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六月 反旗。
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暗い自室で、クラウスはベットに座っていた。アルバートは、其れを見下ろしていた。
窓から入る月明かりが、二人を照らしている。
「何故、こんな事に? 」
アルバートは、呟いた。
「お前は、アンジェリカ嬢を嫌ってはいなかった筈だ。」
その言葉にクラウスは顔を、上げた。
「私は、アンジェリカを愛していた。」
「なら何故!? 」
つい声が荒くなる。
「だが、アンジェリカは私を好いてはいなかった。」
「まさか? 」
驚くアルバートに、クラウスは目を細めた。
「好きな人が、いたようだ。」
クラウスは、俯いた。
「アンジェリカは、何も言わなかった。反論さえ、しなかった。」
クラウスは、唇を噛んだ。
「私は、求めてはいけなかった。傍に居てくれる幸運を、噛み締めるべきだった。」
クラウスは顔を手で、覆った。
「アンジェリカは、もういない。」
『殿下。』
優しい声。
「声も、聞けない。」
『クラウス殿下。』
震える、指先。
「触れる事も、出来ない。」
『クラウス様。』
聖堂を出て行く、アンジェリカの微笑み。
「見ることも、かなわない。」
淡々と話すクラウスの顔に、涙は無かった。氷の色に相応しい無機質な、瞳があった。
「私は、愚かだ。誰にも渡したくは無く、嫉妬のあまりアンジェリカを 殺してしまった。」
「違う!! 殺したのは彼奴らだ!! 」
『あってはならない』事を強行した、婚姻反対派の者達。
「その切っ掛けを与えたのは、私だ!! 」
慰めようとするアルバートを、クラウスは拒絶する。
「愚かな私が、アンジェリカを殺してしまったんだ。」
クラウスは、俯いた。
「私は慰められる価値は、無い。」
自分を責めるクラウスに、アルバートは何も言えなかった。
「一人にしてくれ、アルバート。」
アルバートは、クラウスの言葉に従った。心を残しながら部屋を出る。
『ダン!! 』
アルバートは壁に、拳を叩きつけさせる。跳ねた赤い髪が、炎のように揺れる。
「俺が、着いていれば。」
苦虫を噛みつぶした様な声で、呟く。
「アルバート様。その事は、ジェームズ様の前では仰らないで下さい。」
執事のジョルジュは、アルバートに頭を下げた。
「ジェームズ様は、止められなかった事で。御自分を責めて、おられます。」
「そうか、そうだな。彼奴も、辛いな。」
執事の言葉に、アルバートは壁にあてた拳を握り締めた。
虚しい時が、流れていく。
ベクトル辺境領には、大きな教会があった。広いホールの先に、女神像が飾られてあった。美しい女神像は、愛する妻に似せて作らせたものであった。その女神像に、愛する娘の姿を見る。
「アンジェリカ。父様は、今 迎えに行くよ。」
娘に語りかけるように、呟く。アンジェリカの遺体は、返されなかった。王家をあだ名す大罪人は、さらしの刑が付くからだ。
「アンジェリカを苦しめた者は、皆 殺してやるよ。」
その男の顔は、狂気で歪んでいた。男の名は、アルベルト。アンジェリカの父親で、あった。
浅黒い茶色髪を、靡かせ。全身を甲冑で、覆い。
黒いマントをたなびかせて、立ち上がった。
「親方様。準備は、整いました。」
教会を出ると其処には、騎士が待っていた。門の外には、何万の兵士が『鬨の声』を待っている。
目の前に、アルベルトの愛馬を連れて騎士が現れる。
アルベルトは、馬に股がった。腰から剣を抜き、掲げる。
「行くぞー!! 王都の奴等に目に物を見せてやれ!! 」
「「「「おおっーーーーーーーーーー!!」」」」
ベルハルト歴ーーー年 六月。
東の地ベクトル辺境侯爵。
アルベルト・フォン・ベクトルは、ベルハルト国に反旗を飜した。
「アンジェリカ。今、父様が 迎えに行くよ。」
アルベルトは、馬を走らせる。
窓から入る月明かりが、二人を照らしている。
「何故、こんな事に? 」
アルバートは、呟いた。
「お前は、アンジェリカ嬢を嫌ってはいなかった筈だ。」
その言葉にクラウスは顔を、上げた。
「私は、アンジェリカを愛していた。」
「なら何故!? 」
つい声が荒くなる。
「だが、アンジェリカは私を好いてはいなかった。」
「まさか? 」
驚くアルバートに、クラウスは目を細めた。
「好きな人が、いたようだ。」
クラウスは、俯いた。
「アンジェリカは、何も言わなかった。反論さえ、しなかった。」
クラウスは、唇を噛んだ。
「私は、求めてはいけなかった。傍に居てくれる幸運を、噛み締めるべきだった。」
クラウスは顔を手で、覆った。
「アンジェリカは、もういない。」
『殿下。』
優しい声。
「声も、聞けない。」
『クラウス殿下。』
震える、指先。
「触れる事も、出来ない。」
『クラウス様。』
聖堂を出て行く、アンジェリカの微笑み。
「見ることも、かなわない。」
淡々と話すクラウスの顔に、涙は無かった。氷の色に相応しい無機質な、瞳があった。
「私は、愚かだ。誰にも渡したくは無く、嫉妬のあまりアンジェリカを 殺してしまった。」
「違う!! 殺したのは彼奴らだ!! 」
『あってはならない』事を強行した、婚姻反対派の者達。
「その切っ掛けを与えたのは、私だ!! 」
慰めようとするアルバートを、クラウスは拒絶する。
「愚かな私が、アンジェリカを殺してしまったんだ。」
クラウスは、俯いた。
「私は慰められる価値は、無い。」
自分を責めるクラウスに、アルバートは何も言えなかった。
「一人にしてくれ、アルバート。」
アルバートは、クラウスの言葉に従った。心を残しながら部屋を出る。
『ダン!! 』
アルバートは壁に、拳を叩きつけさせる。跳ねた赤い髪が、炎のように揺れる。
「俺が、着いていれば。」
苦虫を噛みつぶした様な声で、呟く。
「アルバート様。その事は、ジェームズ様の前では仰らないで下さい。」
執事のジョルジュは、アルバートに頭を下げた。
「ジェームズ様は、止められなかった事で。御自分を責めて、おられます。」
「そうか、そうだな。彼奴も、辛いな。」
執事の言葉に、アルバートは壁にあてた拳を握り締めた。
虚しい時が、流れていく。
ベクトル辺境領には、大きな教会があった。広いホールの先に、女神像が飾られてあった。美しい女神像は、愛する妻に似せて作らせたものであった。その女神像に、愛する娘の姿を見る。
「アンジェリカ。父様は、今 迎えに行くよ。」
娘に語りかけるように、呟く。アンジェリカの遺体は、返されなかった。王家をあだ名す大罪人は、さらしの刑が付くからだ。
「アンジェリカを苦しめた者は、皆 殺してやるよ。」
その男の顔は、狂気で歪んでいた。男の名は、アルベルト。アンジェリカの父親で、あった。
浅黒い茶色髪を、靡かせ。全身を甲冑で、覆い。
黒いマントをたなびかせて、立ち上がった。
「親方様。準備は、整いました。」
教会を出ると其処には、騎士が待っていた。門の外には、何万の兵士が『鬨の声』を待っている。
目の前に、アルベルトの愛馬を連れて騎士が現れる。
アルベルトは、馬に股がった。腰から剣を抜き、掲げる。
「行くぞー!! 王都の奴等に目に物を見せてやれ!! 」
「「「「おおっーーーーーーーーーー!!」」」」
ベルハルト歴ーーー年 六月。
東の地ベクトル辺境侯爵。
アルベルト・フォン・ベクトルは、ベルハルト国に反旗を飜した。
「アンジェリカ。今、父様が 迎えに行くよ。」
アルベルトは、馬を走らせる。
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