合いながら、サロンの椅子に隣同士に座る二人。互いに思いの通じ合った二人は、人目も憚らずいちゃいちゃしていた。

「仲睦まじいことは、よいことですわ。ほほほっ。」
王妃は笑う。
婚約披露も終えた王族達は会場を後にし、こじんまりしたサロンで家族水入らずの時を過ごそうとしていた。

「ダンサンはどうした? 」
家族間の中では少々やらかしても構わないと、ダンサンをサロンに呼ぶよう連絡を入れた。

暫くして、ダンサンがサロンの扉を自分で開けて入ってくる。後ろに護衛騎士の副官がヨレヨレになって付き添っていた。

「パパ上、ママ上!! 」
「ダンサン、扉を開ける時は中にいる者の確認を取れと言っているだろう。」
「はい!! 」
ダンサンは元気よく返事をした。ダンサンは返事だけは、元気でよかった。

「にい上、ねぇ上!! 僕は、元気です。」
「ああ、それはよかった。」
「はい!! 」
仲良しな兄達に、ダンサンは嬉しそうに笑った。

「それで、今まで何をしていたんだい? 」
「かくれんぼをしてます。」
過去形でなく、現在進行形。

「それは…… 暗殺者遊んでくれる人を探しているのかい? 」
「愛しのエリーを探してます。」
「「愛しのエリー? 」」
王太子とその婚約者は首を傾げた。

「僕の真実の愛です。僕はまだ、オードリーから婚約破棄されてませんが、僕はしました。
僕と愛しのエリーは真実の愛で、今かくれんぼの追いかけっこしてるのです。」
「通訳!! 」
ダンサンの言葉に、陛下は通訳を所望した。

「ダンサン殿下は、お菓子の家ではなく。お菓子の部屋で過ごされ…… 急にエリー嬢が「捕まえてみて~」と走り出し、部屋を出られ。それを今現在、捜索中です。」
「まだ、見つかりません!! 」
お菓子をお腹いっぱい食べたエリーは、恋人同士のお花畑で「捕まえてご覧なさ~い 」「あはは、待て~こいつ~ 」がしたくなって部屋から走り出して行ってしまったようだ。

その後を追ったはずが、ダンサンは愛しのエリーを見失ってしまったのだった。あれこれ、部屋から出て一時間は探し回っている。
城中を走り回るダンサンに付き添い走る護衛騎士の副官は、ヘトヘトであった。

底知れぬ体力を持つダンサンであった。阿呆故に、を知らないのかも知れない。






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