悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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藪をつついて、蛇を出す。

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ナルトです。
俺が、セルビィの護衛に付いてから五年。此奴が、十歳の時からだ。その間、此奴が泣いた処は(嘘泣き以外)見たことはない。
内面が魔王なので忘れていたが、此奴はまだ十五歳に成ったばかりの子供だった。
そして何より、此奴は箱入り娘 ならず箱入り息子 だった。恋愛に関して此奴は、お子様だ。姉のセルビアの叔父さんへの恋心にも、気付いていない。ハニートラップも、本に載っていた事で興味本位で行ったに過ぎない。
面白がって(本当に迷惑だが)相手の反応が楽しくって(本当に迷惑だが)
ただ、其れだけで 行った事なのだ。恋愛の良さも、恐ろしさも知らない お子様。
此奴の周りに有る恋愛は、令嬢達の政略結婚位だ。(他に女性がいないし。あ、マリアがいたな。だがマリアも、姉同様だし。)
大切な姉達を、取られまいと この国を潰そうとする 恐ろしい魔王だが。
恋愛は、お子様だった。
初めて相手から言い寄られて、迫られて怖かったに違いない。(自分からは、平気な癖に。)


「殺される。」
ナルトは、呟いた。
「お前、殺されるぞ。」
泣きじゃくる、セルビィを前にナルトは ビウェルに言った。
「は、何の事だ!? 」
「お前、殺されるぞ。」
大事な事を、ナルトは二度言った。だが、ビウェルは分かってない顔をする。
「此奴の父親は、あのセラム・ランドールだぞ。」
「漆黒の獅子 と、言われるランドール公だな。其れが? 」
「そうだ、あの親馬鹿のセラム・ランドールだ。」
「親馬鹿? 」
「そうだ、めちゃ 腕は立つが脳筋の親馬鹿の馬鹿だ。」
酷い、言い方である。
「此奴を泣かした お前は、殺される。」
「何故、私だけ。貴様も、同罪だろ。」
ナルトは、目を反らした。
「俺は、迫って無いし。怖がらして、無いし。」
「貴様!! 護衛の癖に、直ぐ助けなかっただろ!! 」
ビウェルの声に、セルビィは驚いて ますます泣きじゃくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい!! ごめんなさい、ごめんなさい!! 」

「・・・・・・。」
二人は目を、見合わせた。
「とりあえず、此奴を何とかしょう。」
「そうだな、どうやって泣き止ます? 」
二人は、押し黙った。

「セルビィ様。大人気なく、酷い事をしてしまい お許し下さい。」
とりあえず、謝って見た。

「ごめんなさい、ごめんなさい!! 」
「阿呆か、お前。」
ナルトは呆れて、ビウェルを見る。
「子供のあやし方など、知るか。貴様が、やってみろ。」
「子供のあやし方など、簡単だ。」
ナルトは、セルビィの前にやって来る。
「セルビィ、後でケーキ買ってやるから 泣くな。」
「食い物で、吊れるのか? 」
セルビィは涙目で、ナルトを見る。
「ご、」

「ごめんなさい!! 安月給なのに、貢がせて ごめんなさい!! 」
「貢いでないわ!! 無心されてるだけだ!! 」
「ごめんなさい!! おっさんなのに、似合わない制服着せて ごめんなさい!! 」
「おっさん、違うわ!! まだ、二十代だ!! 」
「ごめんなさい、ごめんなさい!! 」
わあっ と、泣きじゃくる。
ナルトは、壁に手を付いた。
「何時もより、胸に刺さるんだが? 」
落ち込むナルトに、
「子供は、残酷だからな。」
ビウェルは、応えた。
「セルビィ様、とりあえずソファに。」
その声に、
「ごめんなさい!! フレックス先輩 ちょろい と、思って ごめんなさい!! 」 
「ち、ちょろい!? 」
「ごめんなさい!! 変態にして、ごめんなさい!! 」
「わ、私は、変態じゃ 無い!! 」
「ごめんなさい、ごめんなさい!! 」
セルビィは、泣きじゃくる。
ビウェルは、その場に崩れ落ちる。
「胸を、抉られるとは この事を言うのか。」
「はは、餓鬼は残酷だからな。」
何時もなら、回りくどい言い回しをするセルビィが、直球の言葉を投げ掛ける。子供特有の配慮の無い言葉に。二人は、暗く落ち込んでいた。
部屋の中には、セルビィのすすり泣く声が響いていた。
(こっちが、泣きたわ。)
二人の心情であった。


小一時間すると、泣き疲れて眠ったセルビィに安堵する。
話し掛ければ、心を抉る言葉が返って来る。二人は、最初で心砕かれ セルビィを放棄した。
「寝たか? 」
「寝たな。」

「何なんだ、彼は!? 」
ビウェルは、ナルトの胸ぐらを掴んだ。
「シーーッ!! 声がでかい。」
「彼は、一体 何なんだ。」
小声で、話す。
「ハニートラップを、気軽に掛ける 彼が。あれ位で、何故 泣き出す。」
「此奴は、人から迫られたことは無い からな。」
「だからって、」
「仕方ないだろ、此奴はずっと大人に囲まれて 育って来たんだし。怒られ事も、無いし。」
ナルトは思い出しながら、話す。
「同じ年の子供と遊んでる処も、女性も姉の令嬢達以に話してる処も、見たことはない。」
ナルトは、少し哀しそう言った。
「ハニートラップは、此奴の遊びだな。此奴は、言葉遊びをして、楽しんでる だけだ。迷惑だが。」
「遊び!? 」
ビウェルは、再び心砕かれた。
「遊びに、私は・・・」
「安心しろ、お前だけではない。」
ナルトは、ビウェルの肩を掴んで慰める。だが、二人同時にため息を吐いて 落ち込んでいた。
「帰るわ。」
ナルトはセルビィを、抱き上げる。ビウェルに、
「もう、泣かすなよ。」
「泣かすか!! 」
小さい声で、叫ぶが ため息を付く。
「もう、懲り懲りだ。」
お子様モードのセルビィは、普段の数倍の破壊力を持っていた。言葉による暴力、此にはナルトもビウェルも。
もう、勘弁して欲しかった。
「はは、まあ 二度目はないな。此奴は、学習能力が高いからな。二度目は無い。」
ため息を、付く。
「今度は、男のあしらい方と言う本を 読みそうだ。」
そう、呟きながらナルトは出て行った。部屋の扉が閉じられ、一人残されたビウェルは。
「父上。あれは、化け物ではなく 魔物かと。」
泣きじゃくるセルビィに、不覚にも 護ってやらないと と、思ってしまったビウェルであった。
【化け物】人間離れした、能力を持つ人。
【魔物】人をたぶらかす、あやしい力を持つ者。
某、検索による。
ビウェルは、かなり たぶらかされて いた。



夕陽のなか、馬車はゆっくり と、走っていた。
馬車の中で座席にセルビィは、伏せるように横に成っていた。
「ナルト様は、護衛失格です。」
ナルトは、対する様に前に座っていた。外を見ていたナルトは、その声に振り向く。
「起きたか。」
「護衛失格です。」
恨みがましそうに、ナルトを横に成ったまま 見る。
「あれは、お前に 危機感を感じて貰おうと な。」
セルビィは起き上がり、
「安月給ですが、減俸です。」
「おい、セルビィ。」
セルビィは据えきった目で、ナルトを見る。
「ハニートラップは、封印です。」
「そうか、減俸されたかいがあったな。」
ナルトは涙する。
「姉様達を助ける前に、殺される訳には行きません。後なら、良いですが。」
「おい!! 」
ナルトはセルビィの肩を、掴んだ。
「痛いです、おっさん。」
「おっさん、違うわ!! そうじゃ無い!! お前、今。」
「うざいです、おっさん。」
セルビィの言葉が、胸に刺さる。ナルトは折れそうに、成った。負けるな、ナルト。
セルビィは まだ お子様モードが、抜けきってないようだ。
「変態先輩にも、感謝です。」
「ビウェルはの事か。」
「恋は、男を変態にする様なので。阿呆様達が、変態様になる前に 手を打たなければ。」
「いや、別に恋は男を変態にする訳では。」
「五月蝿いです、おっさん。」
胸に刺さる。負けるな、ナルト。二十代は、十分若い。
「ちょろい先輩の様に、阿呆様も ちょろい ので。姉様達に危害が加わる前に 手を打ちましょう。」
「うわぁ。ビウェル、阿呆様と同等にされてるぞ。」
ナルトは、ビウェルを哀れに思った。
「此からは、正攻法で行きます。」
「正攻法て? 」
セルビィは、ナルトに にっこり 微笑んだ。
「こ、こわ!! 」
(何だ? 脅しか? 脅すのか? 脅しだろ!? )

セルビィは、黒い瞳を細めた。魔王、復活か?

「ナルト様も、ちょろいです。」

「うわぁ!! 勘弁してくれ!! 俺が、悪かった!! 」
聴きたくないと、耳を抑え座席に伏せる。お子様モードは、続いていた。
その時、馬車が停まった。
不思議に思って、ナルトは頭を上げた。此処は、
「ナルト様、ケーキを買って下さい。」
「はぁ!? 」
ナルトは訳が分からず、声を上げた。
「大人は、嘘つきです。」
この言葉で、思い出した。
『後で、ケーキを買ってやる。』を。
「ナルト様は、嘘つきです。」
じーーっ と、見詰めてくる目は無邪気で 曇りが無い。
無言の圧力が、ナルトを見詰める。
「や、約束は、守らないとな。」
「はい。」
セルビィは、無邪気に微笑んだ。どう足掻いても、ナルトは貢がされる星の下に 生まれた様だ。
だが、自分だけに甘えてくるセルビィに 悪い気はしないナルトがいた。彼も、かなり たぶらかされていた。


ナルトとビウェルは、セルビィを突いて お子様モードの最強最悪の天使を降臨させただけだった。
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