【完結】氷の王、クラウス。

❄️冬は つとめて

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十一月 宣戦布告。

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兵士が、けたたましく叫ぶ。
「大変です!! 場内に、賊が入りました!! 」
「なっ 」
王ダウロンは、言葉を続ける事が出来なかった。目を大きく見開き、口から血が垂れる。
クラリスのベールを掴んで、横に倒れ込み階段を滑り落ちる。
血に染まる、クラリスの白いドレス。

「「「「国王陛下!! 」」」」

次の瞬間、五人のベルハルト国の騎士達は近くにいる兵士達の槍を奪い取り命を絶った。我先に逃げようと、貴族達は扉へと向かう。だが、その扉は無情にも閉ざされる。先程、緊急を知らせに入って来た兵士もベルハルト国の者であった。何人もの騎士達が、謁見の間に入ってくる。既に、城内はクラリスが連れて来ていた者達で制圧されていた。

「「「バーナード侯爵!! 貴様、裏切ったな!! 」」」
イリギス国の貴様達は、苛立ちを侯爵にぶつける。
「違う!! 私は!! 」
侯爵は、上段に立つ血に染まったクラリスに叫ぶ。クラリスは、血が滴る短剣を下げていた。イリギス国王の心臓を刺した、短剣。

「クラリス様、これは!! 私を、謀ったのですか!! 」

彼女の周りは五人の騎士達に寄って、イリギス国王の護衛達は命を断たれ転がっている。クラリスの白いドレスが、裾からも赤く染まっていく。
侯爵を、イリギス国の貴族達を見るクラリスの目は、氷の様に冷ややかであった。

「私の国を狙う者が、自分達が安全だとなぜ言い切れる。」
クラリスの声は、低く冷たい。
その冷たい美貌に、感情は見られない。淡々と、話す。

「氷の王子……。」
どこともなく、声がした。
王妃クラリスは太陽の様な金髪碧眼。だが、目の前にいるのは白金の髪に氷の瞳。それは、闇に浮かぶ冷たい月の様で。
「王太子、クラウス。」
誰とも無く、声が上がる。

「服従か、死か。」
クラウスの冷たい声は、謁見の間に低く響いた。イリギス国の貴様達は、崩れるように膝をついた。

イリギス国は、ベルハルト国に敗れた事となる。だが、其れはまだ城内だけの事だった。
 
此所まで上手く行ったのは、クラウスの策戦もあったが。何よりも既に、人員が揃っていたのが大きい。ベクトル候は、アンジェリカの命を奪った貴族達は憎かったが だからと言って、国を他国にやるつもりはなかった。愛しい娘の愛した国で有り、愛した男であった。王子クラウスを、アンジェリカが愛していたのは知っていた。だが、その思いは擦れ違い 悲劇を生んだ。アルベルトは、王家を、クラウスを殺すつもりもなかった。ただ、自分はどれ程哀しいのか 怒っているのかを示したかったのだ。その為の反旗、死ぬための戦争。アルベルトは、死に場所を探していた。
隣のイリギス国が、内乱を期に自分に話を持ちかけてきた。その事で、アルベルトは死に場所をイリギス国と定めていた。
この雨季の間に、総てを終わらそうとベクトル領に戻って来ていた。戦の準備が整い、アンジェリカに別れを言っている処にクラウスが現れた。

アルベルトは、これも運命だと思った。彼は、一騎討ちを承けた。
負けるとは思わなかったが、彼は負けた。クラウスを殺そうとは思わなかった事が、アルベルトに隙を作った。

「最後に、聴かせろ。お前は アンジェリカを どう思って いた。」
アルベルトは、最後に聞きたかった。クラウスが、アンジェリカをどう思っていたか。死ぬ事は、どうでもよかった。ただ、クラウスのアンジェリカ対する思いを聞きたかった。

「私は、アンジェリカを愛している。」
その応えを聴いた途端、アルベルトは血を吹き出しながら笑った。
(よかったな、アンジェリカ。お前は愛されていた。)
そして、愛する者を失った喪失感を思い出す。
(ああ、クラウス。お前も、無虚の世界にいるのか。)

「クラウス。お前は、生きろ。生きて、苦しめ。」
「はい。」
クラウスは目を閉じ、アルベルトの胸から剣を引き抜いた。

『クラウス お前は、生きろ。生きて、苦しめ。』

其れは、呪いの言葉。愛する者を失った苦しみを知るアルベルトのクラウスに対する呪いの言葉。
そして、死に急ぐクラウスを思う言葉。愛する娘の命を、心を奪った憎い男。だが、まだ若い。
『お前は、生きろ。生きて、アンジェリカの分も幸せになれ。』
アルベルト思いは、伝わらない。
『この国を、頼む。』
その思いは、集められていた軍勢で伝わるが。

アルベルトは、イリギス国の中心 王都を取るつもりだった。だが、クラウスは最も早く戦争を終わらせるために中心 王の首を取った。そして、国の重要貴族を制圧した。
城の外は、戦の準備を整えたイリギス国の軍勢が待機している。
ベルハルト国への開戦を 今か、今かと、待っている。その時、

「クラウス様。カメリア帝国が、ベルハルト国に宣戦布告を致しました。」
城内が、ざわめいた。

開戦を待つイリギス国の軍勢に、王命が伝えられる。
「アメリゴ帝国の隙を突き、王都を制圧する。」
「「「オオーー-ー!! 」」」
イリギス国の兵士達は、鬨の声を上げた。カメリア帝国への軍行が、始まった。イリギス国の兵士達は、王の命と思い、軍行を進める。
長年に渡る、敵対国家に突き進む。

「誰か、私に戦着を。」
クラウスは、血に染まったドレスを飜し謁見の間を出て行く。
ベルハルトの騎士を半数残し、カメリア帝国へと向かう。皇帝の首を取るために。

ベルハルト暦ーーー年 11月。
カメリア帝国、ベルハルト国へ宣戦布告。





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