【完結】氷の王、クラウス。

❄️冬は つとめて

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    何故。

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『アルバート。もし、クラウス様が道を誤ったらお前が正せ。それが出来なかったら、お前が殺せ。』
アルバートの耳に残る父の言葉。

(悪いオヤジ、後は頼んだ。俺は此奴を連れて行く。)
アルバートは静かに剣を振り下ろした。

クラウスは死ぬ積もりだった、アルバートに殺されるのなら本望だった。この無虚の世界から救ってくれる使者とさえ思えた。

だが、躰がそれを許さなかった。
戦場で培った動きが、アルバートの躊躇がその思いを裏切る。

「アルバート!! 」
血を浸垂らせ崩れ落ちる、アルバートをクラウスは抱きとめる。

(悪いオヤジ、やっぱ俺には此奴は殺せないわ。)

「アルバート、私は。私は、王を、父上を殺してはいない。」
氷の瞳が、溶けそうに揺れる。虫の息のアルバートに声を掛ける。

「ばか…やろう。早く、言え。」
(ほんと早く言え、馬鹿が。)
アルバートは、血のついた手でクラウスの顔を撫でた。

「悪ぃ、クラウス。信じて やれな・・・」
言葉が途切れ、手が落ちる。目が閉じられた。だが、何故か微笑んでいた。

「神よ!! これが、私に課せられた罰か。」
クラウスはアルバートを抱き締めながら、彼の流した血の海に崩れ落ちた。

足音が廊下に響き渡る。
慌てふためいた響きの足音が。
騎士の制止も、聴かずにエドガーは扉を開けた。
「アルバート!! 」

血の海に、アルバートを抱き締め踞るクラウスを見咎める。
(遅かった。)

「クラウス陛下。」
エドガーが、膝を折る。

「不祥の息子が、申し訳ありません。」
恭しく、頭を下げる。その後ろで、驚いていた騎士達も膝を折る。

「願わくば、このまま私を陛下の家臣として勤めさせて頂きたく。お願い致します。」
「そうか。」
顔を上げたクラウスは ゾッ と、するほど表情が無かった。石像の様に、美貌があるだけだった。

「後は、頼む。」
クラウスはアルバートを床に置き、立ち上がる。そのまま、椅子に座ろうとする。
「誰か、クラウス陛下のお着替えを。」
「はい。」
エドガーの言葉に、後ろで控えていた騎士が動き出す。騎士達に寄って、クラウスが外に連れ出される。
エドガーは静かに、倒れる息子の傍に寄った。
「馬鹿が。何故、俺の所に先に返って来なかった。」
そうすれば、真実が知れていた。
「クラウス様を、陛下を。置いて行きやがって。」
エドガーは、息子の前で両膝を付いた。
「馬鹿が。」
広い書斎に、エドガーの呟きが漏れた。


アルバートを抱き締めて廊下を歩くエドガーをアルファは見咎めた。
「アルバート様? 」
ゆっくりと二人に近づく。
「エドガー様。アルバート様は……。」
血に染まり動かないアルバート。
「何が……。」


「我が不詳の息子が畏れ多くも陛下に剣を剥けたのです。」
「………。」
「これは、仕方の無いこと。」
ぎゅっと、アルバートを抱き締める手に力がこもる。
「でも!! 」
何かを言おうとアルファは、エドガーを見る。エドガーは目を細めた。

「悪いのはアルバートなのです。」
(真実を知ろうとせず先走った所為。)
「俺の元に先に戻っていれば……。」
エドガーは頭を下げてアルファの前を放れる。アルバートの亡骸を大事に抱えながら。
「何があったの? アルバート様。」アルファは踵を返した。


「兄上!! 」
クラウスが着替えている部屋を突き止め、挨拶もなしに扉を開く。

「兄上、アルバート様が!! 」
声を上げるアルファを、クラウスは冷たい目で見詰めた。

「何があったのですか? 兄上。」
縋るようにアルファは、クラウスを見詰め続ける。その表情の無い彫刻の様な冷たい顔を。

「アルファ。お前は、ベクトル領に赴き成人するまで王都に近付くことを禁じる。」
「何を言っているのです? 兄上。」
アルファは驚いてクラウスに声を掛ける。
「お前はベクトル公となり、今すぐベクトル領を治めよ。」
「兄上? 」
冷たく放たれるクラウスの声。
訳がわからないアルファ。

「どうして? 兄上……。」
「直ぐに向かえ、今すぐに。」
(私の傍に寄るなアルファ。)

「兄上? 」
「衛兵、連れて行け。」
(私が、お前を殺さないように。)

「兄上、お待ち下さい。クラウス兄上!! 」
衛兵に寄って部屋を連れ出されるのに抵抗をしながら兄を呼ぶ。
「兄上!! 」
冷たく自分を見るクラウスの姿が、扉によって遮られた。

「どうして? 」
アルファは扉に縋り付く。
「どうして、兄上? 」



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