悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
16 / 128

セルビィの欲しいもの。

しおりを挟む
ガタガタと、馬車が揺れている。園遊会を後に馬車は、北に向かって進んでいた。このまま、進むと王都を出てしまう。
「セルビィ、何処に行くんだ? 」
ナルトは、声を掛けた。
「欲しい『もの』が、有るです。」
セルビィは、ナルトの疑問に答えた。
「欲しいもの? 」
セルビィは、微笑んだ。その微笑みに、ナルトは背筋を寒くする。
セルビィは、嬉しそうに馬車の窓から外を眺めている。有る一画に来ると、
「止めて下さい。」
そう言って、馬車を降りる。その姿は簡素な白いドレスと、金色の髪のまま。
慌てて、ナルトも馬車を降りる。
其処は、街の寂れた場所。簡単に言うと、スラムである。昼間と言うのに、何故か薄暗い。気にする事も無く、セルビィはその一画に入って行く。
「おい、何処に行く気だ。」
ナルトは、手を掴んでセルビィを止めた。当然だ、昼とは言え場所はスラム。セルビィの様な綺麗な子供が、入る場所ではない。直ぐに目に付き、カモにされるか。誘拐、されるか。
「ここは、お前の行く所じゃない。」
「欲しい『もの』が、有るです。」
セルビィは、ナルトの手を放した。そのまま、スラムに入って行く。
「欲しいものって!? 」
ナルトも、セルビィを追い掛けてスラムに入った。

スラムと言っても、働かなければ生きては行けない。
王都の汚い仕事や危ない仕事を、ここに住む住民は安い賃金でやっていた。
昼間は、どちらかと言うと大人より、働く場所さえ無い子供がスラムに残っていた。子供達は、人が多く暗い夕暮れ時。その時期に街に出て店から、食べ物を盗んでは その日を暮らしていた。そんな、場所にいったい何があるのか。
「こんな場所に、何が有るんだ? 何が、欲しいだ? 」
ナルトは、周りを警戒しつつセルビィを問いただす。
「うん、と。もう直ぐ、吊れます。」
「吊れる? 」
話している時には、もう周りを囲まれていた。
ナルトは、セルビィを庇う様に前に出る。
「こんな所に、綺麗なお嬢様が何のようだ。」
一人の少年が、現れた。年の頃は、十四 五歳か。
睨み付ける様に、角から出て来る。ナルトは、剣に手を置く。
「物見遊山か、お嬢様。」
右手の方から、声が上がる。先ほどの少年と同じ位の少年が顔を出す。
十四から十二歳位の少年少女がざっと十人程、セルビィとナルトを囲んでいた。
髪の色は、豪の者と言うより鮮やかな色合いであった。でも、中にはやはり黒い色合いの子供も混じっていた。
「出て行きな、お嬢様。有り金全部、置いて。」
リーダー格の少年が、凄んで言った。
「お金なんて、持って無いです。」
セルビィは、高飛車に言った。
「お金を持ち歩くほど、僕は身分が低くは有りません。」
「なっ!? 」
少年少女が、怒りを露わにする。
「おい、セルビィ。挑発するな。」
ナルトが、セルビィを背に庇いながら言う。
「欲しいなら、上げます。ナルト様、持ってる? 」
何の気なしに、セルビィは言う。其れが、僅かに残る少年少女のプライドを刺激する。
「いい気になるな!! 護衛が、居るからって。一人位で、俺達を倒せると思うなよ!! 」
セルビィは、首を傾げて少年達を見る。
「一人じゃ、無いです。」
「お前、いつから知ってた。」
ナルトが、呟いた。
「最初から。」
セルビィが、応えた。ナルトは、顔を押さえた。
「だから、か。」
こんな危ない所に、平気で入って行けたのは。俺以外の護衛が付いている事を、知っていたからかとナルトは頭を抱えた。
「あの父様が、護衛を一人だけなんて信じられません。」
「まあ、な。」
あの激愛、オヤジが護衛一人で納得するはずはない。
(やっぱ、こいつ怖ぇ。)

そんな、話しをしている内に次々と子供達は捉えられていく。
「くそう!! 役人だったのか!! 」
リーダー格の少年が叫ぶと、セルビィは応えた。
「違うです。」
「教会の奴等か!! 俺達は、孤児院なんて入らねぇからな!! 」
セルビィは、微笑みながら言った。
「神は、幼き貴方達を救うために施設を作られたのです。」
祈る様に手を胸元で、組んだ。それは、天使の様に神々しかった。
だが、ナルトの背筋に冷たいものが流れる。
「うるせえ!! 俺達は知ってるんだ!! 」
リーダー格の少年が、声を上げる。
「そうだ、俺達なんか小間使いとしか思ってないだろ!! 」
黒に近い髪の少年達が、叫んだ。
「大きくなれば、他国に奴隷として売るつもりの癖に!! 」
「そうだ、俺達だって。奴隷として、この国の商人達に売られるんだ。」
明るい髪の少年達も、言った。
「この国に、奴隷は無いです。」
セルビィは、首を傾げて言う。
「仕事斡旋て言いながら、今までの生活費用だ何のって言って借金負わせて売り払うんだ。」
「表向きは、雇用ですか。」
何で、こいつは(セルビィ)こうも難しい言葉を知っているのか。ナルトは、頭を抱えたくなった。
「そうだ、お嬢様には解らないだろ。」
「国から、出るです。」
「国を出るにも、身分証が無いんだよ。」
「なるほど。勉強に、なりました。」
セルビィは、微笑みながら頷いた。
「まあ、そんな事はどうでもいいです。」
「「そんな事!? 」」
少年達は、声を上げる。
「僕は、欲しい『もの』があって此所に来たんです。」
「欲しいもの、そう言えば言ってたな。何だ? 」
ナルトの言葉に、セルビィはリーダー格の縛られている少年の前に行き 目線を合わせる様に膝を折った。

「友達になって、下さい。」

天使の笑顔で、セルビィは言った。

「「「はあぁ!? 」」」

其所に居る、総ての者が意表を突かれ固まった。

「あれ? 」

セルビィは、不思議そうに こてん と愛らしく首を傾げた。
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...