悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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その時、時が止まった。

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その日の放課後。
総ての授業を終えたセルビィが、第一生徒会室の扉の前に立った。その時 楽しげな声が、中から聞こえてきた。
フローネは、アラン達と仲睦まじく話をしていた。
既に、セルビィを介せずアラン達の懐に入っていた。

(素晴らしいです、尻軽さん。その遠慮ない、その精神。称賛に値します。そして、阿呆様達の傲慢無知な寛大さ。感服です。)
セルビィは、心躍らせながら扉を開いた。

うって変わって、第二生徒会室の横の部屋では。
ナルトとビウェルが、御通夜のように沈んでいた。
「そうか、セルビィ様が。」
「ああ、悪夢を見る様だった。」
「セルビィ様は、お泊まりを夢の様な日々だと 今朝方言っていた。」
「ああ、言っていたな。」
二人は、向かい合うようにソファに座り、深く暗く沈み込んでいた。
「まさか、セルビィがセルビアよりビッチを選ぶなんて。」
「僕は、姉様以外 選びませんよ。」
御通夜の部屋に、明るい声が響き渡る。

「「うわぁ!! 」」
二人は、同時に声を上げた。
「セルビィ!! 」
「セルビィ様!! 」

「急に声を掛けるな!! 」
怒鳴るナルトに、セルビィは首を傾げる。
「御通夜ですか? 暗いです。」
「違う!! お前の所為だ!! 」
セルビィは、益々 首を傾げる。
「お前が、ビッチを選ぶから。」
「僕は、尻軽さんを選んでませんよ。」
「今朝、セルビアより 」
「今朝の姉様達、何時もに増して綺麗でしたね。」
ナルトの言葉に被せるようにセルビィは、嬉々として姉達を称える。
「まるで、戦女神の様に神々しかったです。」
うっとり と、セルビィは今朝の姉達を思い浮かべる。
其れは、心の底から笑顔であった。

「おい、本当にセルビィ様は、ビッチを選んだのか? 」
「ああ、もう 分からん!! 」
ナルトは、ビウェルの言葉に頭を掻きむしった。



郊外にある屋敷の応接室で、腐抜けた令嬢が 四人ソファに座っていた。
「セルビィ、今日 帰って来るかしら。」
学園の制服のまま、セルビアが囁く。空間を見詰め 目の焦点が、合っていない。
「帰って来る。帰って来ない。帰って 」
リリアナが、テーブルの上のクッキーを一つずつ食べながら占っている。
「どうかしら、帰って来るかしら。」
アイリーンは出されたお茶をスプーンで、回し続けている。
「反抗期は、誰にでも起こることよ。」
テレジアは、砂糖をずっとお茶に入れ続けている。

学園から早く戻って来た令嬢達は、着替えもせず呆然と窓から雪解けの落ちる雫を眺めていた。まるで、自分達が流す涙のようだと窓に張り付いて眺めていた。一時間、二時間、お昼ご飯も食べず。何時間も、窓に流れる雫を見ていた。令嬢達をやっと 窓辺から引き離し、ソファに座らせお茶を差し出した状態が今である。あれから何時間が過ぎたか、もう直ぐセルビィの帰ってくる時間帯になっていた。
「きっと、帰って来られますよ。セルビィ様は。」
アリスが、令嬢達を励ます。
「「「「セルビィ、私の天使。」」」」
令嬢達は、呟いた。
「「「「お嬢様。」」」」
アリス達メイドは、涙ぐんだ。令嬢達が戻って来た様子を見て、令嬢達の敗北を確信した。
アリス達メイドは、ただ寄り添うことしか出来なかった。
駆ける足音と共に、応接室の扉が開かれた。
「お嬢様、坊ちゃまが 戻られました。」
老体にむち打って、走って来た執事は 挨拶も無しに扉を開けた。
「セルビィが!! 」
「「「天使が!? 」」」
令嬢達は、駆けだした。


「セルビィ!! 」
セルビア達は、セルビィに抱き着いた。四人に抱き着かれたセルビィは、驚いていた。
「姉様、苦しいです。」
「セルビィ、セルビィ。帰って来てくれて、ありがとう。」
セルビアは、震えていた。
「あの娘の事は、もう反対しないから。ちゃんと、家に帰って来て。」
「お泊まりは辞めて、セルビィ君。」
「お泊まりだけは、しないで。」
「本当は、嫌だけど。毎日、帰って来て。」
令嬢達は、次々とお願いする。
「「「「姉様達、我慢するから!! 」」」」

「何を我慢するのですか? 」
セルビィは、分からないと可愛らしく首を傾げる。
「今朝、逢ったあ 」
「今朝の姉様達は、何時もにまして 綺麗でした。」
『今朝』と言うキイワードに、セルビィは美しい姉達を思い出す。ナルトの時と同じに、嬉々として称賛しだす。
「戦女神の様に、神々しかったです。」
「あ、ありがとう。セルビィ。」
セルビアは、素直に礼を言う。セルビィは、興奮気味に話し出す。
「姉様達の美しさに、阿呆様達は尻込みをしていました。流石です。」
「そうだった、かしら? 」
令嬢達は、顔を見合わせた。
令嬢達には、殿下達の事は眼中になかった。『そう言えば、居たかしら? 』程度である。令嬢達の目には、セルビィとあの女狐しか入っていなかった。
「セルビィ、あの娘。」
「姉様達のお陰で、尻軽さんとの仲が一層 深まりました。有難う御座います。」
セルビィは、嬉しそうに微笑んだ。
「「「「尻軽さん? 」」」」
セルビア達は、首を傾げる。
「あの、ビッチ。今朝の女の事だ。」
ナルトが、補正する。
「尻軽さん? 」
「ビッチ? 」
「今朝の女? 」
「あの胸だけ、女!? 」
令嬢達は、次々に声に出す。
((((あの女狐を、そんな風に呼んでるの。))))
令嬢達は、混乱する。好きな相手をセルビィは、『尻軽さん』と呼んでいる。
((((本当にあの娘の事が、好きなの!? ))))

「セルビィ、仲が深まったのよね。」
「はい。姉様達の御陰です。」
「素晴らし女性、なのよね。」
「はい。行動力があり積極的です。」
「でも、他の女性も見てみたら。」
「いいえ、尻軽さん以外考えられません。」
「あんな、胸だけ女。」
「もう、鼻の下伸びっぱなしです。」
セルビィの言葉に、令嬢達とナルト。近くにいるメイドや執事達は、意気消沈していった。
あの女に『完全に、毒されている』と、お通夜の様に静かになっていく。その中で、セルビィの嬉々とした明るい声が響く。
「お似合いだと、思いませんか 姉様。」
手を合わせて、セルビィは喜んでいた。そして、

「尻軽さんと阿呆様達。」

セルビィの言葉に、時が止まった。


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